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一章『レタス編』

第24話 土下座バーガー

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「おお! 勇者様が帰ってきたぞ!」

 タスレ村に帰った俺とアイナは村人たちに手厚く歓迎される。自分の住んでいる村だというのに、それでも照れてしまう。アイナも凛々しい表情を保っているが、頬が赤くなっている。

 村長に馬を返して上薬草の入った籠を渡す。役目を終えた俺たちは両親のところに向かった。俺は上薬草からすぐに魔法を使えるので、まずは俺とアイナの父親を治療することにしたのだ。

 上薬草からは上級治癒(ハイヒーリング)が検出されているので、どんなもんかと、試しにウィルに使ってみたところ、たちまち元気になった。

「うおお! なんや、怪我する前より元気なった気ぃするわ!」
「ハッスルしんとき、恥ずかしいで。2人ともホンマありがとうな」

 魔法の確かな手応えに安堵しつつ、次に俺はアイナの父イシルウェに上級治癒(ハイヒーリング)をかける。イシルウェは腕のギブスを外して肩を回している。手を握り痛みがないか確認している。

「バーガー様、治療してくださって、ありがとうございます」
「いえ、アイナが頑張って手に入れた上薬草ですから、アイナも褒めてやってください」
「そうですね。アイナ、よくやったね。バーガー様にちゃんと仕える事ができたみたいだね」
「そんな、結局バーガー様に助けられてばかりでした」
「アイナちゃん、そういう時は素直にありがとうございますでいいんやで、頑張ったのは、あたしらもよぉくわかってるで」
「は、はい! ありがとうございます!」
「ま、礼を言うのはワイらなんやけどな! ふへへへへ!」
「何笑っとんねん、治ったなら、魔物の死体を片付けるの手伝ってや。男手が必要なんや」
「おう! じゃ、バーガー助かったでホンマ!」

 ウィルたちを見送って俺は村のことを考える。村にはまだ魔物の死体や、壊れた柵の問題もある。上薬草だって殆ど使ってしまうだろうし。課題は山積みだ。

「バーガー様」
「アイナ、どうしたの?」
「火炎草は使わないと傷んでしまうので、近くの街で火属性付加(エンチャントファイヤー)のポーションに加工してもらってはどうでしょうか?」
「それって1枚からでもできるのか?」
「はい、1枚につき1本だったと記憶しています」

 俺は挟んでいる火炎草に意識を向ける『火炎草から火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)を検出、1回使用可能』紫猪の時はここで区切ってしまったが、すぐに『火炎草から火属性付加(エンチャントファイヤー)を検出、3回使用可能』とでた、どうやら同じ具材から複数の能力が使える場合があるようだ。

 しかし火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)を使った時、火炎草は萎びてしまった、つまり火属性付加(エンチャントファイヤー)は使えなくなってしまう。複数の能力があってもどちらかしか使えないのだ。この場合、ブレス1発がエンチャント3発分となる。小難しい話だが大事な事だ、覚えておこう。

 紫猪(パープルボア)の時は一つだけだと思っていたため、確認していなかったが、次からは解析をしっかりしよう。

 それにしても、なるほど、確かに備蓄してある薬草だって定期的に入れ替えているしな。ファイヤーバーガーになれないのは残念だが、ポーションにしてもらった方が得策だ。

「わかった、俺が街に行けばいいのか?」
「いえ、往復する行商人に頼んでみます」
「上薬草とか解毒草もポーションにしてもらったらいい」
「そうしたいのは山々なんですが、ポーションを作るのには結構お金がかかるので······私のお小遣いだと、その、1本が限界で······」

 アイナは自腹を切るつもりだったのか! なんていい子だ! そうだ嫁にしよう。この俺を醜いバーガーに変えた女神(まじょ)を倒し、今こそ呪いを解こうではないか! なんてな。

「アイナは出さなくていいよ、そういう時の勇者特権だ。村長に頼んでみるよ」
「はい、ですが村も困窮しているので、あまり無茶は」
「大丈夫、大丈夫、なんとかならぁ!」

 その後、俺は村長に土下座、否、土下座バーガーになってお願いした。速攻OKがでた。

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