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第18話 雨の日の出会い
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次の日は雨だった。
雨でも龍に会うのは問題はないようだけど、山道が少し危険になるとのことで、雨の日は休みになっていた。
シオガはそこそこ雨が多い国だった。
やはり龍がいるからだろうか。
休みと言っても特にすることはなかった。
私たちは行動を制限されていて、基本は敷地を出るのは龍合地に行くとき以外は禁止されていた。
なのでほぼ全ての時間を敷地内で過ごすことになっていたのだけれど、敷地内には図書館や売店、スポーツジムみたいなのも揃っていて特に不都合はなかった。
でもこの日はどこに行く気にもなれず、食堂でボーッとしとしと降る雨を見ていると、高坂さんがやって来た。
常に用意されている、お茶とお菓子を食べに来たらしい。
私は昨日、ユイさんから聞いた話をまとめて伝えた。
祷雨は昔から行われてるけど、ここ130年以上は行われてなかったこと
それを3年前、斎藤さんがリョウガさんを説き伏せ再開させたこと
この3年で何人か巫女として日本から来たけど、全部祷雨は失敗したこと
その話を聞いて高坂さんは目を丸くしていたけど、どこか腑に落ちたところもあるようだった。
「斎藤さんは確かに何を考えてるのかよく分からないな。異世界で祷雨を起こす理由がずっと気になってたけど、確かに政治的な意図はありそうだ。国が絡んだプロジェクトって言ってたし」
「今さらだけど、とんでもないことに私たち巻き込まれてるのかな…国が保証してるから安心だと思ってたけど」
「まあ、それは今考えても仕方がない。とりあえず俺たちに求められてるのは、祷雨を成功させてハウエン国を救うことだ。そうだろ?」
いつもの人懐っこい笑みを向けられる。
そういえば、高坂さんに龍が懐く理由があるって斎藤さんが言ってたけど、それを聞こうかと思ったとき、高坂さんがスッと立ち上がった。
「でも祷雨が130年以上行われてなかったと言うのも気になる。もしかしたら前の祷雨の記録が残ってるかもしれないから、資料室に行ってみるか?」
「資料室ってどこにあったっけ?」
高坂さんは軽く微笑んだ。
「あの会議室のある建物の中だよ」
─────────────────────
傘を借りて雨の中を歩く。
5分ほど歩くと、あの石造りの建物にたどり着いた。
扉を開くとシンと静まり返った空気に包まれたが、その時に感じた独特の香りを思い出した。
紙とインクの匂い、あれは資料室があったからなのか。
「ここに資料室があったんだ。いつ知ったの?」
「斎藤さんに、この国のことや龍のことを知りたいって言ったら教えてもらった。自由に見ていいって言われたから、多分機密の資料はないのかもしれないけど」
案内されて通ったことのない通路を通ると、その奥に重厚な扉があった。
高坂さんがゆっくり開けると、そこは薄暗いながらも大きな部屋があり、大量の書物が眠っていた。
ほとんどがきれいに整えられて本棚に並んでいたけど、一部は乱雑に散らばっていたりして、あまり管理されてるようではなかった。
「すごい…ここで調べてたの?」
「龍合地へ行く日は時間が取れないけど、雨の日や休みの日はたまに来てるよ」
そうなんだ…
何となく体育会系のイメージの高坂さんが、資料室に通ってるとは意外だった。
「でもこの中から祷雨の資料を探すのは大変だね…」
と呟きながら奥の方に行くと、ガサッと物音がした。
え?とそっちを見ると、ゆっくり立ち上がる人影がいた。
まだ若い、短髪でちょっと小柄な男性、でもどこかで会ったような…
「祷雨の資料を見に来たんですか?」
その男性は挨拶もなく、ちょっとにらむような目つきでこちらを見つめながら聞いてきた。
その時に、あっと思い出した。
この人は、確かリョウガさんの従者の男性だ。
初めての会議のときに資料を配っていたけど、私のところで少し間があって、目は合わなかったけど印象的だったあの人。
あのとき以外にも、リョウガさんの下について雑務や下働きをしてるのを何度も目にした気がする。
その男性が、一人で資料室で何をやってるんだろう。
「はい、130年間祷雨が行われてないと聞いたので、昔の記録が残ってないかと思って」
さっきから気になるんだけど、この男性、私にたいしていい感情を持ってなさそうだ。
龍には避けられてるけど今までシオガの人には歓迎されてきたから、ここで冷たい態度を取られることに私は戸惑っていた。
「どうかした?」
話し声を聞き付けたのか高坂さんがやってきて、その男性を見つけ「あんたは…」と目を見開いて呟いた。
その男性が誰か、気づいたようだった。
