祷雨(とうう)の巫女はまだ決断できない~雨は祈りか、絶望か~

カノンみわ

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第11話 祷雨の巫女

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「早川さんが祷雨とううの巫女なんですよ」

私が祷雨の巫女?

次々と出される情報の多さに、頭がパンクしそうだった。

今までの疑問が整理されたとはいえ、それでも自分に課された使命がピンと来なかった。

そんな中、高坂さんが大きめの声であっけらかんと言った。

「リアル雨乞いの儀式ですか。龍が雨を降らせるって本当なんですね」

え?と思い高坂さんの方を見ると、高坂さんはあっと少し慌てた顔をして頭をかいた。

「いや、実は俺の田舎の近くに、龍神を祀ってる神社があるんですよ。農家が多いんで、昔から日照りがあると龍神様に祈ってたんです。
ここでもそうなのかと思って。本当に雨を降らせるなら、それを見られるって感動です!」

高坂さんのこの順応性の早さというか、前向きさはすごいとしか言いようがない。

「その祷雨?の儀式を行うには早川さんが必要なんですね。…で、俺はなんで呼ばれたんですか?」

なんで自分が呼ばれたのか、それを口にしたときの高坂さんは今までとは違い、少しテンションが落ちたような気がした。
なんか探りをいれてるような。

なんだろう?高坂さんらしくないけど。


「主に行うのは、アユミさんの補佐です」

リョウガさんは大したことではないという風に、あっさりと言った。

「龍はある程度は人慣れしていますが、儀式を行うほどの信頼関係を構築するのは大変です。龍は基本的に気まぐれで行動も読めません。攻撃性はほとんどないと言われていますが、動物の知識がおありとのことなので、アユミさんと龍の橋渡しをお願いします。あとは」

そこで初めて、リョウガさんは初めて高坂さんを見た。

「祷雨の巫女に何かあっては一大事なので、万が一の時は体を張ってもらうことですかね」

リョウガさんに静かに見つめられて、さすがの高坂さんも少し怯んだようだけど、すぐに前向きな笑顔を見せた。

「はい!動物の扱いは任せてください」


「それでは」

と言ってリョウガさんは立ち上がった。

「龍のところへ行きましょうか」


─────────────────────



建物の外に出ると、1台の車が止まっていた。

マイクロバスくらいの大きさで、その車には私たち三人、リョウガさんとその関係者たちが乗り込んだが、あの一番若い男性は乗らなかった。

あの人は来ないのかな?と少し気になったけど、車はそのまま静かに走り出した。

あの物々しい門を潜り、市街地を走る。
そういえば、龍ってどこにいるんだろう。
そう思って隣に座ってる斎藤さんに聞いてみた。

「龍ってどこにいるんですか?飼育してるってことは、どこかに飼育場があるとかですか?」

斎藤さんは前を向いたまま答えた。

「龍は山にいます。飼育しているというより龍が固まってそこで過ごしてるという感じですね。実は世話ってそれほどやることがないんですよ。龍は食事も取らないし」

「何も食べないんですか?」

この質問は高坂さんだった。

やっぱり龍の生態には興味津々のようだった。

「水は飲みますけど固形物は食べないですね。実は龍は光合成ができるんですよ。皮膚に葉緑素があるので、日光を浴びるだけで生きていけるようです。なのでよく日光浴したり、あとは…ほら」

話を区切って、斎藤さんは空を指差した。

今日も晴れ上がった青空が広がっていたが、そこを細長い何かがスーッと飛んでいた。
時おり日光を反射してキラキラ光りながら、それはゆったりと空を泳いでるように見えた。

「え、あれは…?」

「龍ですよ。基本龍は人の目に触れないところで暮らし、ああやってたまに空を飛んでます。
滅多に見ることもないので、こうやって見えるのは幸運ですよ」

本物の龍…!

本当にいたんだ。

龍の話をたくさん聞いたけど、ついに実物を見たのは初めてだった。

「すげえ…」

高坂さんも呆気に取られて空を見つめてる。

「あれが本物の龍か…」

龍への興味が強い高坂さんは、しばらく窓ガラスに張り付いて空を見ていた.

「龍は個体数がかなり減っていて、存在が希少なんですよ。だから唯一龍を飼育できるシオガが貴重なんです」

そんな話を聞きながら、車が走る道に見覚えがあった。

「斎藤さん、この道って」

「はい、こちらについたときに降り立った山、あそこに龍の飼育場があります。このあたりは、日本と繋がってるんですよ。——あなたが思ってるより、ずっと深く」


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