8 / 35
第8話
しおりを挟む
一通り見て回り、そろそろ馬車に戻ろうか、というときにそれは起きた。
「スリよ! 誰か捕まえて!」
人混みの奥から女の叫びが聞こえた。通行している人は一斉に足を止めて声のしたほうを見る。
巡も首を伸ばすと、ひとりの男が走っていた。その向こうで地に膝をついている娘。彼女は身なりがよく、どこかのいいところの娘なのだろうということがうかがえた。
男はわき目を振らずにまっすぐに巡が立っていつ方へ走ってくる。男の目は暗く、それでいて口元にはうっすらと笑みを浮かべている。人を小馬鹿にするような笑みだ。
男が巡のすぐ脇を駆け抜けても、巡はなにもすることができなかった。
ただ呆然をその背を見送る。
女の悲壮な声がまた聞こえた。
「ああ! 大事なお金が入っているの! 誰か……!」
その声に突き動かされるように一歩足を出す。しかし男の背中はどんどん小さくなっていく。
群衆の中からも数名が男の後を追おうとして駆け出す者がいたが、とても男に追いつけそうにない。
(せめて、足止めできたら……)
巡がそう思ったとき、脳裏でしゃらん、と銀の腕輪が音を立てた気がした。
(そういえば、あれはいまどこにあるんだろう)
あの無機質な冷たさを欲したとき、それはすぐに手元に現れた。
「え……」
かち、と硬質のそれが爪に当たる。くすんだ黒。それがいま巡に使われるのを待っている。
(これって、なんていう銃なんだろう)
巡は銃に詳しくない。ただ漠然と強い武器なのだということと、大きな音を生むものであるということを知っていた。
巡が武器を顕現させたのを見て、ヨンシは悲鳴をあげた。
「メグル様!? いけませんわ!?」
「耳塞いで!」
ヨンシの制止の言葉に重なって叫び、巡はその銃口を空に向けた。
――そして間髪入れずに引き金を引いた。
空気を切り裂くような発砲音が1発、2発、3発と鳴り響く。
異世界に馴染まない乾いた音は人々の足を止めさせるに十分な働きをした。
人々の視線は巡とその手の黒い見慣れない武器にくぎ付けとなった。それは逃走していた男も同様である。
巡は叫んだ。
「つ、捕まえてください! 早く!」
巡の声を聞いて、何人かが男に手を伸ばす。
「離せ!」「大人しくしろ!」という応酬のあと、ついに男は地面に組み伏せられた。
それを見て巡はようやく息を吐いた。途端、手中にあった散弾銃は霧散して消える。しかし巡にはそれが見えなくなっただけでいつでも取り出せるところにあるということがもうわかっていた。
娘は盗まれたらしい荷物を男から奪い返すと、くるりと踵を返して巡に歩み寄った。
娘は巡と同い年くらいに見えた。なんの獣人かまではわからないが、やわらかそうな薄茶の大きな耳がかわいらしい。
髪は青みがかった黒だった。
その髪は短く切りそろえられている。長髪が多いこの世界では珍しい。
瞳は水色で、同じく水色のワンピースと白いケープを着ている。耳にはきらきらとシルバーの鳥を模した飾りが輝いていた。
巡にはこちらの世界のファッションはわからないが、おそらく目の前の娘はこちらの世界でおしゃれな子に分類されると思われた。
「ありがとう……で、いいのよね?」
彼女が首を傾げると、シルバーの耳飾りが太陽の光を反射して巡の目を焼いた。
「え? あ、はい」
「助かったわ。私、サリエット。あなたは?」
「め、め、巡です」
妙に声が裏返る。サリエットははつらつとした雰囲気の娘で、巡はもう圧倒されてしまっていた。
「お礼をしたいけど、日を改めたほうがよさそうよね?」
そう言って彼女は周囲に視線を投げる。彼女たちのまわりには人だかりが生まれ、皆奇異の目をこちらに向けていた。
そのことに気が付いた時、巡は固まってしまった。
「……ええっと」
巡が顔を伏せてもじもじとしていると、サリエットはヨンシに向かって言った。
「あなた、この子の付き人?」
「はい」
「ほら、早く連れて行って。よくわからないけど、神官に関係する子なんでしょう? こんなところで騒ぎになっていいの?」
ヨンシは弾かれたように巡に手を伸ばし、彼女の背を押した。
「メグル様! 行きましょう!」
「あ……」
一歩目を踏み出す。しかし二歩目がでない。未練がましく振り返った巡に向かって、サリエットは声をかけた。
「私、お店をしているの」
「お店?」
「そう。落ち着いたころに来て。水の広場にあるマダム・ウーの帽子屋っていえばみんなわかるわ。毎日営業してるから」
マダム・ウーの帽子屋。巡はそれをまた口の中で転がした。メモをとる時間はなさそうだ。巡の背をまたヨンシが押す。
「メグル様!」
「は、はい! ありがとうございます。では」
ヨンシに急き立てられ、郊外に停めていた馬車に乗り込む。
ヨンシはしきりに巡の体調を気にしていた。
「こんなことでお力を使うだなんて……御身に障りでもしたら……なにか異変はありませんか。吐き気はありませんか。お熱は……」
しかし、いまの巡にはヨンシの言葉はほとんど耳に入らない。
(ちゃんとできた……人の役に立てた……)
巡はその事実を何度も噛み締める。
胸の奥がくすぐったくなるような、喉の奥が熱くなるような、不思議な感覚だった。
「よかった」
ぽつりと巡が言うと、ヨンシは目を吊り上げた。
「ちっともよくありませんわ! メグル様のそれは聖なるお力ですのよ、それを……! それに、魔力の補充もなしに……!」
(なんだろう?)
