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第44話 父と娘と、ひとしずくの涙
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「……ッ!」
息を切らしながら、私は戦場と化した廃ビル群へと駆け込み、皆の元へ駆け寄る。
「天音!?どうしてここに?!」
絢華さんが私の姿に気づいて、目を見開く。
「なんで来たの! 本部待機の命令だったでしょ!」
「……でも、来なきゃいけない気がしたんです!」
私は思わず叫んでいた。
「誰かが……誰かが助けを求めてる気がして……!」
「お前……」
紫苑さんがこちらに向き直る。
その目は冷静で、でもどこか、怒りと困惑が入り混じっていた。
「命令違反だ。戻れ」
「……でも、私は……!」
「なんの為にお前を本部待機したと思ってる
る……万全でない者が戦場に出れば死を招く」
その言葉は、真っ直ぐに胸へと突き刺さる。
けれど私は、怯まずに答えた。
「……それでも、来なきゃって思ったんです。どうしてかは分からない。でも、このままじゃいけないって……」
「天音ちゃん……」
凛子さんの表情が少しだけ揺れた。その優しさに、私はほんの一瞬、救われる。
「……勝手にしろ」
紫苑さんはそう言い残して、再び前を向いた。
その視線の先、戦場の中央──。
結さんの目の前に立っているのは、一鉄さんだった。
握られた拳は震えている。
結さんは、一鉄さんに剣を構える。
でも、結さんの切っ先は微かに震えていた。
一鉄さんは、ただ結さんを見つめていた……。
「……結」
彼は、その名を口にした。
かすれた声で、泣くように、苦しむように。
「……どうして……」
返事はない。ただ、彼女の黒い瞳が揺れる。
「お前は……あの時……確かに……でも、どうして……」
再会の喜び⸺。
剣を向けられる悲しみ⸺。
戦えない葛藤⸺。
一鉄さんの感情がぐちゃぐちゃに混ざり合ってるのが目に見えて分かる。
拳を震わせ歯を食いしばる。
「でも……何で、こんな……こんな姿で……!」
一鉄さんの記憶の中にある結さんは、小柄で、笑顔が似合う少女なのだろう。
一鉄さんは、ただじっと結さんを見つめていた。
きっと一鉄さんは今、結さんとの思い出を感じているのだろう……。
漠然とそう思えた。
けれどようやく再会できた娘は、冷たい目をして、誰かを傷つける側にいた。
「やめろ……こんなの……お前が望んだわけじゃない……!」
声にならない想いが喉から溢れたとき。
その娘の唇が、僅かに動いた。
「──たすけて……」
空気が止まったような静寂が、戦場に広がる。
彼女は確かに言った。
「……結……」
一鉄さんの手が震える。
剣に手を伸ばしかけては、また下ろす。
動けない。動きたくない。だが、見殺しにもできない。
「苦しむ姿……もう見たくない……っ……!ずっと、ずっと!辛くて苦しんできたんだ!!もう……いいだろう!!なあ!神様!!!」
「パパ……お願い……たすけて……」
再び漏れる微かな声。
その声に呼応するように、結さんの手から、剣がぽとりと地面に落ちかける。
──けれど、すぐにまた、指が剣を握り直そうとした。
何かと戦っているようなその動きに、私は胸が締め付けられる。
「やめてくれ……結……もういい……今、楽にしてやるからな……」
一鉄さんが歩み寄ろうとした、その時だった。
私は、彼の前に立ちはだかった。
「……天音?」
「……駄目です」
私の声が震える。でも、目は逸らさなかった。
「私には……分かる気がするんです。何となくですけど……結さんの“叫び”が、心じゃなくて……魂からの声だって」
「俺は……!」
一鉄さんが叫ぶ。
「どうすればいいんだよ……! 娘が……目の前で苦しんでるのに……俺は……! 俺は、父親として、何をすればよかったんだ……!!」
その叫びに、私は全てを込めて返した。
「一鉄さん……あなたがその手で、終わらせる必要なんてない。結さんは、まだ……助かるかもしれない。私は……そう信じたい!」
一鉄さんの目が、大きく見開かれた。
私はそのまま、結さんに向き直った。
「お願い……。あなたの中の“結さん”が、まだ消えていないなら……!」
彼女の目に、ひとすじの涙が伝う。
剣が、完全に落ちた。
私は、彼女の元へ歩み寄っていく。
