想像構築で生きるスローライフ〜幼馴染に拒絶され疲れたので、楽に自由に生きようと思います

白季 耀

文字の大きさ
6 / 25

第6話ここは一つ、里に貢献します!

しおりを挟む
ルクシオは今、肌寒く粛然とした倉庫の藁の中、しみじみと苦悩していた。

エルフの少女によるカミングアウト。

立て続けに聞いた価値観の相違にルクシオは何も言えなかった。

寝ようとしても寝付けず、脳裏にちらつくエルフ少女の憎悪に歪む表情がどうにもルクシオの心を締め付けてならない。

決して自身が彼女に直接被害を与えた訳では断じてない。

だが、エルフ少女の事に関して、ないがしろにする事などできなかった。

自分でなくとも他の人間がエルフを道具のように扱う事は良くある事だ。

その為、まるで自分が悪いかのような錯覚に襲われ、覚えのない自己嫌悪、罪悪感を感じてしまうからだ。

「ああああああああっ、もう!」

ルクシオは自身の両頰を強く叩いた。

「償いになるかは分からないけど。人間にもいい奴はいるって事を、知ってもらいたい」

ルクシオはエルフ達に少しでも人間の良いところ・・・・・について知ってもらえるよう、行動する事にした。



◾️◾️◾️



未だ俺のスキルについて抵触していなかったので大凡を説明したいと思う。

まず、スキルとは人が成人すると神から与えられる祝福の事を指す。

一人に一つのスキル。

途方も無い数だけ存在し、有名なスキルなどは養成学校の図書館などで調べられる事が出来たが、やはりそれは星の数ほどあるスキルの末席にすら数えられない。

あっ、ちなみに魔法は一応誰でも習得可能。だがやはり、魔法関連のスキルがあのると無いのとでは雲泥の差らしい。

まぁ、スキルとしての説明はその辺で、俺のスキルは少々特殊で、養成学校の教師達ですら聞いた事すら無い珍しいモノだとか。

まぁ、それなりに鍛錬したので使えはする。

今日はそれを、エルフの里の為に使おうと思う。

と言うわけで、今日は里に来た時気になったとある家屋を訪ねている。 

「おはようございます。人族のルクシオです。昨日お話しした件について伺いました」

すると中から妙齢の女性が姿を現した。
エルフは皆端正な顔立ちだと聞くが、昨日と今日でそれを嫌という程実感した。

目の前にいる女性も御多分に洩れず美人だった。

「あらあら、まだ朝も早いのに元気ね。本当にやってくれるの。私としては願ったりかなったりだけど……」
「大丈夫ですよ!任せて下さい。俺は脛を齧るだけの穀潰しでは無い事を証明してやりますよ!」

ルクシオの妙に高いテンションに首を傾げる女性だったが、ルクシオは気にしない。

「よし、早速作業に取り掛かるか」

これからやるのは、家の修理だ。

と言うのも、リベアが里の畑を荒らすついでに、被害にあった家屋がいくつかあるのだ。

何とも傍迷惑な話だが、家が壊れているのに何もしないと言うのは忍びないし、家主が不憫だ。

だから、昨日。
この家の女性に家の修理をさせてもらえないか事前に許可を貰ったのだ。

「……ふぅ~」

右手の中に空間を作るように握り、力を込める。

すると、徐々にルクシオの右手が淡い青い光を放ち始める。

いつ見ても、神秘的だ。

空間の中で、光は何か・・の形を作るように収束し、光が強まったと思えば、静かな寝息をするように儚く消えていった。

そして掌に残ったのは、一振りの金槌だった。

「よし、成功!」

これがルクシオのスキル。

【想像構築】

名前の通り、想像したものを世界に構築する。

しかし、これがまた使い勝手が悪い。

まず、想像するには明確なイメージをしなくてはならない。

色、形、素材に至るまで、正確であればあるほど、このスキルは真価を発揮する。

逆に言えば、イメージが甘いと、何だこれ?と言った代物になってしまう。
武器を作ろうにも素材まで詳しく知らないといけないし、大きい物程構築するには時間がかかる。

最初このスキルの説明を神官から受けた時は軽く絶望したがそれでも、まぁ使えない訳ではないから良しとしている。

同じ要領で鍵を構築し、作業に取り掛かかった。




◾️◾️◾️



「早く早く。来てくださいよ!」
「もう、そんなに急がなくてもいいじゃない。それと、この目隠しとっていいかしら?」
「ダメですよ、それじゃ面白くないじゃないですか!」

