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1:バースでの新生活
22:エドガー@貴族学院
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コンコン
ブライアンがノックする。
少し時間がかかったと思ったが、
「どうぞ」
と返事がある。
ドアを開けると、学院長、応接用のソファーに座っていた。あれ?誰か来室中だったのかと思ったが、学院長以外に人はいない。
「失礼します。先日の八年生のテストの成績のレポートを持ってまいりました。」
右に片眼鏡をして、あご髭のあるやや灰色の髪をした学長が、
「ああ、ご苦労様です。ベクトル先生、どうぞおかけください。」
「ありがとうございます。」
いつも、立ったままのことが多いのに何か話があるのか?不思議に思いながらソファーに座る。
「今年の八年生の成績はまずまずです。来年の卒業後が楽しみです。」
八年生の話をする。
「それは良かった。」
学院長も嬉しそうだ。まあ、卒業後の活躍が、学院の評価につながるので当然とも言える。しかも、今年は、あの麻薬問題で数人の学生が検挙され、学院始まって以来の醜聞だったのだ。
「そう言えば、編入したギルバート ゼオンはどうですか?かなり優秀なようだが。」
「はい、そのことでお願いがあります。できれば、彼の早期の進級を」
と話し始めると最後まで話切らないうちに、
「許可しましょう。」
学院長が返事をする。
「え?よろしいのでしょうか?」
そもそも、2年下から始めさせろと言ったのは学院長なのに。麻薬問題で、ギルバートが悪いわけでもなんでもないが、あのヘンドリックと血が繋がっているというだけで恨みに思ったのか、本来であれば1年下で十分だったのを2年下から始めさせたのは学院長だ。
「ええ、入学してからの彼をみて、非常に優秀だと、わかりましたのでね。下の学年ではつまらないでしょう。」
「はあ」
どういう風の吹き回しだ?まあ、本来の彼のことを考えれば喜ばしいことではある。
「ああ、それともう少し頑張れば次の試験で本来の学年にいくのも考えると伝えて下さい。」
「え?流石にそれはかなり大変では?」
学力テストでも頑張ってはいたが、流石にこの6年間のことを考えると難しいと思う。勉強だけではないのだ。乗馬や剣術、貴族としてのマナー、外国語、多岐にわたるのだ。
「きっと彼なら頑張るのではないですかね?無論成績が良くなければ早めの進級はできません。良ければ何人かの先生に時間外の授業を頼んでも良いかもしれません。侯爵家にも金銭的に支援は惜しまないとも言われましたからね。」
特別授業ということか。まあ、いかにもあの侯爵ならやりそうではあるとブライアンは思う。
「ところでベクトル先生、あなたもこの学院にきて随分長くなりました。非常に優秀なあなたを教育だけの分野にいていただいて良いのか悩むのですよ。大学にもどるのはどうでしょうか?大学の方にも聞いてみようと思っているのですよ」
え?大学?大学を卒業した後、残って研究したかったが、残念ながら大学にその席はなく、仕方なくここに就職したのは、もう15年以上前だぞ。
「ご配慮ありがとうございます。今更大学に戻ってもと思いますが、考えさせていただけたらとは思います。」
ベクトルが退室すると、
「これで良かったですかな?」
学院長が質問する。
少しドアがあいた状態だった隣の部屋から出てきたのは、エドガークラウンだった。
「ええ、ありがとうございました。駆け落ち同然で縁を切ったとはいえ、ギルバートは我が甥にあたります。そんな彼が平民として勉学もできない状態に長くいたことを知り心を痛めたのですよ。今なお、本来の学年より下の学年で学ばないといけないのは残念な状況です。
ご配慮いただきありがとうございます。ここから貴校でしっかり学ばせていただければ本人にとって有益と思います。それに、ベクトル先生のこともね。可哀想に、本来であれば大学に残れるだけの才能だったものを。ちょうど時期が悪かった。できれば、彼にもチャンスを与えてやりたいのですよ」
エドガーが微笑む。
「あの・・・先程お話のあった件は」
学院長がおずおずとたずねる。
「今度の教育者国際学会の件ですね。ご安心ください。私の方から委員に推薦をさせていただきます。」
学院長はホッとした表情をあげる。
「ところで甥御さんには会って行かれないのですか?」
ニコニコとした笑顔で質問してくる。
エドガーは残念そうに
「彼は今やゼオン侯爵家の子息になったのです。今更、私どものような親戚がのこのこ出ても警戒されるかもしれません。今回は遠目で見るだけにしたいと思います。」
返事をする。
学院長は、高名なクラウン家が遠慮することはないだろうにとも思うが、王太子の側近であった、貴族らしく華やかだが強かでもあったゼオン侯爵の学生時代を思い出して納得する。それにしても、他国の研究者まで気にされるとは本当に研究者としても教育者としても素晴らしいと評判なだけはあると感心するのであった。
帰りの馬車の中・・・・・
すでに、図書館でこっそりギルバートが勉強を一生懸命にしている姿は見ている。十分だと思ったエドガーである。
