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第41話 心に残るもの
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二回目の祷雨が中止になったことで、私たちのシオガの滞在期限も早められることになった。
私たちがシオガにいる理由がなくなったからだ。
日本に帰るのが一週間後に決まってから、私はできるだけ龍合地へ通うことにした。
最初はなかなか心を開いてくれず振り回された龍たちだけど、落ち込んだときも辛いときも龍たちは私の心の拠り所だった。
もう会える日が残り少ないと龍たちも感じたのか、普段はシャイでベタベタしないライタンはベッタリくっついてくるし、一人で寝てるのが好きなサンライも気づけば隣で寝ていたりする。
そうやって、龍たちと残り少ない日々を過ごした。
そんなある日、私はリノさんに話しかけられた。
リノさんは宿泊舎の掃除担当の女性で、いつも細々しく働いていてあまりじっくり話す機会がなかったけど、その日は時間を見つけて話しかけてきてくれた。
リノさんは前にユイさんが話していた、歴史や文献を調べるのが好きだけど、女性がするものじゃないと窘められ、それをずっと表に出せなかった人だ。
「アユミさん、もう日本に帰ってしまわれるんですよね。一度お礼を申し上げたかったんです」
「お礼?」
リノさんは、満面の笑顔で話を続けた。
「はい、私もハウエンの祷雨に同行させていただいて、アユミさんの言葉を聞いて、自分の心の声をもっと出していいんだって気づいたんです」
「……」
「私が学びたい気持ちって、誰にも邪魔されるものじゃないんだって思って。なので今度、カレイ博士の勉強会に参加することにしたんです」
「カレイ博士の?」
「はい! カレイ博士の勉強会の参加資格は年齢も性別も関係ないって書かれていて、ずっと気になっていたんですけど、私が参加していいのかって躊躇っていたんです。でも勇気を出して、参加することにしました」
「そうなんですか?よかった……」
「アユミさんが祷雨を行ってくださったお陰です。ありがとうございます!」
心底、嬉しそうに話すリノさん。
実際、祷雨は誰かの救いにもなりうるし、誰かを傷つけるものにもなりうる。
私は正直今でも祷雨を行ったことが正しかったのか分からないけど、少なくともユイさんやリノさんみたいに祷雨をきっかけに前に進み始めた人もいる。
そう考えると少し心の中が暖かくなるのを感じた。
ちなみにハウエンの雨は、カレイ博士が一旦は小康状態になったとは言っていたけど、その後も断続的に降り続いた。
ハウエンは元々湿潤な国だったこともあり、治水技術が進んでいたから大きな洪水になることはなかったけど、それでもかなりギリギリだったらしい。
今はもう雨も止み、湖や井戸も水が戻ったらしく、これからハウエンは復興に向かうだろうとのことだった。
─────────────────────
シオガを去る前日、私たちはケイドさんの付き添いのもと、ウラジオ国王に最後の挨拶をした。
このときはいつもの会議室ではなく、王宮内でもさらに奥にある御所と呼ばれる場所につれていかれた。
その応接室のような場所で、ウラジオ国王からは改めて祷雨について感謝を言われた。
そしてこれを機に、シオガは転換点を向かえることになるかもしれないとも言っていた。
これから少しずつ、シオガも変わっていくのかもしれない。
最後の日の朝、私はアズミルから日本から持ってきた服に着替えた。
久しぶりに袖を通したそれは、布の触り心地やフィット感が変な感じで、ああ私はすっかりシオガに染まってたんだなと感じた。
建物の外に出ると、見覚えのあるミニバンが停まっていた。
私たちがシオガに来た時に乗ってきた車だ。
明らかに日本車であるそれは、やはりシオガの車とは雰囲気が違っていた。
しっかり日本のナンバープレートもついている。
それを見て私は改めて、日本に帰るんだな…と実感した。
私たちがシオガにいる理由がなくなったからだ。
日本に帰るのが一週間後に決まってから、私はできるだけ龍合地へ通うことにした。
最初はなかなか心を開いてくれず振り回された龍たちだけど、落ち込んだときも辛いときも龍たちは私の心の拠り所だった。
もう会える日が残り少ないと龍たちも感じたのか、普段はシャイでベタベタしないライタンはベッタリくっついてくるし、一人で寝てるのが好きなサンライも気づけば隣で寝ていたりする。
そうやって、龍たちと残り少ない日々を過ごした。
そんなある日、私はリノさんに話しかけられた。
リノさんは宿泊舎の掃除担当の女性で、いつも細々しく働いていてあまりじっくり話す機会がなかったけど、その日は時間を見つけて話しかけてきてくれた。
リノさんは前にユイさんが話していた、歴史や文献を調べるのが好きだけど、女性がするものじゃないと窘められ、それをずっと表に出せなかった人だ。
「アユミさん、もう日本に帰ってしまわれるんですよね。一度お礼を申し上げたかったんです」
「お礼?」
リノさんは、満面の笑顔で話を続けた。
「はい、私もハウエンの祷雨に同行させていただいて、アユミさんの言葉を聞いて、自分の心の声をもっと出していいんだって気づいたんです」
「……」
「私が学びたい気持ちって、誰にも邪魔されるものじゃないんだって思って。なので今度、カレイ博士の勉強会に参加することにしたんです」
「カレイ博士の?」
「はい! カレイ博士の勉強会の参加資格は年齢も性別も関係ないって書かれていて、ずっと気になっていたんですけど、私が参加していいのかって躊躇っていたんです。でも勇気を出して、参加することにしました」
「そうなんですか?よかった……」
「アユミさんが祷雨を行ってくださったお陰です。ありがとうございます!」
心底、嬉しそうに話すリノさん。
実際、祷雨は誰かの救いにもなりうるし、誰かを傷つけるものにもなりうる。
私は正直今でも祷雨を行ったことが正しかったのか分からないけど、少なくともユイさんやリノさんみたいに祷雨をきっかけに前に進み始めた人もいる。
そう考えると少し心の中が暖かくなるのを感じた。
ちなみにハウエンの雨は、カレイ博士が一旦は小康状態になったとは言っていたけど、その後も断続的に降り続いた。
ハウエンは元々湿潤な国だったこともあり、治水技術が進んでいたから大きな洪水になることはなかったけど、それでもかなりギリギリだったらしい。
今はもう雨も止み、湖や井戸も水が戻ったらしく、これからハウエンは復興に向かうだろうとのことだった。
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シオガを去る前日、私たちはケイドさんの付き添いのもと、ウラジオ国王に最後の挨拶をした。
このときはいつもの会議室ではなく、王宮内でもさらに奥にある御所と呼ばれる場所につれていかれた。
その応接室のような場所で、ウラジオ国王からは改めて祷雨について感謝を言われた。
そしてこれを機に、シオガは転換点を向かえることになるかもしれないとも言っていた。
これから少しずつ、シオガも変わっていくのかもしれない。
最後の日の朝、私はアズミルから日本から持ってきた服に着替えた。
久しぶりに袖を通したそれは、布の触り心地やフィット感が変な感じで、ああ私はすっかりシオガに染まってたんだなと感じた。
建物の外に出ると、見覚えのあるミニバンが停まっていた。
私たちがシオガに来た時に乗ってきた車だ。
明らかに日本車であるそれは、やはりシオガの車とは雰囲気が違っていた。
しっかり日本のナンバープレートもついている。
それを見て私は改めて、日本に帰るんだな…と実感した。
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