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第42話 終わりと始まり
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宿泊舎の前には、みんなが見送りに来てくれた。
リョウガさんやケイドさんを含む祷雨計画の関係者、セイランさん、そしてユイさんやリノさんなどお世話になった女性たち、そしてカレイ博士まで。
ユイさんは、最初から号泣していた。
「アユミさん、本当に寂しいです。私は本当にアユミさんのことが大好きでした。本当にありがとうございます」
ぎゅっと抱きついてきて、ずっと泣いている。
私も涙が止まらなかった。
ユイさんのお陰で乗り越えられたこと、支えられたことがいっぱいある。
かけがえのない存在だったユイさん。
本当にありがとう。
ユイさんがあまりにも長い間抱きついているので、リョウガさんが「ユイ、いい加減にしないか」と窘めようとしたところ、ユイさんは
「あなたは黙っていてください」
とピシャリと言い返していた。
「私には私のお別れの仕方があるんです。口を出さないで」
ユイさんに反論され、リョウガさんは一瞬怯んで黙り込んでいた。
どうやらこの夫婦のパワーバランスは、少し変化を見せたらしい。
隣にはセイランさんがいた。
セイランさんも、少しはにかんだ微笑みを見せている。
そのセイランさんを見て、あれ?と思った。
「セイランさん、その髪飾りは?」
今まで短髪で髪にも何もつけていなかったセイランさんだけど、その日はいくつかの石が光る小さな髪飾りをつけていた。
それはケイドさんがつけているものと、何となく雰囲気が似ていた。
もしかしたらこのヘアアクセサリーが、何らかの身分を表しているのかもしれない。
「これはこの間、ウラジオ様から賜ったものです。私に王宮内で正式に研究する身分を与えると」
「そうなんですか?」
「はい。国王が私のような身分の者を引き上げてくださるのは異例のことなのですが、これからは実力のある者はそれ相応の対応を検討すると言われまして」
セイランさんの穏やかな微笑みに、私は心底嬉しくなった。
本当によかった。
最後に、リョウガさんからも挨拶された。
リョウガさんとは最後の会議で祷雨を断ってから会っておらず気まずかったけど、リョウガさんはいつになく穏やかな顔つきをしていた。
「アユミさん、今回は本当にありがとうございます。……いろいろ見苦しいところをお見せして、申し訳ありません」
それが何のことを指しているのか敢えて考えないことにしたけど、心の底から穏やかそうな顔つきになっているリョウガさんを見て、この人も重圧を背負っていたのかもしれないと感じた。
祷雨計画の責任者であり、国の明暗を握る立場であるリョウガさん。
もちろん政治的な問題は山積みだろうけど、この人の中で何かの区切りはついたのかもしれない。
「早川さん、そろそろ……」
斎藤さんに促され、車に乗り込む。
見送る女性たちが泣いているのを見て、私もまた涙が止まらなかった。
本当にいろいろあったけど、貴重な体験もさせてくれたシオガ。
何が正解で何が正義か、深く考えさせられる機会を与えてくれたシオガ。
ここでの日々を、私は一生忘れない。
本当にありがとう。
車が走り出しても、私は窓を開けてみんなの姿が見えなくなるまで精一杯手を振った。
─────────────────────
いつもの龍合地への向かう道から横道へそれ、例のトンネルを潜る。
数分後、私たちを乗せた車は、自衛隊の駐屯地の中を走っていた。
ああ、帰ってきたんだな……。
そうぼんやり考えながら窓の外を見る。
すると斎藤さんが、おもむろに喋り出した。
「お二人とも今回は本当にお疲れさまでした。期間は短縮になりましたけど成果は十分に出されましたので、これで契約は終了になります。報酬については、来月振り込まれることになると思います」
斎藤さんの言葉を聞いて、本当に終わりなんだな……と思った。
「このまま車は五菱本社に戻る予定ですが、ご希望の場所があればそちらで降ろしますよ」
「あ、いえ大丈夫です」
「俺も問題ないです」
何だか終わりがあっけなかったな……と思っていると、斎藤さんがふとこちらを見て言った。
「シオガへの派遣はこれで終了ですが、これからは別の契約の話になります。同意いただけますか?」
え?
