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2:ロバートとアデリーナ
諦められない想い
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こうして二人の秘密の恋が始まった。
ロバートは、卒業後、暫くは官僚になることを考えていたが、領地に戻って領地の経営を立て直すことにしたと皆に伝えた。
そして、ジェイドとは少しずつ距離を置き親友だった二人の間がどことなくおかしくなっているのに周囲も気がつき始めた。フリードからも諌められるが、変えようとしない。ジェイドはジェイドで、きっと自分がアデリーナと婚約したと信じているロバートが複雑な気分でいるのだろうと考えていた。ジェイド自身は何度もアデリーナをお茶会や乗馬に誘ったが断られ、それを知った父に諌められ、全く接点がないままだった。
そうして、学院を卒業する。フリードは騎士団に入団、ジェイドは王宮で外交部門で侍従見習いとして働くこととなった。ブライアンは大学へ進学することとなった。
卒業後、ロバートは領地に戻りハーブ栽培をもっと広げて質を高めるように専念する。そして時折王都にきてこっそりアデリーナと会う。
「アデリーナ様、できれば、きちんとあなたのお屋敷に迎えに行ってお会いしたい。このようにアイリーン嬢に手紙を渡すのではなくあなた宛に直接手紙やプレゼントを渡したいのです。」
ロバートは、隠れるようにアデリーナと付き合うのは正しくないことと思っている。
しかし、
「いいえ、ロバート様。残念ですが、もしロバート様のことに家のものが気づいてしまえば、即刻私はスコールに帰国させられてしまいます。父も祖父も、スコールで自分の弟子や遠縁の子弟と結婚するのが一番とずっと考えているのですから」
頑なに否定され、しかもスコールへ帰国させられてしまうと聞くとそれ以上押し進めることもできない。
ロバートは、忸怩たる思いを持ちながらアデリーナの希望に沿うようにする。
目立たないネックレスやリボンといったアデリーナが友人と購入しても不思議に思われないようなものを贈る。アデリーナが喜んでくれいつも身につけてくれていると思うと、とても幸せな気持ちになる。一方、アデリーナは、ロバートに身につけてもらえるハンカチや剣帯などに刺繍をしてプレゼントする。
そんな風に2年を過ごしたのだった。
******************************
アデリーナの女学院卒業まであと半年ほどになった。アデリーナは、相変わらず女子学院で学びながら、時折、バースにやってくるロバートとこっそりアイリーンの手助けで会っている。社交界には参加しないようにしていた。どこでジェイドに会うかわからないからである。
「アデリーナ」
「お兄様!」
「久しぶりだ。すっかり淑女だね。」
アデリーナを抱きしめて微笑む。
「ありがとうございます。お久しぶりです。2週間ほどこちらに滞在すると伺いましたわ」
「ああ、今度こちらの大学で自分の研究について教えて欲しいと言われたのでね。それに、母上からも、お前が貴婦人として成長しているか見てきて欲しい、それからたまにはオペラやコンサートにでも連れて行ってあげて欲しいと頼まれてね。」
ああ、オペラ、素敵だわ・・・お友達がよく話してくれているものね。でも、お兄様と行ってもあまり嬉しくはないけど。できれば、ロバート様と行きたい。
「何だ、浮かない顔だね。てっきり行きたいのかと思っていたが」
怪訝な顔をするエドガーに慌てて返事する。
「いえ、行きたいですわ。ただ、緊張しそうだなと思っただけです。」
「まあ、そういった社交の場にも慣れておかなければ将来困るだろう。演目は女性が好むものを選んでおいた。楽しみにしなさい」
二日後、エドガーとオペラにいく。オペラは楽しむだけでなく、重要な社交の場でもある。幕間には、ワインやシャンパンで喉を潤す。そして、兄は、知人が何人もいるらしく丁寧に挨拶を受けている。同時に自分を紹介してくれ挨拶を交わす。
ロバート様はいらっしゃらないわねとホッとする。兄にロバートと一緒にいるところを見られたりしたら即刻スコールに連れて帰られそうだと思う。
「アデリーナ嬢」
ぎくりと振り返るとジェイドが急ぎ足でこちらに向かってくる。
「ジェイド様、ご無沙汰しておりま」
「ああ、本当に久しぶりだ。前に会ってから1年以上経っている。どうして会ってくれないのだ。何度も手紙を出しているのに」
「ジェイド殿、それがレディーに対する態度かね。王宮で侍従見習いとして仕事を始められたと聞いていたが、私にも挨拶がないとは嘆かわしい」
兄が眉間に皺を寄せている。
はっと、エドガーに気が付き、
「エドガー殿、失礼しました。ご無沙汰しております。11年ぶりでしょうか。せっかくローヌにアデリーナさまが来られたというのに全くお会いすることが叶わずつい・・」
「アデリーナは、ローヌに遊びにきたわけではない。勉強にきているのだ。若い男性と遊び歩くようなことをするわけがない。そもそも、留学してきたきっかけについては、お父上にお話させていただいているはずだが」
「おっしゃる通りです。ですが、エドガー殿、私は、子供の頃からアデリーナ嬢を」
「こんなところで聞く内容ではないですな。周囲の方々の反応をご覧ください。公爵子息であるあなたが、淑女である妹への配慮に欠けるというもの。失礼する。アデリーナ、帰ろう」
「は、はい。では、失礼いたしますわ。」
申し訳なさそうにカーテシーをしてアデリーナはオペラを中座したのだった。
帰途、馬車の中で
「まったく、話には聞いていたが酷いものだ。デンツ公爵には、注意していただく必要が再度あるようだ。アデリーナ、お前も注意しなさい。」
