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快楽の糸 2

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映人が実家に行った続きです。

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「金曜から体調悪いのか?」

 問いかける言葉とうらはらに、映人の顔は酷薄な笑みをきざんでおり、悠はその笑顔にいっそう青くなる。
 理由は明白だった。

 会社から帰る直前に、あんな淫らなものを体内に挿入されて平常心でいられる者などいるわけがない。
 それを強制的にほどこした兄に、悠になじれるだけの勇気があれば、どんなに気が楽だったろうか····。

 映人はいいながら開いたままの扉に躰をすべりこませて、悠を部屋におしこみ扉を閉めてしまう。
 室内に入ったとたん、映人の声色が艶めいたものに変化した。

「あのあと───自分で出したのか?」
 
 押しのけながら弟を抱き込むような形になると、双丘に片手をまわし、からかうような口調でたずねる。
 起きぬけで、部屋着である悠の格好は綿のズボンとTシャツで、肌のほどよい柔らかさを、映人の掌にここちよくつたえた。
 
 耳元であの後のことを訊かれ、悠は真っ赤になった。

「っ······とるの·····大変だった」

 金曜の帰りにアナルプラグを挿入された悠は、会社から電車に乗りやっとの思いで家に着いた。
 歩くたびに内奥の球体がこすれ、陰茎が隆起してしまいそうな感覚におちいり、瞳はうるみ息はしだいに乱れた。

 悠には、ひどいことをする兄の言葉など無視し、会社のトイレでもたちより内奥のものを抜いてしまおうという、選択肢はなかった。
 それは映人に言われた言葉が呪文のように、縛っていたからでもあるし、自分で抜くという行為は彼にとって、ものすごく背徳感があったからだ。

 家に帰ってきてからは、かまおうとする母をすりぬけ、どうにか自分の部屋にかけ込んだ悠は、自室の鍵をかけ震える手でアナルプラグをひきぬこうとした。
 
 はじめはうまくいかず、蕾の入口にぷらりとぶら下がるようになっていた、丸いフックに指をかけひっぱってみた。
 栓のようになっているプラグのひっかかりを抜くのに苦労し、じっとりと汗をかきながらもようやく成功し、3つのボールの球体をとりだしたときには息もたえだえになっていた。

「自分で出したとき、勃起したか?」
「───っ、そん·····な」

 まるで視られていたかのような、口調だった。
 じっさい悠は背徳感にさいなまれながらも、最後の球体をひきぬいたときに放出してしまい、ひどい罪悪感をいだいた。

 とまどうような悠のようすに、言わなくても映人には手にとるように判ってしまう。
 昨夜の透子からの連絡がなければ、来週から社内ですこしずつ玩具に慣れさせるつもりであった。

「───感じたか?」

 映人の言葉はすべてが問いかけだったが、悠のがどのような状態におちいったのか訊かなくともわかっている。
 言葉で動揺する弟の反応がかわいくて、つい意地悪な質問をしてしまうが、自身の躰は正直だった。

 金曜の夜から土曜日の朝方まで、さんざん伊織をむさぼったのに、兆してしまいそうな欲望に、躰はしぜんにうごく。
 強引にひきよせると悠からは驚きの声があがったが、唇をかさねると初めは抵抗するように躰をつっぱらせ、強い力にあきらめたかのように力をぬいた。
 
 ふっくらした唇の歯列をわり、口内を蹂躙しながら悠のベッドに座らせる。

「───ん、んっ!」

 縮めている小さい舌をからめながらきつく吸い、口蓋を舐め、息つく間の間を与えないほどに濃厚にからめると、苦しくなった悠は無意識に映人の服にしがみつくかたちとなった。
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