ようやく、巡はヨンシを見た。ヨンシの顔は蒼白で、唇は紫になってしまっている。
それを見て、やっと巡は自分がとんでもないことをしてしまったのかもしれないと気が付いた。
「あの、もしかして、なにか、まずかったですか?」
「とんでもないことをなさりましたわ! 早くお城に戻らないと……!」
――なんでそんなに焦っているの。
巡の疑問は声にならなかった。
「あれ……」
巡はぐらりと体勢を崩す。ヨンシが悲鳴を上げた。
「メグル様!?」
目の前のヨンシが二重に見えた。そして「あ」と思ったときには真っ黒な闇に落ちていった。
「スリよ! 誰か捕まえて!」
人混みの奥から女の叫びが聞こえた。通行している人は一斉に足を止めて声のしたほうを見る。
巡も首を伸ばすと、ひとりの男が走っていた。その向こうで地に膝をついている娘。彼女は身なりがよく、どこかのいいところの娘なのだろうということがうかがえた。
男はわき目を振らずにまっすぐに巡が立っていつ方へ走ってくる。男の目は暗く、それでいて口元にはうっすらと笑みを浮かべている。人を小馬鹿にするような笑みだ。
男が巡のすぐ脇を駆け抜けても、巡はなにもすることができなかった。
ただ呆然をその背を見送る。
女の悲壮な声がまた聞こえた。
「ああ! 大事なお金が入っているの! 誰か……!」
その声に突き動かされるように一歩足を出す。しかし男の背中はどんどん小さくなっていく。
群衆の中からも数名が男の後を追おうとして駆け出す者がいたが、とても男に追いつけそうにない。
(せめて、足止めできたら……)
巡がそう思ったとき、脳裏でしゃらん、と銀の腕輪が音を立てた気がした。
(そういえば、あれはいまどこにあるんだろう)
あの無機質な冷たさを欲したとき、それはすぐに手元に現れた。
「え……」
かち、と硬質のそれが爪に当たる。くすんだ黒。それがいま巡に使われるのを待っている。
(これって、なんていう銃なんだろう)
巡は銃に詳しくない。ただ漠然と強い武器なのだということと、大きな音を生むものであるということを知っていた。
巡が武器を顕現させたのを見て、ヨンシは悲鳴をあげた。
「メグル様!? いけませんわ!?」
「耳塞いで!」
ヨンシの制止の言葉に重なって叫び、巡はその銃口を空に向けた。
――そして間髪入れずに引き金を引いた。
空気を切り裂くような発砲音が1発、2発、3発と鳴り響く。
異世界に馴染まない乾いた音は人々の足を止めさせるに十分な働きをした。
人々の視線は巡とその手の黒い見慣れない武器にくぎ付けとなった。それは逃走していた男も同様である。
巡は叫んだ。
「つ、捕まえてください! 早く!」
巡の声を聞いて、何人かが男に手を伸ばす。
「離せ!」「大人しくしろ!」という応酬のあと、ついに男は地面に組み伏せられた。
それを見て巡はようやく息を吐いた。途端、手中にあった散弾銃は霧散して消える。しかし巡にはそれが見えなくなっただけでいつでも取り出せるところにあるということがもうわかっていた。
娘は盗まれたらしい荷物を男から奪い返すと、くるりと踵を返して巡に歩み寄った。
娘は巡と同い年くらいに見えた。なんの獣人かまではわからないが、やわらかそうな薄茶の大きな耳がかわいらしい。
髪は青みがかった黒だった。
その髪は短く切りそろえられている。長髪が多いこの世界では珍しい。
瞳は水色で、同じく水色のワンピースと白いケープを着ている。耳にはきらきらとシルバーの鳥を模した飾りが輝いていた。
巡にはこちらの世界のファッションはわからないが、おそらく目の前の娘はこちらの世界でおしゃれな子に分類されると思われた。
「ありがとう……で、いいのよね?」
彼女が首を傾げると、シルバーの耳飾りが太陽の光を反射して巡の目を焼いた。
「え? あ、はい」
「助かったわ。私、サリエット。あなたは?」
「め、め、巡です」
妙に声が裏返る。サリエットははつらつとした雰囲気の娘で、巡はもう圧倒されてしまっていた。
「お礼をしたいけど、日を改めたほうがよさそうよね?」
そう言って彼女は周囲に視線を投げる。彼女たちのまわりには人だかりが生まれ、皆奇異の目をこちらに向けていた。
そのことに気が付いた時、巡は固まってしまった。
「……ええっと」
巡が顔を伏せてもじもじとしていると、サリエットはヨンシに向かって言った。
「あなた、この子の付き人?」
「はい」
「ほら、早く連れて行って。よくわからないけど、神官に関係する子なんでしょう? こんなところで騒ぎになっていいの?」
ヨンシは弾かれたように巡に手を伸ばし、彼女の背を押した。
「メグル様! 行きましょう!」
「あ……」
一歩目を踏み出す。しかし二歩目がでない。未練がましく振り返った巡に向かって、サリエットは声をかけた。
「私、お店をしているの」
「お店?」
