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第21話 祷雨の代償
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雨音に混じって、ゆっくり資料室の扉が開く音がする。
そこに現れたのは、セイランさんだった。
こっちも驚いたけど、セイランさんも予想外だったみたいで私たちを見て固まっている。
一瞬の間のあと、そのまま扉を閉めて出ていこうとしたので、思わず呼び止めた。
「待って!」
閉まりかけた扉が止まり、そしてまたゆっくりと開いた。
「何ですか?」
鬱陶しげな、めんどくさそうな口調だった。
明らかに好意的な態度ではない。
横から高坂さんが出てきて、セイランさんに話しかけた。
「祷雨が危険だってこないだ言ってましたよね?その理由を教えてください」
背の高い高坂さんと、小柄なセイランさんの身長差は20センチはありそうだ。
そんな体格のいい高坂さんに見下ろされ、セイランさんは少し怯んだようだったけど、少し視線を泳がせたあと、ぐっと顎を引き、まっすぐこちらを見た。
逃げるのをやめた人間の、強いまなざしだった。
「分かりました、お話しします」
─────────────────────
「まず、祷雨の資料はここにはありませんよ」
資料室の中に入ったセイランさんの第一声はこれだった。
「そうなんですか?」
「昔はあったんですけど、祷雨計画が動き出してから書庫に仕舞われました。一般人は見れないですね」
「なんでそこまでして隠すんですか?」
セイランさんは軽く肩をすくめた。
「祷雨の実態が悲惨だからです」
悲惨?
その一言に、背中がひやりとした。
危険、なんて生ぬるい話じゃないのかもしれない。
「具体的に教えて欲しいんですけど」
話がなかなか進まないので少し焦れた気持ちになりながら言うと、セイランさんは少し間を空けたあと、分かりました、と言った。
「書庫に行きましょうか。そこには昔から行われてきた祷雨の記述のある古文書もあります。まあ、読める人はほとんどいないんですけど」
横で話を聞いていた高坂さんが、しばらく考えるように眉をひそめたあと、小さく頷いた。
「お願いします」
─────────────────────
セイランさんにつれられ資料室を出て、いつもは通らない方の通路を歩く。
すると柱の陰に、地下に伸びる階段があった。
いかにも人を寄せ付けない、物々しい雰囲気があったが、セイランさんはためらいもなく降りていく。
「本当は私もここに入っては駄目なんですけどね、リョウガさんたちが今日は外出しているので、ちょうど良かったです」
それは身分の問題なのかな?
セイランさんが持っていた鍵束からある鍵を取りだしガチャリと鍵を開けて、扉がゆっくりと開いた。
中からムワっとした埃っぽい、少しカビ臭いにおいがした。
セイランさんが壁を探ると電球が光り、中が照らされる。
そこは思ったよりは広い空間だったけど、資料室とは比べ物にならないくらい、本たちは乱雑に置かれていた。
「こっちです」
呼ばれて奥の方へ行くと、そこには明らかに古そうなボロボロの書物と、まだ比較的新しい書類たちが置かれていた。
この新しい書類たちが、最近移動させた祷雨の資料なんだろう。
「新しい資料も目を通された方がいいかと思いますが、今回私がお見せしたかったのはこっちです」
言いながら、あるかなり年季の入った紙の束を取り出した。
その紐で綴じられた紙束を、セイランさんがそっと開いた。
まるで博物館に眠っていそうな、時代の重みがそこにあった。
「ここを見てください」
指し示されたところを見たけど、正直何を書いているのか分からなかった。
かなり古い文体で、今のシオガの文字は読める私たちでもさっぱりだった。
「これは?」
「ここには昔、祷雨を行った実態が描かれています。恐らくここに書かれているのは2000年前」
「2000年!?」
「これをセイランさんは読めるんですか?」
高坂さんの問いにセイランさんは頷いた。
「全てではないですけど、独学で学びました。多分これを読める人は私以外はいないと思います」
「2000年前何があったんですか?」
セイランさんはその文字を読みながら眉をしかめた。
「天変地異のような異常気象です。祷雨は大きく気象を狂わす力があるんです」
─────────────────────
「天変地異?」
「はい、2000年前にはわりと頻繁に祷雨が行われてました。それで気象の均衡が崩れ世界的に洪水や干ばつ、熱波や寒波が襲って人口は2割減ったようです」
「そんなに……」
「正直1回の祷雨では、そこまで大きな影響はないかもしれない。でも祷雨は、とんでもない大雨を引き起こすことは知られています。130年前の祷雨の時も洪水が起きて、それの恐怖を感じた人たちが祷雨を禁じたんです」
「……」
言葉を失ってる私たちに、セイランさんはさらに言葉を被せてきた。
「もう一つ、多分ご存じないと思うことを伝えますけど」
なんだろう。嫌な予感がする。
「祷雨の儀式は、龍の命と引き換えですよ」
そこに現れたのは、セイランさんだった。
