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第17話 空白の神事
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ほぼ毎日龍合地に通い、龍の気まぐれに振り回される日々。
高坂さんも気遣って龍たちに私を近付けさせようと尽力してくれてるけど、それらは全く効果がなかった。
何の結果も出ず、日にちだけがむなしく過ぎていく。
そんな私の唯一の心の拠り所は、ユイさんとのお喋りだった。
ユイさんは普段は洗濯や掃除など身の回りの世話、お茶を用意してくれたり日用品を補充してくれたりと至れり尽くせり気を配ってくれた。
そんなユイさんと時間を見つけて、語り合うのが私の休息時間になっていた。
「龍は気まぐれって聞きますからね。私は龍を近くで見たことはないんですけど、個性も強くてなかなか一筋縄では行かないって夫も言ってました」
やっぱりそうなのか…
ますます焦りが出てきた。
高坂さんも手探りで方法を探すしかないって言ってたけど、間に合うんだろうか。
と思って、ふと別のことが気になってユイさんに聞いた。
「あの、リョウガさんって家ではどんな感じなんですか?」
あの落ち着きがありながら仕事に厳しそうで、たまに圧を感じるリョウガさんは、プライベートってどんな感じなんだろう。
「夫ですか?優しい方だと思いますよ。口数が少ないので、たまにつまらない人だなって思いますけど」
クスクス笑うユイさんを見て、夫婦仲は円満そうだと思った。
「その…、第一夫人とは一緒に住んでるんですか?」
「はい、一緒に住んでます。私には子どもがいないですが、第一夫人の上の子が今思春期で手を焼いてるみたいですけど、私とは歳が近いせいかたまに喋ってくれます」
「そ、そうなんですか…」
やっぱり理解できないけど、ユイさんたちの家庭はそれなりにうまく行っているようだ。
この価値観はなかなか慣れない。
─────────────────────
「今回は祷雨は成功するんですかねえ…」
ポソっとしたユイさんの呟きに、私は思わずえ?と聞き返した。
「祷雨は何回も行われてるんじゃないんですか?今まで何人も祷雨の巫女は来てるんですよね」
「私も詳しくは分からないんですけど」
ユイさんは、少し首をかしげながら続けた。
「確かに何人か巫女候補の方は来られました。
でも私は一度も祷雨で雨が降ったところを見たことがないです。多分130年以上、祷雨は成功していないと思いますよ」
祷雨が成功していない?
「そんなに難しいんですか?」
てっきり祷雨は、龍がいて、巫女がいれば、それだけで成り立つものだと思ってた。
「私もよく分からないんですけど、龍と関係を築けず任期が満了になったり、実際儀式を行っても雨が降らなかったりしたみたいです。実際に祷雨を目の当たりにした人間は、今はいないと思いますね」
そうなんだ…
「じゃあハウエン国からの要請も…」
「はい、実は正直あまり期待されてないんじゃないかと思います」
─────────────────────
期待されてない…
その言葉がズッシリと心にのし掛かった。
こんなに頑張ってるけど、祷雨の成功を誰も期待してないんだ。
じゃあ何で私は頑張ってるんだろう。
私が一気に落ち込むのを見て、ユイさんは慌てて言葉を続けた。
「ごめんなさい、期待されてないは言いすぎです。アユミさんはすごく期待されてます!」
「え?」
そうなの?
思わず顔を上げると、ユイさんは訴えるように私の目を見てきた。
「これも夫情報ですけど、アユミさんの龍声紋の威力はかつてないって聞きましたよ。いつも冷めてる夫が、この話は少し興奮気味に話すんです。今回は本当に祷雨が成功するかもしれないって」
ユイさんが必死に励ましてくるのを見て、少し冷静になった。
確かに私の龍声紋の威力が期待以上だと斎藤さんも言ってたし、ケイドさんもあんな龍の反応は見たことないって言ってたな。
私には本当にその素質があるんだろうか?
「130年て言いましたけど、祷雨ってずっと行われてなかったんです。でも3年くらい前に斎藤さんがあの役職に就かれてから、祷雨計画が行われ始めました」
「斎藤さんが?」
「私は斎藤さんとほとんど喋ったことがないので詳しくは分からないんですけど、最初は祷雨に渋ってた夫を説き伏せたのは斎藤さんです。龍声紋を数値化する技術を開発したとか言って。
それでも今までは失敗してたから、今回のアユミさんはすごく期待されてますよ」
「……」
情報量がすごいけど、とりあえずずっと行われていなかった祷雨を復活させたのは斎藤さんだったと言うことは分かった。
あの人の思惑はどこにあるんだろう。
ずっと読めない人だと思ってきたけど、ますます謎が深まってきた。
斎藤さんはキャリア官僚だし、リョウガさんが応じたのももしかしたら政治的な意図があるのかもしれない。
でもーーー
私は、あの子どもたちを救いたい。
「私に可能性を皆さんが感じてくれてるなら、私、頑張ります」
その言葉にユイさんは、ほっとしたようににっこり笑った。
高坂さんも気遣って龍たちに私を近付けさせようと尽力してくれてるけど、それらは全く効果がなかった。
何の結果も出ず、日にちだけがむなしく過ぎていく。
そんな私の唯一の心の拠り所は、ユイさんとのお喋りだった。
ユイさんは普段は洗濯や掃除など身の回りの世話、お茶を用意してくれたり日用品を補充してくれたりと至れり尽くせり気を配ってくれた。
そんなユイさんと時間を見つけて、語り合うのが私の休息時間になっていた。
「龍は気まぐれって聞きますからね。私は龍を近くで見たことはないんですけど、個性も強くてなかなか一筋縄では行かないって夫も言ってました」
やっぱりそうなのか…
ますます焦りが出てきた。
高坂さんも手探りで方法を探すしかないって言ってたけど、間に合うんだろうか。
と思って、ふと別のことが気になってユイさんに聞いた。
「あの、リョウガさんって家ではどんな感じなんですか?」
あの落ち着きがありながら仕事に厳しそうで、たまに圧を感じるリョウガさんは、プライベートってどんな感じなんだろう。
「夫ですか?優しい方だと思いますよ。口数が少ないので、たまにつまらない人だなって思いますけど」
クスクス笑うユイさんを見て、夫婦仲は円満そうだと思った。
「その…、第一夫人とは一緒に住んでるんですか?」
「はい、一緒に住んでます。私には子どもがいないですが、第一夫人の上の子が今思春期で手を焼いてるみたいですけど、私とは歳が近いせいかたまに喋ってくれます」
「そ、そうなんですか…」
やっぱり理解できないけど、ユイさんたちの家庭はそれなりにうまく行っているようだ。
この価値観はなかなか慣れない。
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「今回は祷雨は成功するんですかねえ…」
ポソっとしたユイさんの呟きに、私は思わずえ?と聞き返した。
「祷雨は何回も行われてるんじゃないんですか?今まで何人も祷雨の巫女は来てるんですよね」
「私も詳しくは分からないんですけど」
ユイさんは、少し首をかしげながら続けた。
「確かに何人か巫女候補の方は来られました。
でも私は一度も祷雨で雨が降ったところを見たことがないです。多分130年以上、祷雨は成功していないと思いますよ」
祷雨が成功していない?
「そんなに難しいんですか?」
てっきり祷雨は、龍がいて、巫女がいれば、それだけで成り立つものだと思ってた。
「私もよく分からないんですけど、龍と関係を築けず任期が満了になったり、実際儀式を行っても雨が降らなかったりしたみたいです。実際に祷雨を目の当たりにした人間は、今はいないと思いますね」
そうなんだ…
「じゃあハウエン国からの要請も…」
「はい、実は正直あまり期待されてないんじゃないかと思います」
─────────────────────
期待されてない…
その言葉がズッシリと心にのし掛かった。
こんなに頑張ってるけど、祷雨の成功を誰も期待してないんだ。
じゃあ何で私は頑張ってるんだろう。
私が一気に落ち込むのを見て、ユイさんは慌てて言葉を続けた。
「ごめんなさい、期待されてないは言いすぎです。アユミさんはすごく期待されてます!」
「え?」
そうなの?
思わず顔を上げると、ユイさんは訴えるように私の目を見てきた。
「これも夫情報ですけど、アユミさんの龍声紋の威力はかつてないって聞きましたよ。いつも冷めてる夫が、この話は少し興奮気味に話すんです。今回は本当に祷雨が成功するかもしれないって」
ユイさんが必死に励ましてくるのを見て、少し冷静になった。
確かに私の龍声紋の威力が期待以上だと斎藤さんも言ってたし、ケイドさんもあんな龍の反応は見たことないって言ってたな。
私には本当にその素質があるんだろうか?
「130年て言いましたけど、祷雨ってずっと行われてなかったんです。でも3年くらい前に斎藤さんがあの役職に就かれてから、祷雨計画が行われ始めました」
「斎藤さんが?」
「私は斎藤さんとほとんど喋ったことがないので詳しくは分からないんですけど、最初は祷雨に渋ってた夫を説き伏せたのは斎藤さんです。龍声紋を数値化する技術を開発したとか言って。
それでも今までは失敗してたから、今回のアユミさんはすごく期待されてますよ」
「……」
情報量がすごいけど、とりあえずずっと行われていなかった祷雨を復活させたのは斎藤さんだったと言うことは分かった。
あの人の思惑はどこにあるんだろう。
ずっと読めない人だと思ってきたけど、ますます謎が深まってきた。
斎藤さんはキャリア官僚だし、リョウガさんが応じたのももしかしたら政治的な意図があるのかもしれない。
でもーーー
私は、あの子どもたちを救いたい。
「私に可能性を皆さんが感じてくれてるなら、私、頑張ります」
その言葉にユイさんは、ほっとしたようににっこり笑った。
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