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四章『トマト編』

第545話 礼儀杯8

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 大会当日。この大会は大規模なので広場や大通りなど、王都の至る所が試合場になっています。

 早朝の王様の開会宣言から夕方にかけて王都は戦いの熱気に包まれます。

「さぁヒマリ気張ってこいよ!」
「はい。リトル先生、ここまでありがとうございました」
「そんな最後みたいな言い方するなよな。・・・・・・もしかしたら万が一ってことも有り得るかもしれないぜ」
「その顔、リトル先生が一番ないと思っていませんか?」
「あ、わかった? ってなんで甲越しに分かったんだ?」
「ふふふ。では行ってきます」
「ふ、あぁ行ってこい!」

 対戦相手がクロスケ様ということで、試合会場は王城内の広場です。王様にその他重鎮、貴族なども集まっています。

 広場の中心に佇む人が皮肉めいて笑います。

「カカカ! まるで保護者だな、なんだこれはお遊戯会か?」

 ズボンポケットに手を入れた。上半身裸の黒猫の獣人が現れました。

「違います。私の先生です」
「そうかよ。どうでもいいが、まったくお前も運がねェな」

 クロスケ様は面倒くさそうに頭を掻きます。

「ま、俺もあんな盾には興味ねぇしよ。互いに棄権しあってお茶濁そうぜ」

 王様の前でとんでもないことを言いますが、王様は嬉しそうに笑っています。

「私は興味あります。あの盾がほしいです」
「けっ、装備がいいもんになったからなんだってんだ」
「お言葉ですが、それは強者の言葉です」
「あん?」
「私は弱いです、一年前まで村娘でした。だから、強くなれるのなら、おにぃちゃんの仇を討てるのなら、私はマナーの盾がほしいです」
「なんだよなんだよ。お前立派な戦士じゃねぇか! カカカ! 相手が小娘と聞いてテンション下がってたが、なんだ? 最近の小娘は皆そんな感じなのか!? エエ!?」

 クロスケ様が片手をかざすと試合開始の銅鑼がなりました。

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