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第74話 絶望と怒りの狭間で
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刃を振るうたび、腕が痺れる。
肩で荒く息をしながら、それでも私は剣を握り締めた。
「八咫烏⸺【身体強化】!」
閃光のような斬撃が敵を裂く。だが、致命傷にはならない。
逆に、巨体の堕天使が咆哮し、翼を広げて迫ってきた。
重い。速い。
一撃を受け止めるたびに全身が軋み、足が地にめり込む。
皆が負傷して離脱し、今ここで立っているのは私ひとり。
(……時間を稼がないと……!)
必死に自分を叱咤し、牙のように迫る爪を跳ね返す。
だが――。
「きゃああああああああっ!!」
突然、背後から女の悲鳴が聞こえた。
心臓が、凍り付く。
(まさか――!)
私は天使を一瞬だけ弾き飛ばし、家の中へと駆け込んだ。
そこにあった光景は、息をすることすら許さなかった。
床にパパが倒れ、動かない。
ママが泣き叫びながらその体を揺さぶっていた。
「……あ……あぁ……」
膝が勝手に震えた。
目を疑った。信じられなかった。
私は、ここまで来たのに。
八咫烏に入って、仲間と命を賭して戦って、力を得て。
パパの死を変えるために、ここまで足掻いてきたのに。
過去を変えられる。
運命を書き換えられる。
死を、なかったことに出来る。
そう信じていた。
でも――現実は違った。
「嘘……嘘だよね……? だって、私は……!」
喉の奥が焼けるように痛い。
頭が真っ白になり、心臓を掴まれたように苦しい。
私が信じてきたものは、全部……幻だったの?
どれだけ剣を握っても、どれだけ傷だらけになっても、パパはもう……戻らない?
「そんなの……嫌……嫌だ……!」
込み上げる絶望に押し潰されそうになった瞬間――背後で嘲笑が響いた。
あの天使が、翼を広げて見下ろしていた。
……そうだ。
こいつがいるからだ。
この存在が、私からすべてを奪った。
パパの死を、変えられなかったのも。
私の願いを、踏みにじったのも。
「……あんたが……!」
握る刀に、いつもと違う熱が宿った。
それは淡い光なんかじゃなかった。
漆黒の焔のように、どろりとした黒い光が私を包む。
「全部……あんたのせいでええええっっ!!」
声が張り裂ける。
その瞬間、私の体を突き破るように、圧倒的な力が溢れ出した。
刃を振るえば、空気ごと断ち割る衝撃。化け物の体が初めて後退した。
刃が勝手に暴れ出す。
私の意思なんて関係ない。
ただ、破壊することだけを望んでいる。
――無慈悲に、無表情で、次々と天使を切り伏せる。
血飛沫が散り、羽根が空に舞う。
化け物のような姿が、目の前に次々と倒れていく。
黒い光に染まった私は、もう止まらなかった。
刃が勝手に暴れ出すようだった。
私の意思なんて関係なく、ただ破壊することだけを望んでいる。
「八咫烏⸺【切断強化】」
刀を振るうたび、黒い閃光が走り、堕天使の翼を切り裂いた。
骨が砕け、肉が飛び散り、呻き声が響く。
黒い光が私を覆い尽くす。
もう声も出ない。感情もない。
ただ、斬る。壊す。消す。
堕天使が消えた次の瞬間――
空が震え、大量の天使たちが舞い降りてきた。
白い羽音が夜空を埋め尽くす。
「……」
私は何も言わない。
無表情のまま、ただ刃を振るう。
肉が裂ける音。
羽根が散る光景。
叫び声も、断末魔も、何も響いてこない。
私の耳には届かない。
私はただ、切り裂き続ける。
――パパを奪った存在を。
――“この世界そのもの”を。
肩で荒く息をしながら、それでも私は剣を握り締めた。
「八咫烏⸺【身体強化】!」
閃光のような斬撃が敵を裂く。だが、致命傷にはならない。
逆に、巨体の堕天使が咆哮し、翼を広げて迫ってきた。
重い。速い。
一撃を受け止めるたびに全身が軋み、足が地にめり込む。
皆が負傷して離脱し、今ここで立っているのは私ひとり。
(……時間を稼がないと……!)
必死に自分を叱咤し、牙のように迫る爪を跳ね返す。
だが――。
「きゃああああああああっ!!」
突然、背後から女の悲鳴が聞こえた。
心臓が、凍り付く。
(まさか――!)
私は天使を一瞬だけ弾き飛ばし、家の中へと駆け込んだ。
そこにあった光景は、息をすることすら許さなかった。
床にパパが倒れ、動かない。
ママが泣き叫びながらその体を揺さぶっていた。
「……あ……あぁ……」
膝が勝手に震えた。
目を疑った。信じられなかった。
私は、ここまで来たのに。
八咫烏に入って、仲間と命を賭して戦って、力を得て。
パパの死を変えるために、ここまで足掻いてきたのに。
過去を変えられる。
運命を書き換えられる。
死を、なかったことに出来る。
そう信じていた。
でも――現実は違った。
「嘘……嘘だよね……? だって、私は……!」
喉の奥が焼けるように痛い。
頭が真っ白になり、心臓を掴まれたように苦しい。
私が信じてきたものは、全部……幻だったの?
どれだけ剣を握っても、どれだけ傷だらけになっても、パパはもう……戻らない?
「そんなの……嫌……嫌だ……!」
込み上げる絶望に押し潰されそうになった瞬間――背後で嘲笑が響いた。
あの天使が、翼を広げて見下ろしていた。
……そうだ。
こいつがいるからだ。
この存在が、私からすべてを奪った。
パパの死を、変えられなかったのも。
私の願いを、踏みにじったのも。
「……あんたが……!」
握る刀に、いつもと違う熱が宿った。
それは淡い光なんかじゃなかった。
漆黒の焔のように、どろりとした黒い光が私を包む。
「全部……あんたのせいでええええっっ!!」
声が張り裂ける。
その瞬間、私の体を突き破るように、圧倒的な力が溢れ出した。
刃を振るえば、空気ごと断ち割る衝撃。化け物の体が初めて後退した。
刃が勝手に暴れ出す。
私の意思なんて関係ない。
ただ、破壊することだけを望んでいる。
――無慈悲に、無表情で、次々と天使を切り伏せる。
血飛沫が散り、羽根が空に舞う。
化け物のような姿が、目の前に次々と倒れていく。
黒い光に染まった私は、もう止まらなかった。
刃が勝手に暴れ出すようだった。
私の意思なんて関係なく、ただ破壊することだけを望んでいる。
「八咫烏⸺【切断強化】」
刀を振るうたび、黒い閃光が走り、堕天使の翼を切り裂いた。
骨が砕け、肉が飛び散り、呻き声が響く。
黒い光が私を覆い尽くす。
もう声も出ない。感情もない。
ただ、斬る。壊す。消す。
堕天使が消えた次の瞬間――
空が震え、大量の天使たちが舞い降りてきた。
白い羽音が夜空を埋め尽くす。
「……」
私は何も言わない。
無表情のまま、ただ刃を振るう。
肉が裂ける音。
羽根が散る光景。
叫び声も、断末魔も、何も響いてこない。
私の耳には届かない。
私はただ、切り裂き続ける。
――パパを奪った存在を。
――“この世界そのもの”を。
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