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2章
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しおりを挟む勢いよく扉を開ければ濃い魔力と甘い香りの先にグレンツェが苦しそうに横たわり、カイン卿が治癒魔法をかけていた。
「っ、!!グレンツェ!目を覚ませ!!」
苦しそうに浅い息をするだけのグレンツェはヴァイザーが体を支え起き上がらせてもだらんとしていた。
その姿にあの時のことがヴァイザーの脳裏をよぎりさらに強く抱き締めた。
「ヴァイザー様!早く治癒魔法を!!」
治癒魔法をかけつづけていたカイン卿が叫ぶ。
ヴァイザーはハッとし、急いで治癒魔法をかける。ヴァイザーのような強い魔力を一度にかければグレンツェはどうなるか分からない。適度な量を少しずつ流す。
「っグレンツェ、、目を覚ましてくれ、、」
しばらくかけ続ければ呼吸が安定し目は開かないもののそのまま眠ったようだった。ヴァイザーはグレンツェを横抱きにして人目がつかないよう客間から出ればベットのある休憩室に運ぶ。
「ヴァイザー様、!申し訳ありません!!」
カイン卿とエニック卿はグレンツェの様子をぼーっと見つめるヴァイザーを前に謝罪する。
「お前らは悪くない、どうせエティーナに言われたのだろう」
「ですが、!」
「でもグレンツェを一番先に見つけたのはお前らだ、発見が遅れていたらどうなっていたかわからん」
「っ、、ヴァイザー様は優しすぎます、私共に罰をお与えくださいっ、、」
「罰を受けるべきは私だ、ずっとそばにいると言いながら離れたのだ」
「ヴァイザー様、自虐はお辞め下さい」
今まで存在感を消していたカイエルは事態を聞きつけ飛んできたようだ。
「来るのが早いな、なにか分かったのか?」
ヴァイザーが戦闘や結界、転移魔法に強い一方でカイエルは情報分析が早く、魔力探知が得意である。
特に今のヴァイザーの魔力はぶれぶれで探知どころでは無い。
「私も実際に見るのは初めての魔法です。嘘かと思ったのですが、、どうやら消去魔法が使われたようです。」
「消去魔法だと?」
最初は耳を疑った。消去魔法は古くに消滅したとされる魔法だ。消去魔法を使えば特定の物や人などとにかくなんでも消すことができる。最初は強い魔力が漂うものの、時間が経つほどそのものと一緒に魔力は薄くなりそのものの存在とともに魔力の痕跡も無くなるという強力で恐れられていた魔法だ。
「はい、あまり信じられないのですがかなり強い魔力が部屋に充満していました、そして甘い香りがしたのです」
普通、魔力が強力であるほど匂いは焦げ臭いような匂いがする。使う魔力によって違いはあれど一括りにするならば焦げ臭いと言える。確かに消去魔法はよく誘惑するような甘い香りであり、魔力は残らなくても香りが残ることが特徴とされていた。
「あの、、」
すると急にカイン卿がおどおどした様子で話し始める。
「先程は気が動転していたので私の勘違いかと思って伝えなかったのですがグレンツェ様の治癒をしていた際、グレンツェ様の手のひらが透明に透けて見えたのです、、治癒魔法を開始してしばらくしたら元に戻っていたので気のせいだと思っていましたがもしかしたら、と思いまして」
「もし、それが本当ならば消去魔法の可能性が高いな」
「えぇ、でも一体誰が、、?」
ヴァイザーは頭を抱えた。エティーナが嫉妬のあまりやったことだと思っていた。実際なにかした事は事実である。その証拠に現在は治っているもののヴァイザーが駆けつけた時にはグレンツェの頬は痛々しいほど腫れていた。
(だが、、エティーナが消去魔法を?強力関係であるエルフォルク家の『運命』に消去魔法を使ったとバレればシュバルツ家とエルフォルク家の関係が崩れ、国の崩壊に繋がりかねない。だとしたら大罪だ。そこまで理解がないとも思えない。しかも、エティーナはグレンツェを殺すことが目的では無さそうだ、利用されたか?)
考えても謎は深まるばかりだ。
ヴァイザーは深いため息をつくとまだ目を開けないグレンツェの頬を撫でた。
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