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CASE7 急転

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「皆に話したのは前に集まった時。あの時のアゲハはひどく不安定な様子だった。とても今は話せないと思い、話さなかった……。私の判断だ」


「………そっか。うん、分かった」


明らかにトーンダウンしたアゲハに対して、エドガーは不満そう。


「その言い方は絶対に分かっていないな?」

「分かったって。ってか今めちゃめちゃ痛いからそれどころじゃない」


なんとなく、無理矢理話をやめたように見えた。

それに、痛いって言った……。

傷は塞がっても痛いんだね。。。


アゲハの視線は私に向いて

笑顔でポンと私の頭を撫でてから立ち上がった。


「だけど、空が無事だったからそれでいい」


「……っ、よくないっ!!」


よくない!

なんにもっ!!


「空が怪我する方が俺が嫌なの。だから、これでいい」


アゲハの優しさに、甘えきったらいけないのに……。


なのに、アゲハはそれから一度も

この件で私を責めることはなかった。




ギルバートさんがアゲハに話ができるか確認した上で、改めてあの日の話を振り返る事になった。



「まず……あの女将軍が最後の将軍で間違いないのか?」


「あぁ、そうだ。私も最近ようやく会えた……“第一将軍”のノアという女性。使う魔法は“創造”」


この将軍だけ呼び方が魔法の名前じゃない。

他の将軍は、火炎使いだから火炎将軍とか、屍使いだから屍将軍なのに。


それに魔法が“創造”?



「創造?……何かを作り出すって事かな?」

「アゲハの言う通りで、なんでも創造で作れると言っていた」


なんでも作れるってチート過ぎな気がするけど……。

なんか、勝てる気がしなくない?


「………でも、、あの姿はイヴちゃんだった」

スーがポツリと呟いた。


「子供の姿を作り出して放浪した経験があるらしい。その時にスーは出会ったんだろう……スーとゼロはどういう関係だったのかな?」


「俺とスーが育った施設に来た子供だ。俺たちにはイヴって名乗っていた。すぐに引取り手が現れていなくなったが……俺とスーの後を着いて回る、ただの子供だった」

「喋り方もあんなじゃないし、1年くらいは一緒に生活してたし!イヴは魔法を使えない子だった!」


ゼロさんとスー

二人は落ち込んだ様子だった。


知っている人が破壊者の最後の将軍だったなんて、、信じられないよね。


「ちなみに、そのノアってヤツは槍使いか?ギルの胸を貫いたのは槍だった」

「……ギル、大丈夫?」


レオンの言葉にアゲハも驚いていた。

途中から来たアゲハは知らないよね。


ギルバートさんは右胸に手をあてて「問題ない」って一言答えた。



「ノア将軍は魔法が強力だから自らの武器で戦う事はしないそうだ。だから、私も武器は知らない。その槍は、、恐らく魔法で作ったモノだろう」


私の場合は魔法が闇だから

闇を凝縮させて何か武器を作れなくはないだろうけど……


絶対に無理だな。

シンクロの消耗が激しすぎて、すぐに何もできなくなると思う。



創造って魔法がなんでも作れるとは言っても


普通に自分の武器で戦う方がいいんじゃないかな?って思っちゃう。



「……どこまで作り出せるんだろうね?それによってはかなり厄介そうだね」


アゲハの言葉に全員が頷いていたけど


そんな中で一番辛そうな顔をしていたのはアゲハ自身だった。

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