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第25話 命ずる日
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ハウエン国での祷雨まで、あと一週間を切った。
あの最後の会議から数日あったけど、雨の日があったのもあり龍合地には行けていなかった。
けれど、今日は行かなければいけなかった。
祷雨の龍と巫女として、メイリンと契約を交わさなければならなかったからだ。
あの山道を重い足取りで歩く。
この日は久しぶりにリョウガさんも斎藤さんも同行していた。
龍合地につくと、真っ先にメイリンが寄ってきた。
一週間近く会えてなかったのを寂しがるかのように、顔を擦り付け尻尾を絡めてくる。
メイリン。
かわいいメイリン。
ごめんね。私はあなたを……
そう思うと、涙が止まらなかった。
ギュッとメイリンのちょっと固い身体に抱きつくと、メイリンは私の涙を舐めて拭き取ってくれた。
初めて私に心を開いてくれたときも、同じことをしてくれたね。
本当に優しい子。
しばらく抱き合っていると、リョウガさんが穏やかな声でその時間を打ち切った。
「アユミさん、そろそろ始めます」
「……分かりました」
メイリンの身体を離し、少し距離をとる。
いつもの私の雰囲気の違いを察したのか、メイリンが戸惑ってるのが分かった。
深い青い目に、少し緊張が走ってるのが分かる。
私は覚悟を決め、あの言葉を唱えた。
「サライ・ミナ・トゥエナ」
あの時と同じように、メイリンはビシッと身体を震わせ目を見開いて硬直した。
後から聞いたのだが、この言葉は龍に対する使役言葉だった。
この言葉に龍声紋の一定の波長があると、龍は問答無用に動けなくなる。
そして契約の言葉と共に命令を告げることで、祷雨の龍としての契約が成立する。
メイリンが硬直してる間に私はメイリンに近寄り、首の辺りの鱗を一枚剥ぎ取った。
ケイドさんはこの固まってる間は龍は痛みを感じないはずだと言っていたけど、それでも鱗を剥ぎ取ったあとは痛々しい皮膚が現れ、血が滲んでいる。
何でこんなことをしなければいけないんだろう。
自分が選んだこととはいえ、後悔が全くないとは言えず、まだまだ私の心は揺らいでいた。
剥ぎ取ったメイリンの鱗は4~5センチの大きさで半透明で固く、薄い青い色をしていた。
その鱗をギュッと握りしめ、私は目をつぶって絞り出すように言った。
とてもメイリンを見ながら言えなかった。
「メイリン。サライ・ミナ・トゥエナ ユイハサ・ラエラン …ハウエン国へ、行くことを命ずる」
するとメイリンは身体を震わせ、クーンと哭いたあと、翼を大きく広げ一気に空へ舞い上がった。
龍合地へ何度も来ているけど、龍が飛び立つところを見たのは初めてだった。
空へ舞い上がったメイリンはしばらくゆっくり旋回したあと、方角を見定めてそのまますうっと消えていった。
その姿を、私はなんとも言えない気持ちで見つめていた。
─────────────────────
その数日後、私たちもハウエン国に降り立った。
ハウエン国は、飛行機で8時間かかるとても遠い国だった。
飛行機から降り立ったとたん、焼き付けるような熱波、容赦なく突き刺さる日の光、そしてみるみる喉が痛くなるような空気の乾燥が襲ってきた。
これがリアルの干ばつなんだ、と初めて身にしみて実感した。
こんな環境で、ハウエン国の人たちは何年も苦しんでたんだ。
今回同行したのは関係者ほぼ全員、さらに心強いことにユイさんと10人近い女性たちもついてきてくれていた。
この女性たちの中には宿泊舎を掃除してくれている人、食堂で料理を配膳してくれたり、厨房で料理を作ってくれている人、ユイさんの代わりにたまに私の部屋の様子を見に来てくれてる人もいた。
要は、私のシオガでの生活を支えてくれてる人たちだった。
どの人も気さくで、たまに何気ない話などをしてくれてる人たちなので、ついてきてくれるのはありがたかったけど、どうしてこんなに?と言うのは少し疑問でもあった。
そしてここまで飛んできた飛行機は、チャーター機だった。
と言うか詳しくは聞いてないけど、日本で言うと政府専用機かと思うくらい、日本で乗っていた民間機とは雰囲気が違っていた。
その件からも、改めて祷雨は国を上げてのプロジェクトなんだと言うことがひしひしと感じられた。
空港では、サーカップ国王も出迎えてくれた。
本当にありがとうございます、と何度も頭を下げられる。
サーカップ国王の回りの人たちにも深々と頭を下げられ、私はもうここまで来てしまったんだ、と改めて実感した。
