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2:ロバートとアデリーナ
プロポーズ
しおりを挟む「え?アデリーナ様がそうおっしゃたのか?」
「ええ、アデリーナ様はジェイド様との婚約話なんて一切ない。そんな噂が流れてしまうと非常に困るのでやめて欲しい。何かの誤解だと話されていましたわ」
キャロラインが得意そうに話すのを聞く。
ロバートは驚く。つまり、ジェイドが嘘をついたことになる。ジェイドのやつ、そうか、彼女のことを好きだから、嘘をついて自分をけん制してきたのか。見損なったぞ。そんな嘘をつくやつとは思わなかった。親友だと思っていたのにな。
「お兄様、聞いてらっしゃるの?」
「ああ、聞いているよ。そうか、きっと私の聞き間違いだったのだろう。ありがとう。教えてくれて。」
キャロラインが得意そうに
「ふふん、お兄様でも間違えるってことがあるってことですわ。でも、私も安心しましたの。ジェイド様が婚約されたりしたら、私を含め悲しむ女学生がどれほどいることか」
「わかった、わかった。ところで、キャロライン、この間アデリーナ様といらっしゃった令嬢はどなただったか」
「アイリーン様ですわ。アイリーン ローレンス様」
ロバートは、その後自室で考える。
嬉しい、本当に嬉しい、婚約されていないと聞いてこんなに心が軽やかになるとは思わなかった。これで正々堂々、彼女に自分の気持ちが伝えられる。無論、受け入れられるかはわからない。だが、自分の気持ちを伝えられないままこの恋を終わらすのは辛いと思っていた。
「アイリーンお嬢様、お手紙です」
「あら、どなたから?」
「ロバート ケント様からと伺っております。」
アイリーンは慌てて手紙を開ける。
「まあっ」
数日後、公園に乗馬できたアイリーンとアデリーナである。二人は淑女らしい乗馬服でゆっくりと乗馬を楽しむ。そこに、ロバートが声をかける。
「アデリーナ様、アイリーン様、ごきげんよう」
しばらく3人で乗馬を楽しむ。そのあと、アイリーンが、少し体調が悪いからと席を外してくれる。アイリーンは、ロバートから、アデリーナ様との橋渡しをお願いしたいと依頼を受けたのだった。アデリーナからもロバートのことを好ましく思っていることを聞いていたので、これは恋のキューピット役ってことよねといそいそと二人を会わす手配をしたのだった。
「アデリーナ様、ずっとご連絡せず申し訳ありませんでした。」
「いいえ、妹さんのお話から、きっと私が婚約していると誤解されているのではと思っておりました。」
「その通りです。ジェイドが私にそう言ったのです。あなたはまだ誰とも婚約されていないと思ってもよろしいでしょうか?」
「はい、ジェイド様がどうしてそんなことをおっしゃったのか全くわかりませんが、私は誰とも婚約しておりません。そもそも、私の父はとても厳しいのでこの留学中に誰かと婚約するなんてことはありえないですから」
「それを聞いて私の心は喜びでいっぱいです。本当によかった。今日は、乗馬にご一緒できてとても嬉しいです。」
ロバートが微笑む。
アデリーナも微笑み恥ずかしそうに話す。
「はい、私も今日をとても楽しみにしてましたの。昨日は嬉しくて眠れなかったですわ。あ、あの、乗馬は久しぶりですので。」
本当はロバートに会えるのが嬉しくてピクニックに行く前日のように眠れなかったのだが恥ずかしくてそれは言えない。
ロバートが、
「乗馬を楽しみに?それは残念です。」
少し目を伏せて言う。
「え?」
「アデリーナ様、私も昨日は眠れなかったのです。あなたのことを考えて。」
ロバートがこちらを見つめる。
「ロバート様・・」
真っ赤になり狼狽える。
「アデリーナ嬢、私は、この間あなたにお会いしたときに恋に落ちたのです。自分が、こんな気持ちになるなんてと驚いています。ですが、その日からあなたのことを思わない日はありません。あなたのことをお慕いしております。このようなところでは人目もある。あなたに触れることもできないし、正式なプロポーズができないのが悲しいが、いつかあなたにプロポーズをさせていただけませんか?」
ロバートの真剣な眼差しと言葉を受けたアデリーナはかあっと真っ赤になる。
「ロバート様、嬉しいです。私は嘘をつきました。昨日、眠れなかったのは、私もあなたと明日会えると思って・・私もあなたのことをお慕い申し上げています。いつかプロポーズしてくださる日をお待ちしております。ただ、私はスコール国の出身です。両親はきっと反対すると思います。大丈夫でしょうか?」
「私はしがない子爵の嫡男です。それでも、あなたが卒業するまでに2年あります。それまでに、私は、あなたを我が領にお迎えできるように準備してまいります。そして2年後にご両親にも許しを乞いたい。反対されるのかもしれません、何度でもお願いします。ですが、何より親御さんに反対されても私と結婚していただけますか?」
アデリーナは思う。そう、おそらく両親は猛反対するだろう。そして、ロバートのプロポーズを聞けば即座に自分をスコールに連れ戻して否応無く遠縁の男と結婚させるだろう。そんなの嫌だわ。
アデリーナはロバートを見る。
「はい、ロバート様、私はあなたのことをお慕いしています。他の方と結婚するなんて考えられません。」
「ありがとう、アデリーナ。よろしければ手を」
お互い馬上ではあるが、ロバートは、アデリーナの手をとり、その手の甲に口付けをしたのだった。
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