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1:バースでの新生活
21:ギルバートの疑問
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週末、ギルバートがゼオン侯爵のタウンハウスに帰ってきた。
「え?母上に実は兄上がいらっしゃったんですか?」
「ええ。私もフリード伯父様から聞いてびっくりしたんだけどね。そして、その方が伯父様だと名乗らずに私に会いにこられたみたい。」
「伯父だと名乗らずにこられるなんて何か事情があるのでしょうか?」
普通は名乗るものだろう、不安になる。
シャーロットは頷き、
「驚いたのだけど、お母様とお父様は駈け落ち同然で結婚なさったらしくて絶縁状態だったのですって。」
「え?母上と父上がですか?」
ギルバートも目を丸くする。確かに両親はとても仲がよかったが、駆け落ち?とてもパン屋のエマのことを言えないなと思う。
「どうも、双方の両親から反対されたらしいと。今度、執事だったウイリアムにも聞いてみようかな。なので、フリード伯父様は絶縁した手前おおっぴらに会いにくいのかもしれないと言われていたの。伯父様は会いにこられてもお祖父様はそうではないのかもしれないし。」
「なるほど。確かに絶縁までしてしまうと会いにくいのかもしれませんね。」
「でも、またお会いしますと話してくださったから、そのうち、また会いにきてくださるかもしれないし。今度はギルバートに会いにきてくださるかも。」
「うーん、私は基本寄宿舎にいますから、それよりは週末こちらに戻ってきたときに会いにきてくだされば嬉しいですけど。」
「そうね。そのうち、お手紙が届くかもしれないわ。ふふ、楽しみ。もしかしたら、私たちのお祖父様やお祖母様にお会いできるかもしれないし、それに従兄弟もいるのかも。ヘンドリックたちしか私たちの血縁はいないのかもと悲しかったからもし良い方達だったら嬉しいわね。」
「どんな家なのですか?貴族なんですよね」
「爵位はないのだけど、学者の家系なのですって。クラウンさんというそうよ。アダム、知っていたりするかしら?」
給仕をしてくれていたアダムに聞いてみる。
「申し訳ありません。あまり耳にしないように思います。」
「フリードおじ様たちがそうおっしゃったのであれば間違いないのでしょう。あとで、父上にも手紙を書いておきましょう。私たちはいまはゼオン侯爵家の人間です。知らない方が親戚だと言ってこられて、もし、ゲルトランのような人がいたりしたら迷惑になりかねません」
「まあ、ギルバートったら、随分疑い深くなっちゃって・・」
「姉上、あんな奴らを親戚に持ったのですから当然です。」
少しギルバートがイラッとしたのがわかる。姉は良い人すぎる、自分がしっかりしなくてはと思うギルバートである。
「はい、そうね、そうよね。ところで、今日騎士団に行ったのだけどどうやら海賊退治に第五騎士団が出兵するそうよ。」
「え?第五騎士団ですか。アダム、ゼオンは大丈夫だろうか?」
「第五騎士団は隣の領主であるベジエ様のところに多数駐留しております。我が領地には少数です。以前から、海賊が出ると彼らが出動しているので慣れているとは言えますね。ただ、海賊は小さめのしかしスピードのはやい船でやってきてはすぐに一斉にてんでバラバラに散っていくのでなかなか捕まえてもほんのわずかしか捕まえられないと聞いたことがあります。」
「ペリエのことが心配だわ。みんな、元気にしているかしら。」
「姉上、この間もエマから連絡があったではないですか。みんな元気にしていると。父上であるゼオン侯爵が領土に戻られたのです。きっと、万全の体制で海賊に備えているのだと思いますよ。」
「その通りです。この間は、ちょうど殿下のこられた時ではありましたが、その後兵を増やしたと聞いています。」
「そうね。あまり悩んでも仕方ないのかもしれないけれど・・・とりあえず、アーサーに船に積んだら良いと思う薬や荷物を考えて欲しいって言われたの。ちょっと色々と考えようと思うの。ペリエの人たちにも必要なものを準備してあげたいし。」
「そうですよ。姉上は、姉上が得意とすることでみんなを支えてくださっているのですから、十分ですよ。」
「お嬢様、何かお入用なものがあればおっしゃってください。ノアからなんでもシャーロット様も発想を大切にするように言われておりますからね。」
「ありがとう。アダム。頑張るわね。」
「私の方は、情けないのですが、まずは学校の勉強を頑張るしかなさそうです。」
「何を言っているの。充分、立派です。無理の無いように一つずつ段階を上げていけば良いのだから。」
「そうですとも、素晴らしい成績だという話を聞いております。すぐに一つ上の学年にも上がっていかれると期待されておりますから。」
「アダムや姉上に言われるとそういう気がしてきました。頑張ります。」
ギルバートは微笑んだのだった。
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