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2章
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しおりを挟む建国祭当日。
グレンツェは半分寝た状態のまま侍女達に準備されていた。侍女たちはグレンツェ初めてのお披露目とあって皆が張り切っている。
グレンツェの目がしっかり開いた頃には既に今までに見た事のないほど華やかなメイクが施されていた。
(いつもとっても綺麗なメイクだと思っていたけど今日はなんだが別人みたい)
いつもはグレンツェの素材の良さを生かしたナチュラルなメイクが多いが今日は大粒のラメがふんだんに使われより華やかな印象だ。ヘアセットは緩く巻いた髪の毛をハーフアップにし、飾りには生花やヴァイザーがプレゼントしたアクセサリーをつけいつもより豪華だ。
肝心のドレスはヴァイザーがこの日のために特注で注文したものだ。薄いピンク色のチュールが何枚も重ねられ、チュールにはパールや刺繍が縫い付けられている。胸元から下に向かっては小さなお花が敷き詰められまるで花がこぼれているような可憐なデザインだ。
腰には大きなリボンが結ばれ可愛らしい顔立ちのグレンツェとピッタリである。
(可愛すぎる、、こんな可愛いドレス、自分が着られてしまうわ)
着てみればいつもより豪華なメイクやヘアセットがより映え、グレンツェがよく絵本で見ていたお姫様のようだ。
「奥様!!!大変お似合いです!!」
準備をしてくれた侍女たちも目をうっとりさせてグレンツェに見とれていた。
「ありがとう、、みんなのおかげよ」
侍女たちはぶんぶんと首を横に振り声を合わせて皆グレンツェの素材が良いと褒めた。
今まで何にも自信がなかったグレンツェだが鏡に映る自分を見れば少し自信がついた。建国祭に出席すると知ってからグレンツェはカナリエの指導の元ほぼ毎日のようにダンスのレッスンや礼儀作法などヴァイザーの恥にならないように努めてきた。
グレンツェ自身はまだ足りないところがあると感じているがカナリエは十分だとグレンツェを褒めた。
孤児院にいた時とは違い別世界に住んでいるかのような生活だったがその生活でグレンツェは人として生き、着実に自信をつけていた。まるで無魔力のことなど忘れてしまったかのように。
グレンツェは自分の姿をもう一度鏡で見たあと部屋を出た。お城の中央にある大きな階段の下にヴァイザーはいた。ゆっくりと階段を下りる。いつもより髪をスッキリとまとめているヴァイザーはこちらに気づくとハッと目を見開く。
「おまたせしました、あの、、どうですか?」
「あぁ、とても綺麗だ。可愛いよ」
ヴァイザーは見たことのない優しく、そして何かを愛でるかのような笑顔でグレンツェに言った。
「っ、!」
グレンツェは思わず下を向いた。恥ずかしくて、そして嬉しくて今にも顔から火が出そうだ。
「だ、旦那様も、、とてもカッコイイです、」
「っ!そうか、行くぞ」
不意打ちを食らったかのように驚くヴァイザーも顔を赤くそめたが、それを隠すかのようにグレンツェの手を引き城を出た。
以前乗った馬車に乗り込めばゆっくりと馬車が進み始めた。以前と違うのはヴァイザーも一緒に乗っていることだろう。
「あの、旦那様?」
「っ、なんだ」
「前に馬車に乗った時はヴァイザー様はどこにいらっしゃったのですか?私が乗ったと思ったら周りに誰もいなくなってて」
「あぁ、それは転移魔法で帰ったからだ」
「転移魔法、、?」
「転移魔法は簡単に言えば瞬間的に移動できるものだが1番と言ってもいいほど魔力を使う。私は長距離過ぎなければ何度も使えるが普通の人であれば転移魔法を使える者はそういないだろう。貴族の中でも少数だ。魔力に耐性がない者が転移魔法で一緒に移動すれば体調を崩しかねない」
(最初から私のことを気にかけてくれていた?)
「そうなのですね、、やはり魔力がなければ耐性もつかないのでしょうか?」
「そんなことはない。転移魔法に耐えられるほど耐性を付けるには時間はかかるが普段から魔力に触れていればついてくるはずだ。現に普段から少しずつ城内の結界魔法も強くしている。本来であれば護衛など必要のないほど城内は安全だ」
つまりグレンツェが城に来てからグレンツェのために結界魔法を弱めていたということだ。その証拠にグレンツェには常に護衛が付いていた。
グレンツェは少し申し訳なくなったがヴァイザーがその気持ちを汲み取ったのか先程よりも優しく声をかける。
「気にすることは何もない。グレンツェは生きていればそれで十分なのだ。」
「ありがとうございます、」
ヴァイザーにとってそれ以上の望みなどなかったが、グレンツェにはその言葉が少し引っかかっていた。
まるで生きてさえいれば他は何も求められていないかのように感じたのだ。たとえ跡継ぎのためでもヴァイザーがグレンツェを必要としてくれることがグレンツェにとって生きる価値となっていた。
すれ違い続ける2人は皇帝の城が中心に建つカーキスという城下町に着いた。エルフォルク家とはそこまで離れてはいない。
建国祭の会場はこの町、カーキスで行われグレンツェと出席する建国祭の式典は皇帝の城にある大きなホールで行われる。
既に町はお祭り騒ぎで大盛り上がりのようだ。
その中心を馬車で通りながらグレンツェは深呼吸をした。
いよいよヴァイザーの『運命』としてグレンツェは歩き出すのだ。
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