そして、黒龍祷雨を実行する、その時が来た。
あの最後の会議から数日あったけど、雨の日があったのもあり龍合地には行けていなかった。
けれど、今日は行かなければいけなかった。
祷雨の龍と巫女として、メイリンと契約を交わさなければならなかったからだ。
あの山道を重い足取りで歩く。
この日は久しぶりにリョウガさんも斎藤さんも同行していた。
龍合地につくと、真っ先にメイリンが寄ってきた。
一週間近く会えてなかったのを寂しがるかのように、顔を擦り付け尻尾を絡めてくる。
メイリン。
かわいいメイリン。
ごめんね。私はあなたを……
そう思うと、涙が止まらなかった。
ギュッとメイリンのちょっと固い身体に抱きつくと、メイリンは私の涙を舐めて拭き取ってくれた。
初めて私に心を開いてくれたときも、同じことをしてくれたね。
本当に優しい子。
しばらく抱き合っていると、リョウガさんが穏やかな声でその時間を打ち切った。
「アユミさん、そろそろ始めます」
「……分かりました」
メイリンの身体を離し、少し距離をとる。
いつもの私の雰囲気の違いを察したのか、メイリンが戸惑ってるのが分かった。
深い青い目に、少し緊張が走ってるのが分かる。
私は覚悟を決め、あの言葉を唱えた。
「サライ・ミナ・トゥエナ」
あの時と同じように、メイリンはビシッと身体を震わせ目を見開いて硬直した。
後から聞いたのだが、この言葉は龍に対する使役言葉だった。
この言葉に龍声紋の一定の波長があると、龍は問答無用に動けなくなる。
そして契約の言葉と共に命令を告げることで、祷雨の龍としての契約が成立する。
メイリンが硬直してる間に私はメイリンに近寄り、首の辺りの鱗を一枚剥ぎ取った。
ケイドさんはこの固まってる間は龍は痛みを感じないはずだと言っていたけど、それでも鱗を剥ぎ取ったあとは痛々しい皮膚が現れ、血が滲んでいる。
何でこんなことをしなければいけないんだろう。
自分が選んだこととはいえ、後悔が全くないとは言えず、まだまだ私の心は揺らいでいた。
剥ぎ取ったメイリンの鱗は4~5センチの大きさで半透明で固く、薄い青い色をしていた。
その鱗をギュッと握りしめ、私は目をつぶって絞り出すように言った。
とてもメイリンを見ながら言えなかった。
「メイリン。サライ・ミナ・トゥエナ ユイハサ・ラエラン …ハウエン国へ、行くことを命ずる」
するとメイリンは身体を震わせ、クーンと哭いたあと、翼を大きく広げ一気に空へ舞い上がった。
龍合地へ何度も来ているけど、龍が飛び立つところを見たのは初めてだった。
空へ舞い上がったメイリンはしばらくゆっくり旋回したあと、方角を見定めてそのまますうっと消えていった。
その姿を、私はなんとも言えない気持ちで見つめていた。
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その数日後、私たちもハウエン国に降り立った。
ハウエン国は、飛行機で8時間かかるとても遠い国だった。
飛行機から降り立ったとたん、焼き付けるような熱波、容赦なく突き刺さる日の光、そしてみるみる喉が痛くなるような空気の乾燥が襲ってきた。
これがリアルの干ばつなんだ、と初めて身にしみて実感した。
こんな環境で、ハウエン国の人たちは何年も苦しんでたんだ。
今回同行したのは関係者ほぼ全員、さらに心強いことにユイさんと10人近い女性たちもついてきてくれていた。
この女性たちの中には宿泊舎を掃除してくれている人、食堂で料理を配膳してくれたり、厨房で料理を作ってくれている人、ユイさんの代わりにたまに私の部屋の様子を見に来てくれてる人もいた。
要は、私のシオガでの生活を支えてくれてる人たちだった。
どの人も気さくで、たまに何気ない話などをしてくれてる人たちなので、ついてきてくれるのはありがたかったけど、どうしてこんなに?と言うのは少し疑問でもあった。
そしてここまで飛んできた飛行機は、チャーター機だった。
と言うか詳しくは聞いてないけど、日本で言うと政府専用機かと思うくらい、日本で乗っていた民間機とは雰囲気が違っていた。
その件からも、改めて祷雨は国を上げてのプロジェクトなんだと言うことがひしひしと感じられた。
空港では、サーカップ国王も出迎えてくれた。
本当にありがとうございます、と何度も頭を下げられる。
サーカップ国王の回りの人たちにも深々と頭を下げられ、私はもうここまで来てしまったんだ、と改めて実感した。
そして、黒龍祷雨を実行する、その時が来た。
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