八咫烏 〜神になるか、人として戦うか〜

秀零

文字の大きさ
5 / 108

第4話 歓迎されない仲間入り

しおりを挟む
紫苑さんに肩を支えられながら、足を進める。
長い廊下を抜け、紫苑さんの手で重い扉がゆっくりと開くと、冷たい空気が肌を刺した。

黒と金を基調とした広いホール。
天井近くまで届く巨大な柱が整然と並び、その中央には数人の男女が立っていた。
紫苑さんは無言で歩を進め、私は慌てて後を追う。
(……この人達が……八咫烏……?)

部屋の中の人達が、一斉に私を睨みつける。
冷たく、鋭く、突き刺すような視線⸺。
紫苑さんはホール中央で立ち止まり、振り返った。

「紹介しておく、ここにいるのが現八咫烏のメンバーだあと数名は任務に出ている戻り次第、紹介する」

その言葉に、場の空気がさらに張り詰める。
長い銀髪を揺らす青年が、無表情で私を見下ろした。
淡い金色の瞳が、まるでガラス玉のように冷たい。

「煌、ドール使いだ」

煌は一瞥もくれず、ただ無言で頷いた。

次に、長い黒髪を後ろで束ねた女がいた。
巨大な大剣を背負い、紫苑さんを睨むようにしている。

「絢華、重力を操る剣士だ」

彼女は鋭い視線で私を射抜き、小さく吐き捨てた。

「ふん……素人を連れてくるなんて、あんたも甘くなったわね」

その言葉に胸が痛む。

紫苑さんは気にせず、紹介を続けた。

金髪の少女が一歩前へ。
白衣のような服を纏い、背には槍がある。

「凛子、治癒能力の使い手だ」

凛子さんはふわりと微笑んだ。

「大丈夫だよ、辛い時はお姉さんに言ってね」

唯一、柔らかい声だった。
その優しさに、少しだけ涙が込み上げる。

続いて、屈強な体格の男。
無精髭に鋭い眼光。空気すら圧迫するような存在感。

「一鉄、肉体強化と武闘のスペシャリストだ」

一鉄さんは鼻で笑った。

「ガキが来ても足手まといだろ」
最後に、紫苑さんは白銀の銃を腰に下げた女を見やる。

長い紫紺の髪が美しく、だがその瞳は氷のようだった。

「桔梗、結界と銃撃のエキスパートだ、」

桔梗さんは一瞥すると、すぐに視線を逸らした。

(……みんな……冷たい……)

紫苑さんは一歩退き、私を皆の前に立たせる。

「神楽天音。お前が今日からここで共に戦う、新しい八咫烏だ。」

誰も言葉を返さなかった。
その沈黙が怖くて、震えそうになる。

唯一、凛子さんだけがそっと手を伸ばして私の手を握った。

「一緒に頑張ろうね」

その笑顔が、泣き出しそうな私の心を支えてくれた。

紫苑さんは静かに告げる。

「……ここからが本当の始まりだ、覚悟しろ」

その時の紫苑さんの瞳は冷たく、決意や哀しみではなく、無慈悲な色をしていた。

⸺怖い⸺。

今の紫苑さんの瞳は、まるで別人のようで……
私は、その冷たさに恐怖を覚えた。

(覚悟……私に……できるのかな……)

誰も微笑まない。
紫苑さんさえも。

冷たい視線と重い沈黙の中、私はただ震えていた⸺。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

処理中です...