祷雨(とうう)の巫女はまだ決断できない~雨は祈りか、絶望か~

カノンみわ

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第10話 課された使命

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斎藤さんに案内され、10時前に私たちはある会議室のような部屋へ着いた。

私たちが滞在していた部屋は宿泊舎といわれる建屋にあったらしく、会議室として呼び出された部屋は歩いて5分くらいの別の建屋だった。

昨日も思ったけど広々とした敷地に立派な建物が点在してるけど、この施設は何なんだろう。

門構えが物々しかったし入場の管理も厳しかったから、このシオガ国の中枢なのかもしれない。

行き来してる人も多いけどいるのは大人ばかりで、男性が多いなとは思った。

ユイさんが言う通り、女性はあまり外に出ないのかもしれない。

いろいろ考えつつもたどり着いたのは、ちょっと古めかしい存在感のある石造りの建物だった。

重厚な扉を開けると中はシンと静まり返った空気感があり、ちょっと独特の匂いがした。

少し埃っぽい、紙とインクの匂い。

この建物のどこかに、図書室があるのかもしれない。

そして私たちは、通路の奥にある部屋に通された。

その部屋はそれなりに広く、真ん中に大きな楕円形のテーブルが置かれて重厚な雰囲気がした。

時間ぴったりに、リョウガさんと4~5人の男性たちが入ってきた。

その一番最後に、まだ若そうな男性がついて入ってきた。
他の男性が身軽なのにその男性は大量の資料を抱えていて、明らかに従者のような扱いに見えた。


リョウガさんの指示を受け、席に着いた私たちにその若い男性が資料を配り始めた。
無表情で淡々と配っていたが、私のところに配ろうとした時に少し間があった気がした。

何だろう?と思いその男性を見たけど、その男性は目を合わさず資料を置いた。

全員に資料を配り終えたのを確認して、リョウガさんが話し始めた。

「この度は改めて、日本から遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。
今回の黒龍祷雨こくりゅうとうう計画の責任者を努めます、リョウガと申します。よろしくお願いいたします」

コクリュウトウウ?

まるで呪文のような聞き慣れない言葉に思わず斎藤さんを見たが、斎藤さんは表情を変えず前を見ている。

リョウガさんは、私の方を見て続けた。

祷雨とうう計画にあなたのお力が必要なのですよ、アユミさん。そのためにあなたをお呼びしたのです」


─────────────────────



コクリュウトウウという聞き慣れない言葉。

それに私の力が必要だという。

何のことだかさっぱり分からなくて、戸惑ってる私を見て、リョウガさんは少し微笑んだ。

「驚かれるのも当然です。説明が拙速で申し訳ありません。順を追って説明します」


そしてそこから私はなぜここに呼ばれたのか説明を受けることになる。


まずはこのカーランティの世界地図を見せられた。

真ん中にある、小さな島国がシオガ国らしい。

その回りには大きな大陸がいくつもあり、国境らしき線が引かれている。

それらの大国に比べ、シオガ国はとても小さく見えた。
まさに世界地図の中の日本のように。

「シオガ国は回りの大国に比べ、とても小さい国です。ただ世界では戦争をしている国や異常気象で貧困に陥っている国もありますが、シオガは平和で安定しています。シオガの強みは水や天然資源が豊富で生活水準が高いこと、そして古くから日本と関わりがあり、科学技術の提供を受けて他国に比べ発展していること、そして」

日本とシオガが古くから関わってる?

そっちに気を取られ、次に続く言葉を聞き逃すところだった。

「そして、龍を飼育することがシオガ国でしかできないからです」


─────────────────────



龍を飼育している?

その突拍子のない言葉に、私は呆気に取られた。

「あ、それで龍の世話が仕事になるんですね」

高坂さんが納得したように言った。

あくまで高坂さんの興味は龍にしかないようだった。

「厳密には龍の世話というより、龍と信頼関係を結び祷雨とううが行えるよう準備を整えることが、あなた方に求めていることです。龍は神経質で警戒心が強いので」

「あ、あの」

立て板に水を流すようなリョウガさんの説明に、やっとの思いで声をあげる。

祷雨とううってなんですか?」

すると隣でずっと黙っていた斎藤さんが、口を開いた。

「祷雨とはいわゆる雨乞いの儀式です。龍には雨を降らせる力があるのです。その祷雨を行うには祷雨の巫女の存在が必要、その巫女こそが龍声紋の声をもつ女性、つまり」

そこでようやく斎藤さんは、私を見た。




「早川さん、あなたのことですよ」
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