その後、ジェイドは公爵からかなり叱責されたらしく、手紙を送ってくる事はなくなりホッとしたのだった。
ロバートは、卒業後、暫くは官僚になることを考えていたが、領地に戻って領地の経営を立て直すことにしたと皆に伝えた。
そして、ジェイドとは少しずつ距離を置き親友だった二人の間がどことなくおかしくなっているのに周囲も気がつき始めた。フリードからも諌められるが、変えようとしない。ジェイドはジェイドで、きっと自分がアデリーナと婚約したと信じているロバートが複雑な気分でいるのだろうと考えていた。ジェイド自身は何度もアデリーナをお茶会や乗馬に誘ったが断られ、それを知った父に諌められ、全く接点がないままだった。
そうして、学院を卒業する。フリードは騎士団に入団、ジェイドは王宮で外交部門で侍従見習いとして働くこととなった。ブライアンは大学へ進学することとなった。
卒業後、ロバートは領地に戻りハーブ栽培をもっと広げて質を高めるように専念する。そして時折王都にきてこっそりアデリーナと会う。
「アデリーナ様、できれば、きちんとあなたのお屋敷に迎えに行ってお会いしたい。このようにアイリーン嬢に手紙を渡すのではなくあなた宛に直接手紙やプレゼントを渡したいのです。」
ロバートは、隠れるようにアデリーナと付き合うのは正しくないことと思っている。
しかし、
「いいえ、ロバート様。残念ですが、もしロバート様のことに家のものが気づいてしまえば、即刻私はスコールに帰国させられてしまいます。父も祖父も、スコールで自分の弟子や遠縁の子弟と結婚するのが一番とずっと考えているのですから」
頑なに否定され、しかもスコールへ帰国させられてしまうと聞くとそれ以上押し進めることもできない。
ロバートは、忸怩たる思いを持ちながらアデリーナの希望に沿うようにする。
目立たないネックレスやリボンといったアデリーナが友人と購入しても不思議に思われないようなものを贈る。アデリーナが喜んでくれいつも身につけてくれていると思うと、とても幸せな気持ちになる。一方、アデリーナは、ロバートに身につけてもらえるハンカチや剣帯などに刺繍をしてプレゼントする。
そんな風に2年を過ごしたのだった。
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アデリーナの女学院卒業まであと半年ほどになった。アデリーナは、相変わらず女子学院で学びながら、時折、バースにやってくるロバートとこっそりアイリーンの手助けで会っている。社交界には参加しないようにしていた。どこでジェイドに会うかわからないからである。
「アデリーナ」
「お兄様!」
「久しぶりだ。すっかり淑女だね。」
アデリーナを抱きしめて微笑む。
「ありがとうございます。お久しぶりです。2週間ほどこちらに滞在すると伺いましたわ」
「ああ、今度こちらの大学で自分の研究について教えて欲しいと言われたのでね。それに、母上からも、お前が貴婦人として成長しているか見てきて欲しい、それからたまにはオペラやコンサートにでも連れて行ってあげて欲しいと頼まれてね。」
ああ、オペラ、素敵だわ・・・お友達がよく話してくれているものね。でも、お兄様と行ってもあまり嬉しくはないけど。できれば、ロバート様と行きたい。
「何だ、浮かない顔だね。てっきり行きたいのかと思っていたが」
怪訝な顔をするエドガーに慌てて返事する。
「いえ、行きたいですわ。ただ、緊張しそうだなと思っただけです。」
「まあ、そういった社交の場にも慣れておかなければ将来困るだろう。演目は女性が好むものを選んでおいた。楽しみにしなさい」
二日後、エドガーとオペラにいく。オペラは楽しむだけでなく、重要な社交の場でもある。幕間には、ワインやシャンパンで喉を潤す。そして、兄は、知人が何人もいるらしく丁寧に挨拶を受けている。同時に自分を紹介してくれ挨拶を交わす。
ロバート様はいらっしゃらないわねとホッとする。兄にロバートと一緒にいるところを見られたりしたら即刻スコールに連れて帰られそうだと思う。
「アデリーナ嬢」
ぎくりと振り返るとジェイドが急ぎ足でこちらに向かってくる。
「ジェイド様、ご無沙汰しておりま」
「ああ、本当に久しぶりだ。前に会ってから1年以上経っている。どうして会ってくれないのだ。何度も手紙を出しているのに」
「ジェイド殿、それがレディーに対する態度かね。王宮で侍従見習いとして仕事を始められたと聞いていたが、私にも挨拶がないとは嘆かわしい」
兄が眉間に皺を寄せている。
はっと、エドガーに気が付き、
「エドガー殿、失礼しました。ご無沙汰しております。11年ぶりでしょうか。せっかくローヌにアデリーナさまが来られたというのに全くお会いすることが叶わずつい・・」
「アデリーナは、ローヌに遊びにきたわけではない。勉強にきているのだ。若い男性と遊び歩くようなことをするわけがない。そもそも、留学してきたきっかけについては、お父上にお話させていただいているはずだが」
「おっしゃる通りです。ですが、エドガー殿、私は、子供の頃からアデリーナ嬢を」
「こんなところで聞く内容ではないですな。周囲の方々の反応をご覧ください。公爵子息であるあなたが、淑女である妹への配慮に欠けるというもの。失礼する。アデリーナ、帰ろう」
「は、はい。では、失礼いたしますわ。」
申し訳なさそうにカーテシーをしてアデリーナはオペラを中座したのだった。
帰途、馬車の中で
「まったく、話には聞いていたが酷いものだ。デンツ公爵には、注意していただく必要が再度あるようだ。アデリーナ、お前も注意しなさい。」
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