「噂通り、父親に良く似ている、すぐに顔を合わす気分にはなれないな」
心の中で呟いたのだった。
ブライアンがノックする。
少し時間がかかったと思ったが、
「どうぞ」
と返事がある。
ドアを開けると、学院長、応接用のソファーに座っていた。あれ?誰か来室中だったのかと思ったが、学院長以外に人はいない。
「失礼します。先日の八年生のテストの成績のレポートを持ってまいりました。」
右に片眼鏡をして、あご髭のあるやや灰色の髪をした学長が、
「ああ、ご苦労様です。ベクトル先生、どうぞおかけください。」
「ありがとうございます。」
いつも、立ったままのことが多いのに何か話があるのか?不思議に思いながらソファーに座る。
「今年の八年生の成績はまずまずです。来年の卒業後が楽しみです。」
八年生の話をする。
「それは良かった。」
学院長も嬉しそうだ。まあ、卒業後の活躍が、学院の評価につながるので当然とも言える。しかも、今年は、あの麻薬問題で数人の学生が検挙され、学院始まって以来の醜聞だったのだ。
「そう言えば、編入したギルバート ゼオンはどうですか?かなり優秀なようだが。」
「はい、そのことでお願いがあります。できれば、彼の早期の進級を」
と話し始めると最後まで話切らないうちに、
「許可しましょう。」
学院長が返事をする。
「え?よろしいのでしょうか?」
そもそも、2年下から始めさせろと言ったのは学院長なのに。麻薬問題で、ギルバートが悪いわけでもなんでもないが、あのヘンドリックと血が繋がっているというだけで恨みに思ったのか、本来であれば1年下で十分だったのを2年下から始めさせたのは学院長だ。
「ええ、入学してからの彼をみて、非常に優秀だと、わかりましたのでね。下の学年ではつまらないでしょう。」
「はあ」
どういう風の吹き回しだ?まあ、本来の彼のことを考えれば喜ばしいことではある。
「ああ、それともう少し頑張れば次の試験で本来の学年にいくのも考えると伝えて下さい。」
「え?流石にそれはかなり大変では?」
学力テストでも頑張ってはいたが、流石にこの6年間のことを考えると難しいと思う。勉強だけではないのだ。乗馬や剣術、貴族としてのマナー、外国語、多岐にわたるのだ。
「きっと彼なら頑張るのではないですかね?無論成績が良くなければ早めの進級はできません。良ければ何人かの先生に時間外の授業を頼んでも良いかもしれません。侯爵家にも金銭的に支援は惜しまないとも言われましたからね。」
特別授業ということか。まあ、いかにもあの侯爵ならやりそうではあるとブライアンは思う。
「ところでベクトル先生、あなたもこの学院にきて随分長くなりました。非常に優秀なあなたを教育だけの分野にいていただいて良いのか悩むのですよ。大学にもどるのはどうでしょうか?大学の方にも聞いてみようと思っているのですよ」
え?大学?大学を卒業した後、残って研究したかったが、残念ながら大学にその席はなく、仕方なくここに就職したのは、もう15年以上前だぞ。
「ご配慮ありがとうございます。今更大学に戻ってもと思いますが、考えさせていただけたらとは思います。」
ベクトルが退室すると、
「これで良かったですかな?」
学院長が質問する。
少しドアがあいた状態だった隣の部屋から出てきたのは、エドガークラウンだった。
「ええ、ありがとうございました。駆け落ち同然で縁を切ったとはいえ、ギルバートは我が甥にあたります。そんな彼が平民として勉学もできない状態に長くいたことを知り心を痛めたのですよ。今なお、本来の学年より下の学年で学ばないといけないのは残念な状況です。
ご配慮いただきありがとうございます。ここから貴校でしっかり学ばせていただければ本人にとって有益と思います。それに、ベクトル先生のこともね。可哀想に、本来であれば大学に残れるだけの才能だったものを。ちょうど時期が悪かった。できれば、彼にもチャンスを与えてやりたいのですよ」
エドガーが微笑む。
「あの・・・先程お話のあった件は」
学院長がおずおずとたずねる。
「今度の教育者国際学会の件ですね。ご安心ください。私の方から委員に推薦をさせていただきます。」
学院長はホッとした表情をあげる。
「ところで甥御さんには会って行かれないのですか?」
ニコニコとした笑顔で質問してくる。
エドガーは残念そうに
「彼は今やゼオン侯爵家の子息になったのです。今更、私どものような親戚がのこのこ出ても警戒されるかもしれません。今回は遠目で見るだけにしたいと思います。」
返事をする。
学院長は、高名なクラウン家が遠慮することはないだろうにとも思うが、王太子の側近であった、貴族らしく華やかだが強かでもあったゼオン侯爵の学生時代を思い出して納得する。それにしても、他国の研究者まで気にされるとは本当に研究者としても教育者としても素晴らしいと評判なだけはあると感心するのであった。
帰りの馬車の中・・・・・
すでに、図書館でこっそりギルバートが勉強を一生懸命にしている姿は見ている。十分だと思ったエドガーである。
「噂通り、父親に良く似ている、すぐに顔を合わす気分にはなれないな」
心の中で呟いたのだった。
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