31 / 342
CASE3 帰還
8
しおりを挟む
「いきなり集まってもらってごめん」
待ち合わせの公園には桃華と辛島くん。
待ってる間、夜の公園はちょっと怖かった。
「どーしたの?今日はデートじゃなかったの?」
タイヨウさんに会うって話してた桃華はブランコを漕ぎながらさらりと言った。
「は?デート?」
もちろん、知らない辛島くんは反応して。
「ただ遊んだだけだよ。幼馴染みだから、タイヨウさんも」
「幼馴染みってことは井黒の兄弟?」
「うん。お兄さん」
「ふぅん」って言って顔をそらしたから辛島くんの興味はなくなったみたい。
息を吸って、吐いて。
空を見上げて、口を開く。
「私、ユートピアに行く」
二人はしばらく黙ってたから顔を向けたら、二人で顔を見合わせていた。
「理由は?やっぱり井黒くん?」
「うん。アゲハがいない世界はつまらない」
「戻っても……次にこっちに帰ってこれる保証はないぜ?あのゲートがなくなってたらさぁ」
うん、そうだね。
何度も行き来できるとは思えない。
だけどね、
「小さい頃は同じ歩幅だったのに、いつの間にか歩幅がバラバラになっちゃって、置いていかれちゃった。だから、私がアゲハに追い付くの。帰れなくてもいい」
二人はまた黙っちゃったけど、それで良かった。
行き方は、たぶん分かる。
前に白い紙を使ってまたユートピアに行こうとしたけど行けなかった。
私には手元に名前入りのカードが残ってる。
つまり、そのカードでならまた行けるってことでしょ?
「二人には、私がいなくなったらユートピアにいるって事を知っててほしかったの」
「……うん、よし!じゃあ私も行く!」
桃華が勢いよくブランコから降りた。
いや、待って?
話聞いてた?
ユートピアだよ?蟲とかいたし、救済者と破壊者が戦ってて、どっちが勝っても生きるの辛い世界だよ?
帰れないかもしれないんだよ?
「空が行くなら私も行く!………ってのは半分冗談で、やっぱり私も井黒くん気になるから元の生活って厳しいし。空が元気ないのも辛いし」
「蟲とか襲われて死ぬかもなんだよ?遊びに行くような場所じゃないよ!?」
「だって空……シンクロ全然使えないじゃん。一人で行ったら死ぬよ」
ジロッとした目でこっち見てる。
否定ができなくて顔を背けちゃった。
「まー、俺もだな。向こうのが楽しそうだし」
「た…楽しそう?」
辛島くんはニヤリと笑ってたけど……この二人、本気で?
「魔法とかもっと使ってみてーじゃん!こっちじゃシンクロ使えないし」
え?理由はそれだけ?
「空がユートピアに行くって言い出したらどうするか。私と辛島くんでずっと前から決めてたんだよ」
桃華はそう言ってポケットからカードを取り出した。
………やっぱりそれだけが理由じゃなかったんだね。
「明日、行きますか!」
桃華がそう言って私たちを見渡した。
私は笑顔でうなずいた。
本当は、もっと早く、決断してたら良かったのかな?
二人の気持ち、本当に嬉しかったよ。
たぶん、帰ってきてから一番普通の、一番の笑顔ができたと思う。
待ち合わせの公園には桃華と辛島くん。
待ってる間、夜の公園はちょっと怖かった。
「どーしたの?今日はデートじゃなかったの?」
タイヨウさんに会うって話してた桃華はブランコを漕ぎながらさらりと言った。
「は?デート?」
もちろん、知らない辛島くんは反応して。
「ただ遊んだだけだよ。幼馴染みだから、タイヨウさんも」
「幼馴染みってことは井黒の兄弟?」
「うん。お兄さん」
「ふぅん」って言って顔をそらしたから辛島くんの興味はなくなったみたい。
息を吸って、吐いて。
空を見上げて、口を開く。
「私、ユートピアに行く」
二人はしばらく黙ってたから顔を向けたら、二人で顔を見合わせていた。
「理由は?やっぱり井黒くん?」
「うん。アゲハがいない世界はつまらない」
「戻っても……次にこっちに帰ってこれる保証はないぜ?あのゲートがなくなってたらさぁ」
うん、そうだね。
何度も行き来できるとは思えない。
だけどね、
「小さい頃は同じ歩幅だったのに、いつの間にか歩幅がバラバラになっちゃって、置いていかれちゃった。だから、私がアゲハに追い付くの。帰れなくてもいい」
二人はまた黙っちゃったけど、それで良かった。
行き方は、たぶん分かる。
前に白い紙を使ってまたユートピアに行こうとしたけど行けなかった。
私には手元に名前入りのカードが残ってる。
つまり、そのカードでならまた行けるってことでしょ?
「二人には、私がいなくなったらユートピアにいるって事を知っててほしかったの」
「……うん、よし!じゃあ私も行く!」
桃華が勢いよくブランコから降りた。
いや、待って?
話聞いてた?
ユートピアだよ?蟲とかいたし、救済者と破壊者が戦ってて、どっちが勝っても生きるの辛い世界だよ?
帰れないかもしれないんだよ?
「空が行くなら私も行く!………ってのは半分冗談で、やっぱり私も井黒くん気になるから元の生活って厳しいし。空が元気ないのも辛いし」
「蟲とか襲われて死ぬかもなんだよ?遊びに行くような場所じゃないよ!?」
「だって空……シンクロ全然使えないじゃん。一人で行ったら死ぬよ」
ジロッとした目でこっち見てる。
否定ができなくて顔を背けちゃった。
「まー、俺もだな。向こうのが楽しそうだし」
「た…楽しそう?」
辛島くんはニヤリと笑ってたけど……この二人、本気で?
「魔法とかもっと使ってみてーじゃん!こっちじゃシンクロ使えないし」
え?理由はそれだけ?
「空がユートピアに行くって言い出したらどうするか。私と辛島くんでずっと前から決めてたんだよ」
桃華はそう言ってポケットからカードを取り出した。
………やっぱりそれだけが理由じゃなかったんだね。
「明日、行きますか!」
桃華がそう言って私たちを見渡した。
私は笑顔でうなずいた。
本当は、もっと早く、決断してたら良かったのかな?
二人の気持ち、本当に嬉しかったよ。
たぶん、帰ってきてから一番普通の、一番の笑顔ができたと思う。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密
藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。
そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。
しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。
過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜
加瀬 一葉
ファンタジー
王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。
実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?
過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる