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第16話 焦り
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「まさか龍が、初対面の人間にそんなに懐くなんて…」
ケイドさんの驚きをよそに、メイリンはぐいぐいと顔を高坂さんに擦り付けている。
目を細めてリラックスしてるように見えて、心底高坂さんに心を開いてるようだ。
高坂さんも嬉しそうに、メイリンの頭や頬を撫でている。
その様子を見て、私はズーンと落ち込んだ。
私の何が気に入らなかったんだろう。
私は巫女として龍と心を通わせる役目を持っているのに、たった一回の挨拶でこんなに距離を感じるなんて。
まるで、素質がないと突きつけられたみたいだった。
私が露骨に落ち込んでるのを見て、ケイドさんが慰めてきた。
「アユミさん、落ち込むことはないですよ。メイリンの反応は龍として普通です。むしろ逃げなかったし怯えた風もありませんでした。
これから距離が近付く可能性は十分にあります。高坂さんがまれなんです」
そうなんだろうか?
私は巫女としてこれから祷雨を行わなければいけないのに、何だか先行きは不安そのものだった。
「とりあえず祷雨までは3ヶ月以上あります。3ヶ月あれば、きっと龍たちとも心が通い合うはずです。高坂さんもいますし、間に立ってもらいましょう」
そのケイドさんの言葉にすがりそうになりながら、私は大きくため息をついた。
でもその時あれ?と思った。
私はシオガには半年滞在契約だけど、祷雨は3ヶ月後だと言う。
その祷雨のあとの3ヶ月、まだ何かあるんだろうか?
もしや、祷雨の後こそが“本番”だったりするのかな。
何だか不穏な感じがするのは、気のせいだろうか。
でも、祷雨を行わないと、ハウエンの人たちを救うことはできない。
先のことをあれこれ考えるより、私は今できることをやるしかない、そう思うことにした。
─────────────────────
それから私と高坂さん、ケイドさんの龍合地訪問は何度も繰り返された。
最初の時よりはましにはなってきたけど、メイリンは相変わらずだった。
いつも私を避けて、高坂さんにばかり近寄っていく。
他の龍も明らかに高坂さんに好感を示していて、私はすっかり蚊帳の外だ。
たまにライタンやサンライがこちらに近寄ってくる素振りは見せるけれど、いつも途中で気が変わるのかフイっと離れていってしまう。
そんな龍の気まぐれに振り回される日が続いて、焦りを感じ始めていた。
─────────────────────
「早川さん、龍とは仲良くなれていますか?」
斎藤さんにも聞かれてしまい、言葉につまる。
「頑張ってるんですけど…、いや、龍たちのペースを乱さないように焦らないようはしてるつもりなんですけど、でもなかなかうまく行かなくて。逆に高坂さんは龍とすっかり仲良くなってるようです」
「ああ、それは…」
と言いかけて、斎藤さんは口をつぐんだ。
その続きが気になり、私はたまらず斎藤さんを問い詰めた。
「何かあるんですか?高坂さんにあって私にないものが?」
いつにない私の圧に斎藤さんも怯んだみたいだったけど、返す言葉はいつも通り冷静だった。
「落ち着いてください。高坂さんが龍と相性がいいだろうと言うのは、最初から分かってました。その理由は本人に聞いてみられたらいいと思いますよ。ただ」
斎藤さんは少し目を伏せた。
「ご本人が答えるかは分からないですけど」
その意味深な言葉に思わず食い下がる。
「高坂さんが龍に好かれるのは、動物慣れしてるからだけじゃないんですか?」
「それもあると思いますよ。現に知識が豊富で龍へのアプローチもスムーズだと、ケイドさんから聞いてます」
「でも、それだけじゃない気が…」
「早川さんは早川さんのペースで頑張ってください。でも祷雨の日程はもう決定しているので、それまでにはお願いします」
祷雨の予定まで、あと1ヶ月を切っていた。
どうしよう、このままメイリンや龍たちと信頼関係を結べなかったら。
このままじゃ祷雨が行えない。
そうするとあの小さな体で水を運んでる子どもたち、泥水を口にしてる子どもたちを救えない。
自分の無力さに泣けてきそうだった。
私には何ができるんだろう。
焦る気持ちがどうしても消えなかった。
ケイドさんの驚きをよそに、メイリンはぐいぐいと顔を高坂さんに擦り付けている。
目を細めてリラックスしてるように見えて、心底高坂さんに心を開いてるようだ。
高坂さんも嬉しそうに、メイリンの頭や頬を撫でている。
その様子を見て、私はズーンと落ち込んだ。
私の何が気に入らなかったんだろう。
私は巫女として龍と心を通わせる役目を持っているのに、たった一回の挨拶でこんなに距離を感じるなんて。
まるで、素質がないと突きつけられたみたいだった。
私が露骨に落ち込んでるのを見て、ケイドさんが慰めてきた。
「アユミさん、落ち込むことはないですよ。メイリンの反応は龍として普通です。むしろ逃げなかったし怯えた風もありませんでした。
これから距離が近付く可能性は十分にあります。高坂さんがまれなんです」
そうなんだろうか?