作業に取り掛かり約30分。

ルクシオは作業を終え、びっくりさせる為にあのエルフの女性を呼びに行っていた。

目隠しをさせたのは、出来るだけ驚かせたかったから。

この女性の夫は大分前に亡くなっていて、今は一人で生活しているのだ。

孤独は辛いし苦しいだろうから、少しでも明るくなってくれればと。

そう言ったルクシオの気遣いだった。

「まだなのルクシオちゃん?」
「もう少し、もう少しです。……はいストップ。目隠しを取っていいですよ?」

ルクシオの許可を貰い、エルフの女性は目隠しを取り瞼を開けた。

「まぁ!?うそ、こんな短時間で……こんな!」

エルフの女性は驚嘆の声を漏らし、目を瞠目し夢なのかと疑う。

「夢でもなんでもないです。現実ですよ」

屋根には大穴が空き、亀裂の入った大黒柱に辛うじて支えられていた、崩壊危ぶまれた家は、ルクシオの手によって大改造されていた。

屋根の古かった瓦は綺麗な光沢を放つ物に生え変わり、要所要所数が目立った外壁は見る影もなく、綺麗に生まれ変わっていた。

建物のサイズも、里のどの家よりも大きく立派になり、文化水準が凄まじく向上した都市の様相になっていた。

とても30分で仕上げられたとは思えない完成度だった。

「これ、ルクシオちゃん一人でやったの?」
「はいもちろん。方法は秘密ですが、安全性は保証します。これで、もういつ来るか分からない崩壊に怯えて暮らす心配もいらないでしょう?」
「えっ……えぇ」

あまりの事態に当惑している様子だった女性は、時間が経つにつれ冷静になり、目の端から小さな涙を浮かべた。

「えっ、あの。大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ。ありがとうルクシオちゃん。とても、とっても嬉しいわ……」

嗚咽しながらも言葉が途切れぬよう紡いだ感謝の言葉で、ルクシオは既に満足だった。

もともと唯の自己満足の為にしたのだ。

こんなんで恩を売ろうだなんて思わないし、欠陥があれば直ぐに修理する所存だ。

それでも嬉しかったのだろう、エルフの女性はひたすらに溢れる涙を手で拭い、ルクシオの手を両手で握ってきた。

他意は無いとはいえ、十分すぎるほどに魅力的で美人な女性に不意に手を使われたら困惑ぐらいするだろう。

ルクシオのような筋金入りなら尚更だ。

「えっあの……」
「本当にありがとうルクシオちゃん!ありがとう」
「えとその……どういたしまして?」
「もう!なんで疑問形なのよ?」
「いやだって。仕方ないといいますか」

エルフの女性が赤るみがかった頰をぷっくりと膨らませての上目遣い。

これは効く。

ルクシオの初な反応を面白がってなのか、エルフの女性が不敵に笑った気がした。

「私ルクシオちゃんの事気に入ったわ」
「えっ?」
「ルクシオちゃん……」
「はっはひっ!」

思わず声が裏返り、姿勢を正す。

女性の顔が近づき、口が耳もとへ。

そして……。

「私、独り身なのよ?」
「なぁっ!!!」

ひっ独り身、ここで、それだと!

ルクシオのとある部分の血が跳ね上がった。

いかん落ち着け、落ち着けルクシオ・クルーゼ。

お前はまさか、妙齢の女性に手を出すきか?

そんな事はしてはならない絶対に。

「あなたなら、私の、あげるわ」

あっ、もういいや。

仕方ないさ。

だって健全な男の子ですし。

寧ろこれに抗えとか、むっ、無理でしょう?

Oh~、今は亡き両親よ。ミリアよ。

俺、ついに大人に……。

「何をやってるんですか、ルクシオさん?」
「あっ」

背中に悪感が迸り、全身に危険信号が慌ただしく想起する。

が、ここで恨めし本能よ。

ルクシオは恐る恐る、首を回す。

そこには、美しいまでの光沢を放つ銀髪を逆立てる美少女、フィアナがいた。

顔が俯いているせいで表情を確認できないが……正直見たくない。

「ルクシオ様、私というものがありながら!」
「まっ待てフィアナ!話をしよう。何事も話せば解決っ」
「しませんっ!お覚悟を!」
「助けてぇー」

「あらあら、罪な子ね」

この日、ルクシオは里中を疾走した。

が、狼牙のフィアナに勝てる筈もなく……撃沈したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

処理中です...