【完結】騎士団でいつの間にか外堀埋められ陥落した話+その後の話

文字の大きさ
23 / 46
陥落したその後の話

7.性質

しおりを挟む

「ふむふむ、なるほど。ああ、他の騎士たちとぜんぜん違いますね。奇妙な……これでは攻撃しても全力とはいかないだろうなあ。わあ、こういう性質は初めてかもー」

 へー、おー、これがああだから、こうしたらいいかなあ。カミルはあれこれ呟きながら一人で納得しては否定し、考えに没頭しているようだ。俺には理解できない魔力の性質らしきものを図式化して、紙の上に書き連ねていた。

「……あっ! つい面白い式が浮かんじゃって。魔力はもう大丈夫ですから消していいです。じゃ、僕はこれにて失礼しますね。またお会いしましょう! ユリウス!! なんとなくやれそうっ」

 カミルの声にユリウス魔術師団長とコンラート隊長が振り返った。もう俺のことなど見えていないようだ。

「相変わらず慌ただしいな、お前は……」
「だって忘れないうちに戻ってやりたいし」

 カミルは机上を乱雑に片付け始めた。頭の中はもう術式のことでいっぱいな様子が窺える。早く魔術師団へ戻り取り掛かりたいとばかりに、整え終えた手荷物を抱え、ユリウス魔術師団長のそばへ行くと袖を引いて帰りを急かしていた。

「行こ?」
「……また連絡する。コンラート、依頼の件は完成次第となるが」
「ああ、構わない。戻ってやれ」
「すまないな」

 では、と魔術師たちが去った後は、まるで嵐が通り過ぎたようだ。カミルがいなくなっただけで、こうも違うとは。室内の静けさを一層感じられる。

「カミルは随分興奮していたな。魔術が関わると夢中になるのは相変わらずだ」
「悪い子ではないと思いましたが」
「幼いところはあるが、カミルが作る魔術回路は複雑で他の者ではなかなか思いつかない。だからカミルを狙う連中もいる。魔術師団に属していることで保護する意味も兼ねているわけだ」
「なるほど。そういう理由ですか」

 誰もが魔術師になれるわけではない。国の脅威となる場合もあるのだから当然だ。適性があり国から認められた者のみが魔術を扱えるが、代わりに──命の活動が止まる枷を付けられる。不穏な動きを察知された場合、それは即ち死が下るのだ。

「ただ能力はあるが興味のないことはどうも動きが鈍くてな」
「職務だとしても、ですか」
「攻撃力を上げるようなものは、カミルにとって大した手間ではない。そういったものは別の魔術師に回してしまう。お前、気に入られたんだぞ。カミルがあれだけ関わってくるのは珍しい」
「俺にはよくわかりませんが……」

 初対面で挨拶程度。多くの言葉を交わしたわけでもない。あれだけの時間で俺の何がわかったのかは知らないが、カミルからすると面白い発見があったと口にしていた。珍しい魔力の性質だとか、そういう意味での興味だろう。

「十歳のカミルを見つけたのがユリウスだ。劣悪な環境に置かれていたこともあって、今でも魔術師団以外の人間には形式的な態度だが。初見でこれだけ興味を持つことは今までなかった」

 コンラート隊長からの少ない情報でカミルの過去は想像に難くない。あの無邪気な様子からは結びつかないが、言われてみると意図的に気配を消していたような気もする。
 こうして魔術師団に属することができたのは幸いだ。そうでなければどこかに軟禁され、いいように利用されていた可能性もあったのだ。

「お前に会ってみたいと言い出したらしい。滅多にないことだから、ユリウスも許可したんだろう」

 コンラート隊長の話を聞きながら、カミルの様子を思い出す。次に会うときはもう少し何か話をしてみようか。違う環境で育った俺たちではるが、どこか似ているところがある。

 いつか魔術のことではない話ができるといい。


(カミル、か……)


 このときはまだ静かに忍び寄っている計謀を俺もカミルも、誰も知る由もなかった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

白い結婚を夢見る伯爵令息の、眠れない初夜

西沢きさと
BL
天使と謳われるほど美しく可憐な伯爵令息モーリスは、見た目の印象を裏切らないよう中身のがさつさを隠して生きていた。 だが、その美貌のせいで身の安全が脅かされることも多く、いつしか自分に執着や欲を持たない相手との政略結婚を望むようになっていく。 そんなとき、騎士の仕事一筋と名高い王弟殿下から求婚され──。 ◆ 白い結婚を手に入れたと喜んでいた伯爵令息が、初夜、結婚相手にぺろりと食べられてしまう話です。 氷の騎士と呼ばれている王弟×可憐な容姿に反した性格の伯爵令息。 サブCPの軽い匂わせがあります。 ゆるゆるなーろっぱ設定ですので、細かいところにはあまりつっこまず、気軽に読んでもらえると助かります。 ◆ 2025.9.13 別のところでおまけとして書いていた掌編を追加しました。モーリスの兄視点の短い話です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

処理中です...