現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

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二章『パテ編』

第29話 転バイヤー

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「お、街が見えてきたにゃ。お前らも早く来てみろ」

 先導していたエリノアが丘の上から俺たちを呼ぶ。丘に登ると、大きな街が眼下に広がっている。

 ベツキャ村を出てから数日、俺たちはマオタ街に到着する。村とは比べもにならないほど大きい。まっすぐ進んでも1日では反対側までたどり着けないだろう。それくらい丘から見た街はデカい。

「おお、2人とも田舎(いにゃか)者らしい、いい反応だにゃ。ここら辺には、街はこの一つしかないからにゃ、規模もそこそこ大きくにゃっているよ」
「なんだか緊張するな」
「勇者にゃんだからどうどうとしていればいい、さ、行くよ」

 兵士たちも俺のことは聞き及んでいたらしく、すんなりと街に入れることになった。丸太で組まれた大きな扉が内側に上がっていく。やはり警備も厳重になっている。街を囲む柵も、柵というより城壁のようになっている。

「それじゃ、ミーは街の連中に用があるから行ってくる」

 宿をとると、エリノアは真っ先に行ってしまった。ベツキャ村の時もそうだったが、なんだか怪しい。俺がいつまでもエリノアの背中を目で追っていたので、アイナが声をかけてきた。

「バーガー様、エリノアがどうかしたのですか?」
「なーんか、怪しいなって」
「私もちょっと思ってました」
「ジゼルはなんか知ってるか?」
「······知らない」
「そっか、じゃあ追うか」

 エリノアを追跡することにした。方向感覚が抜群のアイナがいるので迷子になることは無いだろう。それにしてもエリノアはベツキャ村の時といい、何してるんだろう。

 エリノアはどんどん人気の多いところに向かって歩いていく。やましいことをするなら人目を憚るはずだが。

「さー! 買った買ったー! 今だけのグッドプライスだよー!」

 人でごった返しているメイン通りで、エリノアは露天に風呂敷を広げて商売を始めていた。

「あれは、お店を開いているんですか?」
「そうみたいだな」
「エリーは冒険者だけど、商人もやってる」
「なるほどな、俺たちが休んでる間に一稼ぎしていたわけか」

 副業NGなのでは? いや、まぁ、仕事はちゃんとしてくれているから、文句はないけど。それにしても何売ってるんだろう。

「アイナ、何売ってるか見えるか?」
「んー、ここからだとちょっと人混みに隠れて見えません」
「見に行ってしまえばいい」
「あ、ちょっとジゼル」

 ジゼルはスタスタと人混みに突っ込んでいく。アイナも俺を肩に乗せて見事な体捌きで人混みをかわしていく。

「にゃっ!? ジゼル、にゃんでここにいる!」
「エリーこそ、何してるの?」
「······にゃはは、これはその」
「エリノア、何を売ってるんですか?」
「げ、2人まで」
「これは······」

 巻物だ、巻物が売られている。中には一体何が書いてあるんだ。

「それ私が書いてエリノアにあげた魔法陣の巻物(スクロール)」
「にゃははー、ホントすんませんっした!」

 土下座は異世界でも共通らしい。見事な土下座だ、惚れ惚れする。と、どうやらジゼルから貰った巻物(スクロール)なるものを売っていたらしいな。魔法陣が書いてあるとなると価値はどうなる? 俺の体にも魔法陣が書いてあるから、少し気になる。

「にゃ、にゃあ、ほんとに反省してる、マジで反省してる、だから許して欲しいにゃ」
「別に構わない、それって売れるの?」
「もうそれはそれは、ボロ儲けだにゃ」
「ならいい、エリーも大変だから」
「ほっ」

 どうやらエリノアは許されたらしい、これからも商売が続けられそうで胸を撫で下ろしている。

「その巻物(スクロール)に魔法陣を書いてどうなるんだ?」
「これに魔力を流せば、誰でも魔法が使える」
「マジかよ」
「書けるのは、私とおじいちゃんと、他の魔導師だけ」

 あれれー? 俺でもわかる、それは高く売れる。エリノアが売りさばくのも頷ける。というかそれだけで人生安泰じゃないか!

「ジゼルから許可も出たし、大々的に売りさばくことができるにゃ!」
「······」

 正義感の強いアイナの視線がエリノアに刺さる。

「アイにゃ、そんにゃ目で見にゃいでほしいにゃ、それにさり気にゃくみんにゃに還元しているんだよ」
「何にですか?」
「肉、美味しかったよにゃ? 王様から貰った路銀じゃあんにゃ物は食えにゃいよ!」
「で、でも、それだけじゃ」
「なら仕方ないな!」

 なお食い下がろうとするアイナを俺は止めた。

「バーガー様?」
「仕方ないさ! ジゼルも許しているんだ、何も問題は無い!」

 別に魔物肉をもっと挟みたいとかそんな邪な気持ちはないよ?

「バーガー、胃袋を掴まれてる」
「え! 本当ですか! バーガー様?!」
「いやいやいや、アイナの薬草も美味しいよ?」
「あれはただ挟んでるだけじゃないですか!」
「ふふん、ミーの料理に勇者もイチコロにゃのよさ」

 これで話はついたと思ったその日の夜、問題は起こった。

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