前世で医学生だった私が転生したら殺される直前でした。絶対に生きてみんなで幸せになります 2

mica

文字の大きさ
28 / 36
2:ロバートとアデリーナ

諦められない想い

しおりを挟む
こうして二人の秘密の恋が始まった。
ロバートは、卒業後、暫くは官僚になることを考えていたが、領地に戻って領地の経営を立て直すことにしたと皆に伝えた。

そして、ジェイドとは少しずつ距離を置き親友だった二人の間がどことなくおかしくなっているのに周囲も気がつき始めた。フリードからも諌められるが、変えようとしない。ジェイドはジェイドで、きっと自分がアデリーナと婚約したと信じているロバートが複雑な気分でいるのだろうと考えていた。ジェイド自身は何度もアデリーナをお茶会や乗馬に誘ったが断られ、それを知った父に諌められ、全く接点がないままだった。

そうして、学院を卒業する。フリードは騎士団に入団、ジェイドは王宮で外交部門で侍従見習いとして働くこととなった。ブライアンは大学へ進学することとなった。 


卒業後、ロバートは領地に戻りハーブ栽培をもっと広げて質を高めるように専念する。そして時折王都にきてこっそりアデリーナと会う。

「アデリーナ様、できれば、きちんとあなたのお屋敷に迎えに行ってお会いしたい。このようにアイリーン嬢に手紙を渡すのではなくあなた宛に直接手紙やプレゼントを渡したいのです。」

ロバートは、隠れるようにアデリーナと付き合うのは正しくないことと思っている。
しかし、
「いいえ、ロバート様。残念ですが、もしロバート様のことに家のものが気づいてしまえば、即刻私はスコールに帰国させられてしまいます。父も祖父も、スコールで自分の弟子や遠縁の子弟と結婚するのが一番とずっと考えているのですから」

頑なに否定され、しかもスコールへ帰国させられてしまうと聞くとそれ以上押し進めることもできない。

ロバートは、忸怩たる思いを持ちながらアデリーナの希望に沿うようにする。
目立たないネックレスやリボンといったアデリーナが友人と購入しても不思議に思われないようなものを贈る。アデリーナが喜んでくれいつも身につけてくれていると思うと、とても幸せな気持ちになる。一方、アデリーナは、ロバートに身につけてもらえるハンカチや剣帯などに刺繍をしてプレゼントする。

そんな風に2年を過ごしたのだった。


******************************


アデリーナの女学院卒業まであと半年ほどになった。アデリーナは、相変わらず女子学院で学びながら、時折、バースにやってくるロバートとこっそりアイリーンの手助けで会っている。社交界には参加しないようにしていた。どこでジェイドに会うかわからないからである。


「アデリーナ」

「お兄様!」

「久しぶりだ。すっかり淑女だね。」
アデリーナを抱きしめて微笑む。

「ありがとうございます。お久しぶりです。2週間ほどこちらに滞在すると伺いましたわ」

「ああ、今度こちらの大学で自分の研究について教えて欲しいと言われたのでね。それに、母上からも、お前が貴婦人として成長しているか見てきて欲しい、それからたまにはオペラやコンサートにでも連れて行ってあげて欲しいと頼まれてね。」

ああ、オペラ、素敵だわ・・・お友達がよく話してくれているものね。でも、お兄様と行ってもあまり嬉しくはないけど。できれば、ロバート様と行きたい。

「何だ、浮かない顔だね。てっきり行きたいのかと思っていたが」
怪訝な顔をするエドガーに慌てて返事する。

「いえ、行きたいですわ。ただ、緊張しそうだなと思っただけです。」

「まあ、そういった社交の場にも慣れておかなければ将来困るだろう。演目は女性が好むものを選んでおいた。楽しみにしなさい」




二日後、エドガーとオペラにいく。オペラは楽しむだけでなく、重要な社交の場でもある。幕間には、ワインやシャンパンで喉を潤す。そして、兄は、知人が何人もいるらしく丁寧に挨拶を受けている。同時に自分を紹介してくれ挨拶を交わす。
ロバート様はいらっしゃらないわねとホッとする。兄にロバートと一緒にいるところを見られたりしたら即刻スコールに連れて帰られそうだと思う。

「アデリーナ嬢」

ぎくりと振り返るとジェイドが急ぎ足でこちらに向かってくる。

「ジェイド様、ご無沙汰しておりま」

「ああ、本当に久しぶりだ。前に会ってから1年以上経っている。どうして会ってくれないのだ。何度も手紙を出しているのに」

「ジェイド殿、それがレディーに対する態度かね。王宮で侍従見習いとして仕事を始められたと聞いていたが、私にも挨拶がないとは嘆かわしい」
兄が眉間に皺を寄せている。

はっと、エドガーに気が付き、
「エドガー殿、失礼しました。ご無沙汰しております。11年ぶりでしょうか。せっかくローヌにアデリーナさまが来られたというのに全くお会いすることが叶わずつい・・」

「アデリーナは、ローヌに遊びにきたわけではない。勉強にきているのだ。若い男性と遊び歩くようなことをするわけがない。そもそも、留学してきたきっかけについては、お父上にお話させていただいているはずだが」

「おっしゃる通りです。ですが、エドガー殿、私は、子供の頃からアデリーナ嬢を」

「こんなところで聞く内容ではないですな。周囲の方々の反応をご覧ください。公爵子息であるあなたが、淑女である妹への配慮に欠けるというもの。失礼する。アデリーナ、帰ろう」

「は、はい。では、失礼いたしますわ。」
申し訳なさそうにカーテシーをしてアデリーナはオペラを中座したのだった。

帰途、馬車の中で
「まったく、話には聞いていたが酷いものだ。デンツ公爵には、注意していただく必要が再度あるようだ。アデリーナ、お前も注意しなさい。」


その後、ジェイドは公爵からかなり叱責されたらしく、手紙を送ってくる事はなくなりホッとしたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

ハイエルフの幼女に転生しました。

レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは 神様に転生させてもらって新しい世界で たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく 死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。 ゆっくり書いて行きます。 感想も待っています。 はげみになります。

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

転生騎士団長の歩き方

Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】  たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。 【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。   【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?  ※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...