私は巫女としてこれから祷雨を行わなければいけないのに、何だか先行きは不安そのものだった。
「とりあえず祷雨までは3ヶ月以上あります。3ヶ月あれば、きっと龍たちとも心が通い合うはずです。高坂さんもいますし、間に立ってもらいましょう」
そのケイドさんの言葉にすがりそうになりながら、私は大きくため息をついた。
でもその時あれ?と思った。
私はシオガには半年滞在契約だけど、祷雨は3ヶ月後だと言う。
その祷雨のあとの3ヶ月、まだ何かあるんだろうか?
もしや、祷雨の後こそが“本番”だったりするのかな。
何だか不穏な感じがするのは、気のせいだろうか。
でも、祷雨を行わないと、ハウエンの人たちを救うことはできない。
先のことをあれこれ考えるより、私は今できることをやるしかない、そう思うことにした。
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それから私と高坂さん、ケイドさんの龍合地訪問は何度も繰り返された。
最初の時よりはましにはなってきたけど、メイリンは相変わらずだった。
いつも私を避けて、高坂さんにばかり近寄っていく。
他の龍も明らかに高坂さんに好感を示していて、私はすっかり蚊帳の外だ。
たまにライタンやサンライがこちらに近寄ってくる素振りは見せるけれど、いつも途中で気が変わるのかフイっと離れていってしまう。
そんな龍の気まぐれに振り回される日が続いて、焦りを感じ始めていた。
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「早川さん、龍とは仲良くなれていますか?」
斎藤さんにも聞かれてしまい、言葉につまる。
「頑張ってるんですけど…、いや、龍たちのペースを乱さないように焦らないようはしてるつもりなんですけど、でもなかなかうまく行かなくて。逆に高坂さんは龍とすっかり仲良くなってるようです」
「ああ、それは…」
と言いかけて、斎藤さんは口をつぐんだ。
その続きが気になり、私はたまらず斎藤さんを問い詰めた。
「何かあるんですか?高坂さんにあって私にないものが?」
いつにない私の圧に斎藤さんも怯んだみたいだったけど、返す言葉はいつも通り冷静だった。
「落ち着いてください。高坂さんが龍と相性がいいだろうと言うのは、最初から分かってました。その理由は本人に聞いてみられたらいいと思いますよ。ただ」
斎藤さんは少し目を伏せた。
「ご本人が答えるかは分からないですけど」
その意味深な言葉に思わず食い下がる。
「高坂さんが龍に好かれるのは、動物慣れしてるからだけじゃないんですか?」
「それもあると思いますよ。現に知識が豊富で龍へのアプローチもスムーズだと、ケイドさんから聞いてます」
「でも、それだけじゃない気が…」
「早川さんは早川さんのペースで頑張ってください。でも祷雨の日程はもう決定しているので、それまでにはお願いします」
祷雨の予定まで、あと1ヶ月を切っていた。
どうしよう、このままメイリンや龍たちと信頼関係を結べなかったら。
このままじゃ祷雨が行えない。
そうするとあの小さな体で水を運んでる子どもたち、泥水を口にしてる子どもたちを救えない。
自分の無力さに泣けてきそうだった。
私には何ができるんだろう。
焦る気持ちがどうしても消えなかった。
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