現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

一章『レタス編』

第５話 親バレ

　筋トレをするとはいったものの、この体は人間の時と操作性が全く違う。慣れるのに必死で、産まれてからの１ヶ月を体の操作を覚えるのに費やしてしまった。

　考えれば分かることだが、こんな食物ハンバーガー、いつ殺されてもおかしくないのだ。この異世界とやらに怪物がいるかはまだ分からないが、俺は間違いなく怪物側だ。だから何かあった時のために自力で生きていけるようになっておかなければならない。

　まず、問題に上がるのが移動方法だ。ハンバーガーには足がない、なので人間の時のように歩くことはできない。だからハンバーガーにあった歩き方を模索することにした。

「お、動いとるやん、バーガーは元気やなぁ」

　セニャンだ、手には薬草を持っている。俺は今挟んでいる薬草を吐き出して、口を開いた。ご飯の時間だ。

「はいはい、いまあげるからねーちょっと待つんやでー」

　セニャンは俺が吐き出した萎びた薬草を回収して籠を掃除する。今日はやけに丁寧に掃除するな。その間にも脱力感が襲ってくる、具材がなくなると急激に力が抜けて腹も減るのだ。餓死しそうだ。この苦しみだけは耐え難い。先に······薬草をくれッ！

「た、頼む、や、薬草を······挟んでぇッ！！」

　余りの苦しさに耐えかねて声を出してしまった。俺はセニャンを見る、口を半開きにして呆けた顔をしている。そして次の瞬間。

「シャベッタアアアアアアアアアアアアア！！」

　某ＣＭを彷彿とさせるシャウトを放った、その声を聞きつけて畑仕事をしていたウィルがすっ飛んできた。

「どうしたんや、セニャン、夜でもあんな声出さへんやろ！」
「ウィルぅ、バーガーがぁ、喋ったんよぉ」
「マジでか！」

　やってしまった、生後１ヶ月で喋るハンバーガーがどこにいる。俺は身の危険を感じつつも、成すすべがないことに絶望した。そして空腹感に苛まれ、もうどうにでもなれといった気持ちで呟いた。

「薬草を、挟んでください、お願いです」
「シャベッタアアアアアアアアアアアアア！！」

　今度はウィルが絶叫した。ふざけんなマジで。

　その後、俺はセニャンに薬草を挟んでもらい、そのままテーブルの上に置かれた皿に乗せられた。
　ウィルが顔を近づける。

「喋れるんか？」
「はい、喋れます······」
「うっわ！　めっちゃ丁寧やな、訛りが一切遺伝してへんわ」
「す、すいません」
「なんで謝んねん」
「なぁウィル、なんでこの子もう喋れるんやろなぁ」
「そら決まっとるやろ、ワイの子やぞ、あと勇者やからや」
「絶対後者のほうが影響あるで」

　大変なことになった、筋トレどころではなくなった、転生したことは隠しておいたほうがいいだろう。別の世界の三冠王がハンバーガーになって転生してきたとか言ったら、殺されて元の世界にフライドチキンとして転生させられるかもしれない。

「もしかしてウチの子天才なんちゃうか？　となりの赤ちゃんなんて泣き喚いて大変っていつも言っとるで」
「せやな、さすがワイの息······子？」
「た、多分男です」
「さすがワイの息子や！」
「せや、えいさいきょーいくせな！」
「グリルガードが名家と呼ばれる日も夢やあらへんで！」

　親バカで助かった。