祷雨(とうう)の巫女はまだ決断できない~雨は祈りか、絶望か~

カノンみわ

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第20話 涙が結ぶもの

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次の日は前日とうって変わって、きれいな青空が広がっていた。

この空の青さは、日本もシオガも変わらない。

こっちに来て本当に驚くことばかりだけど、でもシオガにはシオガの文化と歴史がある。

私はそれを受け止めるしかないんだ。

そう思うことにした。


龍合地に着くと、いつもの5頭の龍がのんびり日向ぼっこをしていた。

この光景は本当にのどかで、いつまでも見ていたくなる。

でも私にはやらなきゃいけない使命がある。

いろんな思惑が絡んでるかもしれない祷雨とううだけど、私が今一番に考えないといけないのは、あのハウエンの人たちに水を届けることだ。

少なくとも雨が降れば、あの子どもたちが助かるのは事実。

今はそれに集中するしかない。

そう腹を括った。


しかし、龍たちは今日も私を避けていく。

距離が縮まったかと期待した翌日にはまた距離をおかれたり、本当に振り回される。

ケイドさんは威嚇したり、飛んで逃げないのだから大丈夫と言ってくれるけど、もうこの状態が2ヶ月以上続いてる。

さすがに心が折れそうだった。

高坂さんには甘え、すり寄る龍たち。

私は何がダメなんだろう。

今までの巫女たちにも龍と関係を築けず、祷雨が行えない人もいたとユイさんも言っていた。

私もそうなるんじゃないだろうか。

でも今こうしてる間でも、ハウエン国では子どもたちが泥水を飲むしかない生活を送っている。

助けたい。

でも自分には、これ以上何もできない。

その考えに囚われ、自分がだんだん情けなくなってきた。

感情が込み上げてきて顔を押さえる。

涙が止まらない。

「…メイリン」

嗚咽も止まらない。

「ライタン、サンライ、みんな…」

その場にしゃがみこむ。

「助けて…」




どれくらいそうしていたのか分からない。

ふと、何かの気配を感じて顔を上げた。

すると至近距離でメイリンがいた。

あの深い青色の目で、こちらをじっと見下ろしている。

息を飲む。言葉がでない。

「メイリン…?」

やっとの思いで名前を呟くと、メイリンは顔を近付け、そのまま私の顔をべろっと舐めた。

え?

と思っていると、他の龍たちも集まってきて私の全身を舐め始めた。

「ちょ、ちょっと…」

龍たちにもみくちゃにされながら、一通り舐められ終わったあと、私は全身が龍の唾液でびちょびちょになっていた。

呆然としている私に、メイリンが顔をこすりつけてくる。

これは…?と思っていると、ケイドさんがホッとしたように微笑んだ。

「よかったですね、アユミさん。龍たちに巫女として認められましたよ」


─────────────────────


そこから龍たちの態度は一変した。

私に積極的に近寄ってきて顔を擦り付けたり、長い尻尾で私を抱き寄せようとしたりする。

特にメイリンが甘えっ子だった。

あの塩対応が信じられないほど、私にベタベタとくっついてくる。

高坂さんもそれを見て安堵したようだった。

「良かったな。警戒心の強い個体ほど、甘えたい性格が多いんだ。メイリンはまさにそのタイプかもな」

そうなんだ…と高坂さんと会話することすら邪魔するように、メイリンがグイグイ体を擦り付けてくる。

まるで自分をもっと見て欲しいと言うように。

かわいい。

斎藤さんが龍も懐くとかわいいと言っていたけど、その比じゃない。

言葉は交わせないけど、全身で愛情を示してくるメイリンがかわいくて仕方なかった。

これで私は祷雨を行えるかもしれない。

そう考えると泣きそうに嬉しかった。



それからは龍合地に通うのが楽しくてたまらなくなった。

私たちの姿を見ると龍たちの方から近寄ってくる。

龍ってこんなに感情が豊かな生き物なんだ。

擦り付けてくる顔や体を撫でてやると嬉しそうに目を細める。

「早く一緒に祷雨ができたらいいね」

そうメイリンに語りかけた。


─────────────────────



数日後に雨が降った。

雨が降れば、龍合地には行けない。

高坂さんと話し合い、またあの資料室へ向かった。

少しでも祷雨の情報を得たかったからだ。

資料室にセイランさんがいるかと思ったけど、その時はいなかった。

ここには休憩時間にしか来られないみたいだから、いられる時間は少ないのかもしれない。

高坂さんと手分けして本や資料を探してみたけど、祷雨の詳しい内容について書かれてるものはやっぱり見当たらなかった。

「量が多いから全部見きれないけど、やっぱりなさそうだね」

「ここじゃないところに、保管してるのかもしれないな」

祷雨を行うことに迷いはない。

でも何となく不穏なものを感じると言うか、セイランさんの言う「祷雨は危険」と言う言葉が気になって仕方なかった。

そろそろ出ようか、と高坂さんと話して立ち上がったとき、雨音に混じって資料室の扉が重々しくゆっくりと開く音がした。



入ってきたのは、セイランさんだった。
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