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第28話 神事のあとの現実
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祷雨が成功し、叩きつけるような雨が降っている。
それに打たれながら女性たちに慰められ、なんとか立ち上がったところで冷静な声が響いた。
「早川さん、お疲れさまです。無事に成功しましたね」
顔を上げると、そこには斎藤さんがいた。
すぐ後ろにはリョウガさん、高坂さんもいる。
高坂さんは眉根を寄せ苦しそうな顔をしていたけど、それとは対照的にリョウガさんと斎藤さんは満足そうだった。
特に斎藤さんは、笑っていた。
斎藤さんのここまでの笑顔を、私は見たことがない。
斎藤さんは人間のために生き物の命を犠牲にするのは仕方がないと言う考えではあったけど、それにしてもこの笑顔は違和感があった。
この人、本当に何を考えてるんだろう。
「早川さん、屋根のあるところに行きましょう。雨に打たれ続けるのは体に負担ですよ」
「……」
気遣ってくれてる言葉ではあったけれど、素直に聞いて動く気にはなれなかった。
でもユイさんや女性たちが、私をその場から離れるように促した。
「アユミさん、斎藤さんの言う通りです。このままでは風邪を引きます。行きましょう」
ユイさんたちに支えられ、なんとか足を動かし歩き始めた。
その様子を見たハウエンの人たちが、次々に感謝の言葉を掛けてきた。
「祷雨の巫女様……! ありがとうございます」
「巫女様のお陰です。このご恩は一生忘れません」
「巫女様、ありがとう!」
無邪気な子供の声も聞こえる。
それを受けても私は表情を変えることができず、その場をゆっくりと離れた。
─────────────────────
祷雨の翌日、早速私たちはシオガ国へ帰ることになった。
降りしきる大雨で飛行機は無事に離陸できるのか疑問だったけど、問題ないようだった。
空港まで見送りに来てくれたサーカップ国王にも深々と頭を下げられ、お礼を言われた。
これだけたくさんの人にお礼を言われる経験なんて、今までなかった。
けれど、その代償は余りにも大きかった。
8時間のフライト後、飛行機はシオガ国の空港に着陸した。
飛行機に横付けされたタラップを降りると、空港でたくさんの人が出迎えた。
その中には、シオガ国のウラジオ国王もいた。
「アユミさん、重責を担う任務、お疲れさまでした」
「ウラジオ様……、恐れ入ります」
ウラジオ国王は満足そうに微笑んだ。
「祷雨の光景、私たちも拝見しました。本当に素晴らしかった」
「え……?」
見てた? シオガ国にいるウラジオ国王が?
と戸惑っていると、リョウガさんが私に耳打ちしてきた。
「あの祷雨の現場には、報道局も来ていたんです。祷雨の状況は、全世界に生中継されてたんですよ」
「……!!」
全世界に生中継??
「空港の外には報道の人間が待ち構えていると思います。今はアユミさんは時の人になってます。でもアユミさんは対応は不要です。裏口から出ましょう」
─────────────────────
リョウガさんたちに促され、裏口に停められた車に私たちは分かれて乗り込んだ。
空港の正面入り口辺りを通り過ぎるとき、日本でもよく見るようなテレビクルーや、ベストショットを待ち構えているカメラマンたちが大勢いるのが見えた。
こっちには気づいてなかったようだけど、あの人たちが私をターゲットにしてると思うと、一気に怖くなった。
今までマスコミと関わることは全くなかったけど、あの人たちが私から何を引き出そうとしているのかを考えると、背筋が寒くなった。
「先ほども言いましたけど、アユミさんは報道関係の対応は全くする必要はありません。対応は我々にお任せください。あの施設は王宮なので、一般人は入れませんので」
今更だけど、いつも過ごしているあの施設は王宮だったんだ。
私たちはもともとあそこから出るなと言う指示があったけど、これを予測してのことだったのかもしれない。
穏やかに晴れ上がったシオガの空の下を車は走り、私たちは王宮へ帰ってきた。
「早川さん、顔色が悪いようなので、すぐに部屋で休まれた方がいいですね。しばらくは休養期間を設けますので、ゆっくりなさってください」
ユイさんに付き添われ部屋へ戻ると、私はそのままベッドに突っ伏した。
もう何も考えたくなかった。
でも……。
斎藤さんは「しばらく」休養期間を設けると言った。
私の契約期間もあと2ヶ月近く残っている。
まだ何かあるんだろうか?
