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二章『パテ編』
第36話 蜥蜴軍団4
しおりを挟む早朝になっても蜥蜴たちは攻めてこなかった。村人たちの与えたダメージが予想より大きかったのか、それとも今この瞬間にも襲ってくるのか。そんなことは奴らにしか分からない。俺たちは朝食を済ませて、村長のところへ向かう。
「もう行かれるのですか?」
「ああ、貴方たちが与えたダメージが癒える前に攻める。今度はこっちの番だ」
「奴らのアジトは見つかったのですか?」
「ミーが見つけたよ」
「そうですか、なら私も近くまで荷物を運ぶのを手伝いましょう、何か持つものはありますかね?」
「無い、非戦闘民は戦闘の邪魔」
「ジゼルは言いすぎにゃ、もっとビブラートにだにゃあ」
「それを言うならオブラート、ビブラートはこう、あぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ」
「······とにかく、貴方たちは村の守を固めていてくれ。あとは、俺たち勇者の仕事だ」
「分かりました、ご武運を」
その後、俺たちはツナコマ村を出て、エリノアが見つけた砦へと向かう。
しばらくは魔物とも出会わずに順調に進んだ。
「昨日はここら辺に蜥蜴盗賊(リザードシーフ)が見張りをしていたから気をつけるんだよ」
「あ、見つけました、蜥蜴盗賊(リザードシーフ)です。射ますか?」
「どうしようか」
「どうせ、みにゃごろしだにゃー」
「そうだな、アイナ頼む」
「はい、射ました」
「また仕事を取られちまったにゃ。んじゃ、死体を茂みに隠すかにゃ」
「あ、私も手伝います。まずは矢を抜いてから」
和気あいあいとしてるけど、やってる事は死体の隠蔽工作なんだよな。状況が状況だから、おかしいとは思わないけどさ。
村を出て3時間。蜥蜴たちがいる砦に到着する。丘の上に建てられた砦だ。周囲は沼地に囲まれている。周りは原っぱで木もまばらにしか生えていない。いかにも蜥蜴が好みそうな立地条件だ。正門前の掛けっぱなしの橋が砦への唯一の入口となっている。正門の扉は閉ざされている。
見張りの蜥蜴盗賊(リザードシーフ)を数体射殺し周囲の安全を確保する。茂みの多い木の影に隠れて俺たちは様子を窺う。
「作戦はこうだ。まず砦から顔を出している蜥蜴からひたすらにアイナが射殺していく。矢は皆で持ってきたから100本以上あるからアイナは存分に射ることに集中してくれ。持ちきれない矢はここに置いて、固定砲台になった気持ちで射まくるんだ」
「わかりました。だからこんなに矢を持ってきたんですね、1人じゃ持ちきれないなーって思ってたんです」
「ああ、もし敵が来たら矢筒に入っている矢以外は捨てて下がってくれ」
「わかりました」
「次だが、奴らも攻めてくるだろう。それは俺とエリノアで食い止める」
「バーガーも前線で戦うのか、大丈夫にゃのか?」
「これでも某スライム並には動けるようになったんだ」
「スライムってあの不定形の凶悪にゃ魔物のことか? とてもあれが機敏だとは思えにゃいが」
「······話がそれたな、アイナの援護射撃もあるから、そう簡単には捕まらないはずだ」
「任せてください、バーガー様は私がお守りします!」
「頼りにしてる。最後にジゼルだが、正直なところ配置に困ってる。魔法はそうポンポン使えないよな」
「使えないんじゃなくて、使わないだけ。分かってる、今回は簡略魔法も必要とあらば使う。総魔力量も魔導師の中では多い方だから気を使わなくていい、ちゃんと作戦に組み込んで」
「分かった、ならアイナの横にいて、俺たちを魔法で援護してくれ」
「オーケー」
「ふーん、突拍子もにゃい容姿からは想像もつかにゃい、ぶにゃんにゃ陣形だにゃ」
「そりゃもちろん、命大事に、だからな」
次は装備の確認だ。
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