こっちも驚いたけど、セイランさんも予想外だったみたいで私たちを見て固まっている。
一瞬の間のあと、そのまま扉を閉めて出ていこうとしたので、思わず呼び止めた。
「待って!」
閉まりかけた扉が止まり、そしてまたゆっくりと開いた。
「何ですか?」
鬱陶しげな、めんどくさそうな口調だった。
明らかに好意的な態度ではない。
横から高坂さんが出てきて、セイランさんに話しかけた。
「祷雨が危険だってこないだ言ってましたよね?その理由を教えてください」
背の高い高坂さんと、小柄なセイランさんの身長差は20センチはありそうだ。
そんな体格のいい高坂さんに見下ろされ、セイランさんは少し怯んだようだったけど、少し視線を泳がせたあと、ぐっと顎を引き、まっすぐこちらを見た。
逃げるのをやめた人間の、強いまなざしだった。
「分かりました、お話しします」
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「まず、祷雨の資料はここにはありませんよ」
資料室の中に入ったセイランさんの第一声はこれだった。
「そうなんですか?」
「昔はあったんですけど、祷雨計画が動き出してから書庫に仕舞われました。一般人は見れないですね」
「なんでそこまでして隠すんですか?」
セイランさんは軽く肩をすくめた。
「祷雨の実態が悲惨だからです」
悲惨?
その一言に、背中がひやりとした。
危険、なんて生ぬるい話じゃないのかもしれない。
「具体的に教えて欲しいんですけど」
話がなかなか進まないので少し焦れた気持ちになりながら言うと、セイランさんは少し間を空けたあと、分かりました、と言った。
「書庫に行きましょうか。そこには昔から行われてきた祷雨の記述のある古文書もあります。まあ、読める人はほとんどいないんですけど」
横で話を聞いていた高坂さんが、しばらく考えるように眉をひそめたあと、小さく頷いた。
「お願いします」
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セイランさんにつれられ資料室を出て、いつもは通らない方の通路を歩く。
すると柱の陰に、地下に伸びる階段があった。
いかにも人を寄せ付けない、物々しい雰囲気があったが、セイランさんはためらいもなく降りていく。
「本当は私もここに入っては駄目なんですけどね、リョウガさんたちが今日は外出しているので、ちょうど良かったです」
それは身分の問題なのかな?
セイランさんが持っていた鍵束からある鍵を取りだしガチャリと鍵を開けて、扉がゆっくりと開いた。
中からムワっとした埃っぽい、少しカビ臭いにおいがした。
セイランさんが壁を探ると電球が光り、中が照らされる。
そこは思ったよりは広い空間だったけど、資料室とは比べ物にならないくらい、本たちは乱雑に置かれていた。
「こっちです」
呼ばれて奥の方へ行くと、そこには明らかに古そうなボロボロの書物と、まだ比較的新しい書類たちが置かれていた。
この新しい書類たちが、最近移動させた祷雨の資料なんだろう。
「新しい資料も目を通された方がいいかと思いますが、今回私がお見せしたかったのはこっちです」
言いながら、あるかなり年季の入った紙の束を取り出した。
その紐で綴じられた紙束を、セイランさんがそっと開いた。
まるで博物館に眠っていそうな、時代の重みがそこにあった。
「ここを見てください」
指し示されたところを見たけど、正直何を書いているのか分からなかった。
かなり古い文体で、今のシオガの文字は読める私たちでもさっぱりだった。
「これは?」
「ここには昔、祷雨を行った実態が描かれています。恐らくここに書かれているのは2000年前」
「2000年!?」
「これをセイランさんは読めるんですか?」
高坂さんの問いにセイランさんは頷いた。
「全てではないですけど、独学で学びました。多分これを読める人は私以外はいないと思います」
「2000年前何があったんですか?」
セイランさんはその文字を読みながら眉をしかめた。
「天変地異のような異常気象です。祷雨は大きく気象を狂わす力があるんです」
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「天変地異?」
「はい、2000年前にはわりと頻繁に祷雨が行われてました。それで気象の均衡が崩れ世界的に洪水や干ばつ、熱波や寒波が襲って人口は2割減ったようです」
「そんなに……」
「正直1回の祷雨では、そこまで大きな影響はないかもしれない。でも祷雨は、とんでもない大雨を引き起こすことは知られています。130年前の祷雨の時も洪水が起きて、それの恐怖を感じた人たちが祷雨を禁じたんです」
「……」
言葉を失ってる私たちに、セイランさんはさらに言葉を被せてきた。
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なんだろう。嫌な予感がする。
「祷雨の儀式は、龍の命と引き換えですよ」
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