魂魄シリーズ

常葉寿

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【魂魄・壱】『輝く夜に月を見た』0話「夢」

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 ――夢を見る

 どこか懐かしい光に包まれて。柔らかな風が鼻をくすぐる。それは月見草の香り。目を閉じると穏やかな人たちの優しい声。自分を呼んでいる。感じたのは少しだけの好奇心。再びまぶたを開き彼は振り向く。ぼやけた視界の先に見知った顔、顔、顔。

 ――手を伸ばす

 彼らは遠くへ離れていく。少しずつ確実に。いつの間にか小さくなり辺りも暗くなる。心細くなる。改めて事実を知る。自分は一人なのだと。孤独なのだと。周囲は完全に暗闇になった。

 ――あれは

 わずかな変化を感じる。小さな光の粒。沢山ある。少しずつ大きくなり小さくなってまばたく幾万の輝き。命の鼓動のようで、どこか安心できた。

 ――あおたま

 多くの光の粒の中でひときわ大きい球は美しかった。新たに発見した異質いしつに心がおどる。その碧は自分を歓迎している様にも感じた。そう信じたかった。

 ――キレイ

 隣で声が聞こえた。気のせいだろうか。驚き、焦り、そして少しの戸惑い。こちらも声を発してみようか。でも……なんの呼応こおうもなかったら? 

 気が狂いそうな孤独感に再び包まれる恐怖を感じた。怖気おじけづく。一人は怖い。自分は弱い。

 ――あれはなに

 高鳴る。静寂の中で自分以外のせいを感じた。誰かいる。真っ暗で何も見えないけれど確かにいる。自分は一人じゃない。弱々しく、けれどハッキリとした口調で応える。

 ――きっと僕たちを歓迎してくれるよ

 精一杯に強がって見せる。自分は一人ではない。隣に誰かがいてくれたのなら安心だ。自分に言い聞かせて不安を拭い去る。伝染うつってしまうから……気持ちは相手に伝わってしまうから。

 ――静寂せいじゃく

 沈黙。返事がない。そして不安。時間の経過が分からない。破ったのは声ではなく温もりだった。遠慮がちに触れる。その何かに驚きを隠せないが、なにかは二つになり三つになって、五つになった所で「手」だと分かった。その手は彼のてのひらを握った。ギュッと強く。

 ――いっしょに行こう

 彼は呟いた。視線は碧に向いたまま。

 ――うん

 彼に返事が聞こえた。「彼女」の声。

 あおは次第にその大きさが分からなくなるほど接近して二人の視界を完全に覆った。

 しばらくすると急に周りが明るくなり変化の速度を増していく。体が重くなり息苦しくなる。繋いだ手から感じた温もりがだけが二人をふるい立たせた。一人じゃない。二人の声が重なった。

 ――『きっと大丈夫』
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