現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

一章『レタス編』

第１１話 色々挟んでました

　俺がハンバーガーに転生してから５年が経った。月日が経つのは早いものだ。その間、俺が何をしていたかというと、色々挟んでいた。

　俺は飛び跳ねて椅子に乗る、そこからさらにテーブルの上に飛び乗る。テーブルの上に置かれた一冊の本を口で咥えて適当に開く、目当てのページを何度かめくって発見。この本には日々の研究の成果が記録されている（そんな大層なものではない）。書いたのは俺ではない、俺が口頭で言った言葉をセニャンが代わって書いてくれたのだ。

　困ったことに、この村には草しかない。それも薬草、解毒草といったポピュラーなものばかりだ。それを売って生計を立てている村だから当たり前の事なのだが。

　村の南には巨大な森があって、奥に行くほどレア物の草が手に入るそうだ、だが同時に魔物の出現率も高まるため行くことはほとんどない。行くとしたら計画的な集団狩猟を企画しないとならないだろう。

　薬草を挟めば『治癒ヒーリング』、ルフレオから習った話だと、治癒魔法の１番簡単な初級魔法だ。主に切り傷などを癒すのに使う。

　解毒草を挟めば『解毒デトックス』、解毒魔法の初級魔法だ。ちょっとした風邪なんかは１発で治る。

　初級魔法とはいっても習得するのは難しいそうだ。魔法使いでもどちらかしか使えないとかザラにあるらしい。攻撃魔法が得意な者は両方使えない場合もあるそうだ。その分俺は挟む行為と具材が揃えば使えるので楽だ。

　薬草は常に挟んでいるようにしている。解毒草は少々高価なので、使う時だけだ。話によると南の森の奥には上薬草や毒草、そして火炎草があるそうだ。毒草は危なそうだが、火炎草はぜひ挟んでみたい。マ〇オのファ〇ヤーフ〇ワーだ。焼きバーガーになれるかもしれない。

　こうしていきなり行き詰まった俺は、思考を草から離した。草に固執する必要はないのだ。次に考えたのは、産まれた時に既に挟まれていた肉だ。やっぱりハンバーガーを名乗るならばパテを挟まなければなるまい。

　５歳の誕生日に、丁度ヤギっぽい動物の肉が手に入ったので、セニャンにオネダリしてパテにして挟んでもらった。特に魔法が使えるというわけではなかったが、なんと体力が増えたのだ。力も増して、家を１０周しても一緒に挟んだ薬草が萎びなかった。

　つまりパテには素で体力増量効果がある。そしてほかの具材の消耗が止まるので、動き回って薬草をダメにすることがなくなる。薬草でもそこそこ動けるが、これはいざという時に使えそうだ。使用後のパテはもったいないので焼き直してウィルに食べてもらった。

　こんな検証作業ばかりで、５年だ。あとは筋トレ、否、パントレしかしていない。俺は本を閉じてテーブルから飛び降りる、そして玄関まで跳ねて移動する。体も大きくなった、産まれた時は５０ｇだったが、今では１００ｇを超えた。体を力ませて硬くすることができるようになった。全身を力ませればそれなりの硬さになる。まだパンの域を出ないが。

　さ、まとめはこのくらいにしてデートに行こう。誰とかって？ アイナとさ。