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第45話 父と娘の、最期の約束
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「──来ます!」
空気を切り裂く鋭い風と共に、結さんの剣が振り下ろされる。
私は飛び退ききれず、肩を斬られた。
布が裂け、熱い血が流れ落ちていく。
「っく……!」
それでも膝をつくわけにはいかなかった。
倒れれば、それで全てが終わってしまう気がしたから。
彼女の瞳には、何の迷いもなかった。
かつての柔らかな面影は消え、命令通りに敵を斬る、ただの“兵器”がそこにいた。
「天音っ!」
一鉄さんの怒声が飛ぶ。
私の前に立ち、彼女の剣を受け止める。
重い音が響き、結さんの剣と一鉄さんの拳がぶつかり合う。
「結……やめろ! 俺を見ろ!父ちゃんだ!!!」
その叫びに、返答はなかった。
刃が再び振るわれる。
一鉄さんの腕が裂け、血が飛ぶ。
「やめて……お願い……!」
私はその背に手を伸ばした。
彼と共に前へ進む。
一歩一歩、恐れず、傷だらけの身体で──結さんの元へ。
「結さん……大丈夫です……きっと助けます」
私の言葉に、結さんの動きが一瞬、鈍る。
剣の軌道がわずかに外れ、地面に火花が散った。
「私たちは、あなたを諦めない……!」
息が切れる。身体中が痛む。
それでも、私の心は一点に向かっていた。
「行きましょう!一鉄さん!!結さんはまだ生きてる!!
だから、私は……私達は信じたい。あなたの心が、まだここにあるって」
「天音……そうだな!結は生きてる!!」
私と一鉄さんは、結さんへ手を伸ばす⸺。
私は胸元の力に呼びかける。
(お願い……誰でもいい……何でもいい結さんを……救う力を!!私に頂戴!!!)
「結さん!」
結さんに、二人で触れた瞬間⸺。
何かがはじけた。
眩い光が、全身から溢れ出す。
それは温かく、優しく、でも圧倒的な力を伴って──
「これは……あたたかい……優しい光」
結さんの動きが止まる。
その瞳が、初めて揺れた。
「……あ……れ……?ここ……どこ……?」
それは、兵器としての声ではなかった。ただの、小さな少女の声だった。
「結! 結なのか……?」
一鉄さんが前に出る。
血だらけのその姿で、娘を抱きしめるようにして。
「パパ……?」
その一言で、一鉄さんの膝が崩れた。
彼女の小さな身体を抱きしめたまま、声を震わせる。
「やっと……やっと……会えた……」
「ごめんね……傷つけて、ごめんね……私……どうしてか、わからなかった……」
結さんの目に涙が浮かぶ。
その光が、ゆっくりと淡くなっていく。
結さんの、身体が少しずつ透けていく……。
「ねえ、パパ──私ね、来世でも、またパパの娘になるから」
「……え……?」
「だから……また会おうね。ちゃんと……パパのこと、見つけに行くから」
「……ああ……絶対だ……絶対、また会おうな……」
一鉄さんの頬を涙が伝う。
その腕の中、結さんの身体が淡い光に包まれ、やがて……ふわりと、天へ昇っていった。
その姿は、まるで天使のようだった。
静かに、優しく、空へ昇っていった。
私はその光を見送りながら、胸の奥に小さな痛みを抱えていた。
これは“救い”なのか、それとも“別れ”なのか。
でも確かに、彼女の魂は安らかだった。
それだけは──間違いなかった。
「結……ありがとう……またな……」
一鉄さんの声が……寂しくも、凛としていて父親としての言葉に、父を失った私にとって、それは未来を約束された奇跡のように見えた。──きっと、私にも……。
空気を切り裂く鋭い風と共に、結さんの剣が振り下ろされる。
私は飛び退ききれず、肩を斬られた。
布が裂け、熱い血が流れ落ちていく。
「っく……!」
それでも膝をつくわけにはいかなかった。
倒れれば、それで全てが終わってしまう気がしたから。
彼女の瞳には、何の迷いもなかった。
かつての柔らかな面影は消え、命令通りに敵を斬る、ただの“兵器”がそこにいた。
「天音っ!」
一鉄さんの怒声が飛ぶ。
私の前に立ち、彼女の剣を受け止める。
重い音が響き、結さんの剣と一鉄さんの拳がぶつかり合う。
「結……やめろ! 俺を見ろ!父ちゃんだ!!!」
その叫びに、返答はなかった。
刃が再び振るわれる。
一鉄さんの腕が裂け、血が飛ぶ。
「やめて……お願い……!」
私はその背に手を伸ばした。
彼と共に前へ進む。
一歩一歩、恐れず、傷だらけの身体で──結さんの元へ。
「結さん……大丈夫です……きっと助けます」
私の言葉に、結さんの動きが一瞬、鈍る。
剣の軌道がわずかに外れ、地面に火花が散った。
「私たちは、あなたを諦めない……!」
息が切れる。身体中が痛む。
それでも、私の心は一点に向かっていた。
「行きましょう!一鉄さん!!結さんはまだ生きてる!!
だから、私は……私達は信じたい。あなたの心が、まだここにあるって」
「天音……そうだな!結は生きてる!!」
私と一鉄さんは、結さんへ手を伸ばす⸺。
私は胸元の力に呼びかける。
(お願い……誰でもいい……何でもいい結さんを……救う力を!!私に頂戴!!!)
「結さん!」
結さんに、二人で触れた瞬間⸺。
何かがはじけた。
眩い光が、全身から溢れ出す。
それは温かく、優しく、でも圧倒的な力を伴って──
「これは……あたたかい……優しい光」
結さんの動きが止まる。
その瞳が、初めて揺れた。
「……あ……れ……?ここ……どこ……?」
それは、兵器としての声ではなかった。ただの、小さな少女の声だった。
「結! 結なのか……?」
一鉄さんが前に出る。
血だらけのその姿で、娘を抱きしめるようにして。
「パパ……?」
その一言で、一鉄さんの膝が崩れた。
彼女の小さな身体を抱きしめたまま、声を震わせる。
「やっと……やっと……会えた……」
「ごめんね……傷つけて、ごめんね……私……どうしてか、わからなかった……」
結さんの目に涙が浮かぶ。
その光が、ゆっくりと淡くなっていく。
結さんの、身体が少しずつ透けていく……。
「ねえ、パパ──私ね、来世でも、またパパの娘になるから」
「……え……?」
「だから……また会おうね。ちゃんと……パパのこと、見つけに行くから」
「……ああ……絶対だ……絶対、また会おうな……」
一鉄さんの頬を涙が伝う。
その腕の中、結さんの身体が淡い光に包まれ、やがて……ふわりと、天へ昇っていった。
その姿は、まるで天使のようだった。
静かに、優しく、空へ昇っていった。
私はその光を見送りながら、胸の奥に小さな痛みを抱えていた。
これは“救い”なのか、それとも“別れ”なのか。
でも確かに、彼女の魂は安らかだった。
それだけは──間違いなかった。
「結……ありがとう……またな……」
一鉄さんの声が……寂しくも、凛としていて父親としての言葉に、父を失った私にとって、それは未来を約束された奇跡のように見えた。──きっと、私にも……。
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