現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

文字の大きさ
393 / 1,167
四章『トマト編』

第393話 伝説の剣を抱いて16

しおりを挟む

「その剣が伝説の剣と言うことはわかりましたが、経緯を聞いてもいいですか?」

 アイナが俺を拾い上げて肩に乗せる。そしてスカリーチェから一歩離れる。何やら警戒してくれているようだ。

 スカリーチェはその様子を見ても笑顔を絶やさない。

「もちろん聞かれなくても話しまスよ」
「お願いします」
「他に連れがいるなら、集めてからでもいいでスよ」
「それが・・・・・・この山に近づくと幻覚に襲われる人が続出して」
「ん?  あー、それならもう大丈夫っスよ」
「どうしてですか?」
「伝説の剣を守るための結界が解けたからでス。あの結界には幻覚作用があったんスよ、魔力濃度も自然と平常値に戻るっスよ」

 ホントかウソかはわからないが試してみるか。

「ならこの伝説山の山頂に拠点を築くか」
「話が本当ならそれがいいでしょうな。周囲を警戒している聖騎士たちに伝令を頼みましょう」
「ああ、頼む」

 小一時間後。

 全軍が揃い。移動を開始する。
 スカリーチェが少し離れた途端にシャニーが近づいてきた。

「す、すごいねバーガーさん。伝説の剣を手に入れちゃうなんて」
「だ、だろ?」

 今の俺はスカリーチェのことで頭が一杯だ。

シャニーがさらに顔を近づけてくる。

「バーガーさん、ちょっといいですか?」
「・・・・・・ああ、アイナ、ちょっとシャニーと話してくる」
「え、わかりました」

 俺はアイナの肩からシャニーの肩に飛び移る。
 スカリーチェからあまり離れていない位置で話し始める。

「こ、このくらいの距離なら怪しまれないでしょう。離れすぎもよくないですから」
「・・・・・・どうしたんだ」
「あ、あの人、本当に伝説の剣を護りし者ですか?」

 鋭い・・・・・・シャニーは臆病なせいか危機管理能力が異様に高い。

 話したいところだが、俺がスカリーチェの正体を言ってしまえばアイナが殺される。いや、ここにいる人たち全員が脅威に晒される。

 伝説の剣を腹に刺したまま100年耐える化け物だ。
 言葉の説得力が違う。

「そうだ」
「そ、『そうですか』。わかりました」

 ベースキャンプに戻り、事情を説明する。
 広場を作り、皆を集める。

 スカリーチェが皆の前に立つ。オショーが口火を切った。

「では、説明をしていただきましょうか?」
「はいっス。私はスカリーチェっス」

 名前そのままかよ!

「スカリーチェ・・・・・・たしか、旧魔王軍の旧四天王でもその名を持つ者がいましたな」
「名前が被るのはよくあることっスよ。スカリーチェなんてどこにでもいる普通の名前っスし」
「・・・・・・続けてくだされ」
「はいっス」

 この魔女、心臓に針金が生えてやがる。

「100年くらい前の話っスかねー。伝説の剣を運搬中に何かに襲われたっス」
「・・・・・・何かとは?」
「知ってたら何かなんて呼ばないっスよ」

 絶対スカリーチェだ。

「運搬部隊も精鋭が揃ってたっスけど、勝てなかった、残った私が木箱に入ったMソードを抱えてあの伝説山に逃げ込んだんス」
「疑問がありますな」
「なんスか?」
「貴方は人間なのですか? その話が本当ならば貴女は100歳を超えていることになりますぞ」
「あー、結界の中にいたからっスね。皆が見た幻覚もその結界の効果っス。納得してくれたっスか?」

 話に筋は通っている。

 実際は運搬部隊を襲ったのはスカリーチェだし、伝説の剣をこの100年間隠し続けたのもスカリーチェだ。

 誰かが挙手している。その手は震えている。

「誰っスか?」
「ぼ、僕は冒険者のシャニーです」

 そう、小柄な彼が手を震わせながら、スカリーチェを見つめている。

「なんだか大丈夫っスか?」
「だ、大丈夫です!」
「それで質問はなんスか?」
「し、失礼ですが、貴女が人間か確かめさせて貰ってもいいですか?」

 やっぱりシャニーは鋭い。もしかすると違和感に気づいたのかもしれない。

 スカリーチェがどうでるかヒヤヒヤしていると、

「別に構わないっスよ。用心深いことはいいことっスからね」
「では彼女に身体検査を、女性なので、そうですな。ジゼルさんに頼んでもいいでしょうか?
「オッケーオショー。私が調べる」

スカリーチェとジゼル、そしてエリノアがテントの中に入って行った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...