「そう。落ち着いたころに来て。水の広場にあるマダム・ウーの帽子屋っていえばみんなわかるわ。毎日営業してるから」
マダム・ウーの帽子屋。巡はそれをまた口の中で転がした。メモをとる時間はなさそうだ。巡の背をまたヨンシが押す。
「メグル様!」
「は、はい! ありがとうございます。では」
ヨンシに急き立てられ、郊外に停めていた馬車に乗り込む。
ヨンシはしきりに巡の体調を気にしていた。
「こんなことでお力を使うだなんて……御身に障りでもしたら……なにか異変はありませんか。吐き気はありませんか。お熱は……」
しかし、いまの巡にはヨンシの言葉はほとんど耳に入らない。
(ちゃんとできた……人の役に立てた……)
巡はその事実を何度も噛み締める。
胸の奥がくすぐったくなるような、喉の奥が熱くなるような、不思議な感覚だった。
「よかった」
ぽつりと巡が言うと、ヨンシは目を吊り上げた。
「ちっともよくありませんわ! メグル様のそれは聖なるお力ですのよ、それを……! それに、魔力の補充もなしに……!」
(なんだろう?)
ようやく、巡はヨンシを見た。ヨンシの顔は蒼白で、唇は紫になってしまっている。
それを見て、やっと巡は自分がとんでもないことをしてしまったのかもしれないと気が付いた。
「あの、もしかして、なにか、まずかったですか?」
「とんでもないことをなさりましたわ! 早くお城に戻らないと……!」
――なんでそんなに焦っているの。
巡の疑問は声にならなかった。
「あれ……」
巡はぐらりと体勢を崩す。ヨンシが悲鳴を上げた。
「メグル様!?」
目の前のヨンシが二重に見えた。そして「あ」と思ったときには真っ黒な闇に落ちていった。
1
あなたにおすすめの小説
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
盲目公爵の過保護な溺愛
クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中
恋愛
伯爵家の長女として生まれたミレーヌ。平凡な容姿に生まれた彼女は、美しい妹エミリアと常に比べられ、実の両親から冷遇されて育った。
パーティーでは家族の輪に入れて貰えず、いてもいなくてもいい存在。
そんな現実から逃れようと逃げ出した先で、ミレーヌは美しい容姿をした目の不自由な男性と出会うが──
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまで
ChaCha
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したことに気づいたアイナ・ネルケ。
だが彼女はヒロインではない――ただの“モブ令嬢”。
「私は観る側。恋はヒロインのもの」
そう決めて、治癒魔術科で必死に学び、気合いと根性で仲間を癒し続けていた。
筋肉とビンタと回復の日々。
それなのに――
「大丈夫だ。俺が必ず君を守る」
野外訓練で命を救った騎士、エルンスト・トゥルぺ。
彼の瞳と声が、治癒と共に魂に触れた瞬間から、世界が静かに変わり始める。
幼馴染ヴィルの揺れる視線。
家族の温かな歓迎。
辺境伯領と学園という“日常の戦場”。
「……好き」
「これは恋だ。もう、モブではいたくない」
守られるだけの存在ではなく、選ばれる覚悟を決めたモブ令嬢と、
現実しか知らない騎士の、静かで激しい溺愛の始まり。
これは――
モブでいたはずの私が、ただひとりに溺愛されるまでの物語。
※溺愛表現は後半からです。のんびり更新します。
※作者の好みにより筋肉と気合い…ヤンデレ落ち掛けが踊りながらやって来ます。
※これは恋愛ファンタジーです。ヒロインと違ってモブは本当に大変なんです。みんなアイナを応援してあげて下さい!!
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
完結·異世界転生したらアザラシ? でした〜白いモフモフでイケメン騎士たちに拾われましたが、前世の知識で医療チートしています〜
禅
恋愛
ネットでアザラシを見ることが癒しだった主人公。
だが、気が付くと知らない場所で、自分がアザラシになっていた。
自分が誰か分からず、記憶が曖昧な中、個性的なイケメン騎士たちに拾われる。
しかし、騎士たちは冬の女神の愛おし子を探している最中で……
※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿しています
※完結まで毎日投稿します
契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件
水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる