祷雨(とうう)の巫女はまだ決断できない~雨は祈りか、絶望か~

カノンみわ

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第14話 祷雨実行計画

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部屋に戻ってベッドに座り、ユイさんが用意してくれていたお茶を飲んで一息つく。

今日も濃い1日だった。

朝からカーランティとシオガ国の実情を教えられて龍に会って、自分の声が龍に影響を与えることも知った。

本当にこっちに来てから、驚かされることばかりだ。

そういえば、とふと私は気になった。

龍たちが緊張感を持ったあとから高坂さんの反応を見る余裕がなかったけど、あの人はどう思ったんだろう。

龍大好きの人だから、あの龍の様子を前向きにとらえてはいないんじゃないだろうか。

これから一緒に龍合地に通うのは心強いところではあるけれど、あの人の考えが読めない。

このあと夕食の時に顔を会わせるから、その時に様子を見てみるか。

そう考えることにした。


─────────────────────


時間になり食堂に行くと、既に高坂さんは先に席に着いていた。
斎藤さんはまだ来ていない。

私がテーブルに近寄ると、高坂さんはいつもの人懐っこい笑みを見せてきた。

「腹減りましたね!今日もいろいろあったからペコペコです。ここの食事美味いからメニューが楽しみですね」

いつも通りのあっけらかんとした高坂さんだ。

私はおずおずと聞いた。

「あの、さっきの話ですけど、私が言葉を読み上げたら龍たちが緊張してたじゃないですか。高坂さんはあれを見てどう思いました?」

「ああ…」

と少し高坂さんは考えてたみたいだけど

「そういうこともあるんじゃないですか?」

とあっさりと言った。

意外な反応にびっくりしてると、高坂さんは珍しく落ち着いた口調で言った。

「だって龍ですよ。俺たちにとって未知の生き物です。何が負担で何が龍のためになるか、今の俺たちには何も分かりません。これからそれを探っていけばいいんじゃないですか?」

「なるほど…」

高坂さんの言葉はいつになく説得力があった。

やっぱり動物の対応に慣れてるからだろうか。

「それより、これからどうやって龍と関係を築くかで頭を悩ませています。龍って食事を取らないんでしょう?餌やおやつって動物と近づく手っ取り早い方法なんですけど、それが使えないですからね。どうしたもんか…」

高坂さんは既に先を見て色々考えてるようだ。

やっぱりこの人の前向きさはすごいなと思った。


─────────────────────


次の日、また会議室に呼ばれ、リョウガさんたちに具体的な祷雨とうう計画を聞くことになった。

またカーランティの世界地図を見せられ、シオガ国から離れた大陸にある一つの国を示された。

その国は、ハウエン国。

国土はシオガの10倍はありそうだなと思う、なかなかの大きな国だ。

ハウエン国含め周辺は元々は雨も多く湿潤な国で農業も盛んだったようだけど、10年ほど前から異常気象になり雨が激減、特にこの3年ほどは全く雨が降っていないらしい。

しばらくは地下水や湖の水でなんとかやりくりしてきたらしいけど、それらも枯れ果ててしまっているという。

映像も見せられたけれど、元々は畑も広がり木々も豊かに繁っていた土地が、すっかり干上がって荒れ地になっていた。

子どもたちが片道3時間も歩いて水汲みに行かされ、学校も行けなくなっているらしい。
3歳くらいの子どもまで、大きなタンクに水を入れて運んでいる姿を見て胸が痛くなった。

でも、そこまでして運んでる水ですら明らかに濁り、まるで泥水のようだった。
その不衛生な水を飲むことで感染症を引き起こし、たくさんの人が苦しんでいると言う。

それでもあの水が、現在の彼らの唯一の命の水なのだ。

そのハウエン国から祷雨の要請が来た、と言うのが今回の黒龍祷雨計画の全貌だった。


会議室を出たあと、早速龍合地へ行く事になった。

今回は斎藤さんは来ず、リョウガさんの部下の男性がついてくることになった。

車に揺られながら、さっきのハウエン国の映像が目に焼き付いてはなれなかった。

日本でもシオガでも蛇口を捻れば清潔な水が出てくるのが当たり前になっている。

でもあの子どもたちは、その当たり前すら現実ではないのだ。

会議の後から、ずっと言葉少なだった高坂さんが呟いた。

「祷雨、成功させたいよな」

私はその言葉に強くうなずいた。
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