彼は私たちを相変わらず鋭い目線で見つめながら、はっきりと言った。
「祷雨を行ってはいけません。危険です」
雨でも龍に会うのは問題はないようだけど、山道が少し危険になるとのことで、雨の日は休みになっていた。
シオガはそこそこ雨が多い国だった。
やはり龍がいるからだろうか。
休みと言っても特にすることはなかった。
私たちは行動を制限されていて、基本は敷地を出るのは龍合地に行くとき以外は禁止されていた。
なのでほぼ全ての時間を敷地内で過ごすことになっていたのだけれど、敷地内には図書館や売店、スポーツジムみたいなのも揃っていて特に不都合はなかった。
でもこの日はどこに行く気にもなれず、食堂でボーッとしとしと降る雨を見ていると、高坂さんがやって来た。
常に用意されている、お茶とお菓子を食べに来たらしい。
私は昨日、ユイさんから聞いた話をまとめて伝えた。
祷雨は昔から行われてるけど、ここ130年以上は行われてなかったこと
それを3年前、斎藤さんがリョウガさんを説き伏せ再開させたこと
この3年で何人か巫女として日本から来たけど、全部祷雨は失敗したこと
その話を聞いて高坂さんは目を丸くしていたけど、どこか腑に落ちたところもあるようだった。
「斎藤さんは確かに何を考えてるのかよく分からないな。異世界で祷雨を起こす理由がずっと気になってたけど、確かに政治的な意図はありそうだ。国が絡んだプロジェクトって言ってたし」
「今さらだけど、とんでもないことに私たち巻き込まれてるのかな…国が保証してるから安心だと思ってたけど」
「まあ、それは今考えても仕方がない。とりあえず俺たちに求められてるのは、祷雨を成功させてハウエン国を救うことだ。そうだろ?」
いつもの人懐っこい笑みを向けられる。
そういえば、高坂さんに龍が懐く理由があるって斎藤さんが言ってたけど、それを聞こうかと思ったとき、高坂さんがスッと立ち上がった。
「でも祷雨が130年以上行われてなかったと言うのも気になる。もしかしたら前の祷雨の記録が残ってるかもしれないから、資料室に行ってみるか?」
「資料室ってどこにあったっけ?」
高坂さんは軽く微笑んだ。
「あの会議室のある建物の中だよ」
─────────────────────
傘を借りて雨の中を歩く。
5分ほど歩くと、あの石造りの建物にたどり着いた。
扉を開くとシンと静まり返った空気に包まれたが、その時に感じた独特の香りを思い出した。
紙とインクの匂い、あれは資料室があったからなのか。
「ここに資料室があったんだ。いつ知ったの?」
「斎藤さんに、この国のことや龍のことを知りたいって言ったら教えてもらった。自由に見ていいって言われたから、多分機密の資料はないのかもしれないけど」
案内されて通ったことのない通路を通ると、その奥に重厚な扉があった。
高坂さんがゆっくり開けると、そこは薄暗いながらも大きな部屋があり、大量の書物が眠っていた。
ほとんどがきれいに整えられて本棚に並んでいたけど、一部は乱雑に散らばっていたりして、あまり管理されてるようではなかった。
「すごい…ここで調べてたの?」
「龍合地へ行く日は時間が取れないけど、雨の日や休みの日はたまに来てるよ」
そうなんだ…
何となく体育会系のイメージの高坂さんが、資料室に通ってるとは意外だった。
「でもこの中から祷雨の資料を探すのは大変だね…」
と呟きながら奥の方に行くと、ガサッと物音がした。
え?とそっちを見ると、ゆっくり立ち上がる人影がいた。
まだ若い、短髪でちょっと小柄な男性、でもどこかで会ったような…
「祷雨の資料を見に来たんですか?」
その男性は挨拶もなく、ちょっとにらむような目つきでこちらを見つめながら聞いてきた。
その時に、あっと思い出した。
この人は、確かリョウガさんの従者の男性だ。
初めての会議のときに資料を配っていたけど、私のところで少し間があって、目は合わなかったけど印象的だったあの人。
あのとき以外にも、リョウガさんの下について雑務や下働きをしてるのを何度も目にした気がする。
その男性が、一人で資料室で何をやってるんだろう。
「はい、130年間祷雨が行われてないと聞いたので、昔の記録が残ってないかと思って」
さっきから気になるんだけど、この男性、私にたいしていい感情を持ってなさそうだ。
龍には避けられてるけど今までシオガの人には歓迎されてきたから、ここで冷たい態度を取られることに私は戸惑っていた。
「どうかした?」
話し声を聞き付けたのか高坂さんがやってきて、その男性を見つけ「あんたは…」と目を見開いて呟いた。
その男性が誰か、気づいたようだった。
彼は私たちを相変わらず鋭い目線で見つめながら、はっきりと言った。
「祷雨を行ってはいけません。危険です」
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