まだ終わっていない──。
ここから、始められるかもしれない。
息を切らしながら、私は戦場と化した廃ビル群へと駆け込み、皆の元へ駆け寄る。
「天音!?どうしてここに?!」
絢華さんが私の姿に気づいて、目を見開く。
「なんで来たの! 本部待機の命令だったでしょ!」
「……でも、来なきゃいけない気がしたんです!」
私は思わず叫んでいた。
「誰かが……誰かが助けを求めてる気がして……!」
「お前……」
紫苑さんがこちらに向き直る。
その目は冷静で、でもどこか、怒りと困惑が入り混じっていた。
「命令違反だ。戻れ」
「……でも、私は……!」
「なんの為にお前を本部待機したと思ってる
る……万全でない者が戦場に出れば死を招く」
その言葉は、真っ直ぐに胸へと突き刺さる。
けれど私は、怯まずに答えた。
「……それでも、来なきゃって思ったんです。どうしてかは分からない。でも、このままじゃいけないって……」
「天音ちゃん……」
凛子さんの表情が少しだけ揺れた。その優しさに、私はほんの一瞬、救われる。
「……勝手にしろ」
紫苑さんはそう言い残して、再び前を向いた。
その視線の先、戦場の中央──。
結さんの目の前に立っているのは、一鉄さんだった。
握られた拳は震えている。
結さんは、一鉄さんに剣を構える。
でも、結さんの切っ先は微かに震えていた。
一鉄さんは、ただ結さんを見つめていた……。
「……結」
彼は、その名を口にした。
かすれた声で、泣くように、苦しむように。
「……どうして……」
返事はない。ただ、彼女の黒い瞳が揺れる。
「お前は……あの時……確かに……でも、どうして……」
再会の喜び⸺。
剣を向けられる悲しみ⸺。
戦えない葛藤⸺。
一鉄さんの感情がぐちゃぐちゃに混ざり合ってるのが目に見えて分かる。
拳を震わせ歯を食いしばる。
「でも……何で、こんな……こんな姿で……!」
一鉄さんの記憶の中にある結さんは、小柄で、笑顔が似合う少女なのだろう。
一鉄さんは、ただじっと結さんを見つめていた。
きっと一鉄さんは今、結さんとの思い出を感じているのだろう……。
漠然とそう思えた。
けれどようやく再会できた娘は、冷たい目をして、誰かを傷つける側にいた。
「やめろ……こんなの……お前が望んだわけじゃない……!」
声にならない想いが喉から溢れたとき。
その娘の唇が、僅かに動いた。
「──たすけて……」
空気が止まったような静寂が、戦場に広がる。
彼女は確かに言った。
「……結……」
一鉄さんの手が震える。
剣に手を伸ばしかけては、また下ろす。
動けない。動きたくない。だが、見殺しにもできない。
「苦しむ姿……もう見たくない……っ……!ずっと、ずっと!辛くて苦しんできたんだ!!もう……いいだろう!!なあ!神様!!!」
「パパ……お願い……たすけて……」
再び漏れる微かな声。
その声に呼応するように、結さんの手から、剣がぽとりと地面に落ちかける。
──けれど、すぐにまた、指が剣を握り直そうとした。
何かと戦っているようなその動きに、私は胸が締め付けられる。
「やめてくれ……結……もういい……今、楽にしてやるからな……」
一鉄さんが歩み寄ろうとした、その時だった。
私は、彼の前に立ちはだかった。
「……天音?」
「……駄目です」
私の声が震える。でも、目は逸らさなかった。
「私には……分かる気がするんです。何となくですけど……結さんの“叫び”が、心じゃなくて……魂からの声だって」
「俺は……!」
一鉄さんが叫ぶ。
「どうすればいいんだよ……! 娘が……目の前で苦しんでるのに……俺は……! 俺は、父親として、何をすればよかったんだ……!!」
その叫びに、私は全てを込めて返した。
「一鉄さん……あなたがその手で、終わらせる必要なんてない。結さんは、まだ……助かるかもしれない。私は……そう信じたい!」
一鉄さんの目が、大きく見開かれた。
私はそのまま、結さんに向き直った。
「お願い……。あなたの中の“結さん”が、まだ消えていないなら……!」
彼女の目に、ひとすじの涙が伝う。
剣が、完全に落ちた。
私は、彼女の元へ歩み寄っていく。
まだ終わっていない──。
ここから、始められるかもしれない。
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