「俺もですか?」
真っ先に反応した高坂さんの質問に、斎藤さんは穏やかに答えた。
「もちろんです。高坂さんにはこれからもいていただかないと困ります」
思わず高坂さんと顔を見合わせる。
「あの、……私が日本でできることってないと思いますが。祷雨はシオガでしかできないですし」
「その事についても、また日を改めてお話しします」
あくまでも淡々と斎藤さんは続けるけど、こちらを見る目が少しキラッと光った気がした。
「早川さん、祷雨が日本の国益に繋がると言う話、覚えていらっしゃいますよね。これからはその話になります」
リョウガさんやケイドさんを含む祷雨計画の関係者、セイランさん、そしてユイさんやリノさんなどお世話になった女性たち、そしてカレイ博士まで。
ユイさんは、最初から号泣していた。
「アユミさん、本当に寂しいです。私は本当にアユミさんのことが大好きでした。本当にありがとうございます」
ぎゅっと抱きついてきて、ずっと泣いている。
私も涙が止まらなかった。
ユイさんのお陰で乗り越えられたこと、支えられたことがいっぱいある。
かけがえのない存在だったユイさん。
本当にありがとう。
ユイさんがあまりにも長い間抱きついているので、リョウガさんが「ユイ、いい加減にしないか」と窘めようとしたところ、ユイさんは
「あなたは黙っていてください」
とピシャリと言い返していた。
「私には私のお別れの仕方があるんです。口を出さないで」
ユイさんに反論され、リョウガさんは一瞬怯んで黙り込んでいた。
どうやらこの夫婦のパワーバランスは、少し変化を見せたらしい。
隣にはセイランさんがいた。
セイランさんも、少しはにかんだ微笑みを見せている。
そのセイランさんを見て、あれ?と思った。
「セイランさん、その髪飾りは?」
今まで短髪で髪にも何もつけていなかったセイランさんだけど、その日はいくつかの石が光る小さな髪飾りをつけていた。
それはケイドさんがつけているものと、何となく雰囲気が似ていた。
もしかしたらこのヘアアクセサリーが、何らかの身分を表しているのかもしれない。
「これはこの間、ウラジオ様から賜ったものです。私に王宮内で正式に研究する身分を与えると」
「そうなんですか?」
「はい。国王が私のような身分の者を引き上げてくださるのは異例のことなのですが、これからは実力のある者はそれ相応の対応を検討すると言われまして」
セイランさんの穏やかな微笑みに、私は心底嬉しくなった。
本当によかった。
最後に、リョウガさんからも挨拶された。
リョウガさんとは最後の会議で祷雨を断ってから会っておらず気まずかったけど、リョウガさんはいつになく穏やかな顔つきをしていた。
「アユミさん、今回は本当にありがとうございます。……いろいろ見苦しいところをお見せして、申し訳ありません」
それが何のことを指しているのか敢えて考えないことにしたけど、心の底から穏やかそうな顔つきになっているリョウガさんを見て、この人も重圧を背負っていたのかもしれないと感じた。
祷雨計画の責任者であり、国の明暗を握る立場であるリョウガさん。
もちろん政治的な問題は山積みだろうけど、この人の中で何かの区切りはついたのかもしれない。
「早川さん、そろそろ……」
斎藤さんに促され、車に乗り込む。
見送る女性たちが泣いているのを見て、私もまた涙が止まらなかった。
本当にいろいろあったけど、貴重な体験もさせてくれたシオガ。
何が正解で何が正義か、深く考えさせられる機会を与えてくれたシオガ。
ここでの日々を、私は一生忘れない。
本当にありがとう。
車が走り出しても、私は窓を開けてみんなの姿が見えなくなるまで精一杯手を振った。
─────────────────────
いつもの龍合地への向かう道から横道へそれ、例のトンネルを潜る。
数分後、私たちを乗せた車は、自衛隊の駐屯地の中を走っていた。
ああ、帰ってきたんだな……。
そうぼんやり考えながら窓の外を見る。
すると斎藤さんが、おもむろに喋り出した。
「お二人とも今回は本当にお疲れさまでした。期間は短縮になりましたけど成果は十分に出されましたので、これで契約は終了になります。報酬については、来月振り込まれることになると思います」
斎藤さんの言葉を聞いて、本当に終わりなんだな……と思った。
「このまま車は五菱本社に戻る予定ですが、ご希望の場所があればそちらで降ろしますよ」
「あ、いえ大丈夫です」
「俺も問題ないです」
何だか終わりがあっけなかったな……と思っていると、斎藤さんがふとこちらを見て言った。
「シオガへの派遣はこれで終了ですが、これからは別の契約の話になります。同意いただけますか?」
え?
「俺もですか?」
真っ先に反応した高坂さんの質問に、斎藤さんは穏やかに答えた。
「もちろんです。高坂さんにはこれからもいていただかないと困ります」
思わず高坂さんと顔を見合わせる。
「あの、……私が日本でできることってないと思いますが。祷雨はシオガでしかできないですし」
「その事についても、また日を改めてお話しします」
あくまでも淡々と斎藤さんは続けるけど、こちらを見る目が少しキラッと光った気がした。
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