なんだかざわざわする考えを捨てきれないまま、私はとりあえず枕に顔を押し付けた。
それに打たれながら女性たちに慰められ、なんとか立ち上がったところで冷静な声が響いた。
「早川さん、お疲れさまです。無事に成功しましたね」
顔を上げると、そこには斎藤さんがいた。
すぐ後ろにはリョウガさん、高坂さんもいる。
高坂さんは眉根を寄せ苦しそうな顔をしていたけど、それとは対照的にリョウガさんと斎藤さんは満足そうだった。
特に斎藤さんは、笑っていた。
斎藤さんのここまでの笑顔を、私は見たことがない。
斎藤さんは人間のために生き物の命を犠牲にするのは仕方がないと言う考えではあったけど、それにしてもこの笑顔は違和感があった。
この人、本当に何を考えてるんだろう。
「早川さん、屋根のあるところに行きましょう。雨に打たれ続けるのは体に負担ですよ」
「……」
気遣ってくれてる言葉ではあったけれど、素直に聞いて動く気にはなれなかった。
でもユイさんや女性たちが、私をその場から離れるように促した。
「アユミさん、斎藤さんの言う通りです。このままでは風邪を引きます。行きましょう」
ユイさんたちに支えられ、なんとか足を動かし歩き始めた。
その様子を見たハウエンの人たちが、次々に感謝の言葉を掛けてきた。
「祷雨の巫女様……! ありがとうございます」
「巫女様のお陰です。このご恩は一生忘れません」
「巫女様、ありがとう!」
無邪気な子供の声も聞こえる。
それを受けても私は表情を変えることができず、その場をゆっくりと離れた。
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祷雨の翌日、早速私たちはシオガ国へ帰ることになった。
降りしきる大雨で飛行機は無事に離陸できるのか疑問だったけど、問題ないようだった。
空港まで見送りに来てくれたサーカップ国王にも深々と頭を下げられ、お礼を言われた。
これだけたくさんの人にお礼を言われる経験なんて、今までなかった。
けれど、その代償は余りにも大きかった。
8時間のフライト後、飛行機はシオガ国の空港に着陸した。
飛行機に横付けされたタラップを降りると、空港でたくさんの人が出迎えた。
その中には、シオガ国のウラジオ国王もいた。
「アユミさん、重責を担う任務、お疲れさまでした」
「ウラジオ様……、恐れ入ります」
ウラジオ国王は満足そうに微笑んだ。
「祷雨の光景、私たちも拝見しました。本当に素晴らしかった」
「え……?」
見てた? シオガ国にいるウラジオ国王が?
と戸惑っていると、リョウガさんが私に耳打ちしてきた。
「あの祷雨の現場には、報道局も来ていたんです。祷雨の状況は、全世界に生中継されてたんですよ」
「……!!」
全世界に生中継??
「空港の外には報道の人間が待ち構えていると思います。今はアユミさんは時の人になってます。でもアユミさんは対応は不要です。裏口から出ましょう」
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リョウガさんたちに促され、裏口に停められた車に私たちは分かれて乗り込んだ。
空港の正面入り口辺りを通り過ぎるとき、日本でもよく見るようなテレビクルーや、ベストショットを待ち構えているカメラマンたちが大勢いるのが見えた。
こっちには気づいてなかったようだけど、あの人たちが私をターゲットにしてると思うと、一気に怖くなった。
今までマスコミと関わることは全くなかったけど、あの人たちが私から何を引き出そうとしているのかを考えると、背筋が寒くなった。
「先ほども言いましたけど、アユミさんは報道関係の対応は全くする必要はありません。対応は我々にお任せください。あの施設は王宮なので、一般人は入れませんので」
今更だけど、いつも過ごしているあの施設は王宮だったんだ。
私たちはもともとあそこから出るなと言う指示があったけど、これを予測してのことだったのかもしれない。
穏やかに晴れ上がったシオガの空の下を車は走り、私たちは王宮へ帰ってきた。
「早川さん、顔色が悪いようなので、すぐに部屋で休まれた方がいいですね。しばらくは休養期間を設けますので、ゆっくりなさってください」
ユイさんに付き添われ部屋へ戻ると、私はそのままベッドに突っ伏した。
もう何も考えたくなかった。
でも……。
斎藤さんは「しばらく」休養期間を設けると言った。
私の契約期間もあと2ヶ月近く残っている。
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