現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

文字の大きさ
39 / 1,167
二章『パテ編』

第39話 蜥蜴軍団7

しおりを挟む


 蜥蜴剣士(リザードソードマン)たちの装備は片手剣以外バラツキがある。

 胸当てを付けていたり、籠手を付けていたり。俺に襲いかかってくる、蜥蜴剣士(リザードソードマン)は鉄兜を装備している。アイナの矢が頭部にヒットするも、鉄兜に拒まれる。

「アイナ大丈夫だ! こいつは俺がやる!」

 矢が再び屋上に飛んでいくのを見て、俺は目の前の敵に集中する。蜥蜴たちの身長は2m近い。特に剣士タイプは腕が太い。生前の俺に比べたら貧弱だが、それでもその腕から繰り出される剣撃は強いだろう。

 俺はハンバーガーの手軽(フットワーク)さを活かして絶え間なく動き回る。蜥蜴剣士(リザードソードマン)は首を動かして俺を目で追う。魔法陣が傷つけられれば俺は意識を失い、それは致命的な隙となる。だが折角の機会だ、なるべく魔法は温存してこの短剣だけで戦いたい。

 俺は蜥蜴剣士(リザードソードマン)の背後に回り込み横回転して急速接近する。跳ね上がった俺は蜥蜴剣士(リザードソードマン)の背中を斬りつける。蜥蜴剣士(リザードソードマン)は前方によろめくものの、硬い鱗に阻まれ肉まで刃が通らない。

 今の俺の力ではエリノアのように鱗を切断することはできない(ジゼルの強化魔法ありきでこれだ)、だが鱗で覆われていない箇所を狙えば······。さっき斬れた時は足首の裏側だった、関節部分は駆動するために鱗が少ないのだ。

 蜥蜴剣士(リザードソードマン)は、俺を狙い剣を低く振るい始める。この程度ならアイナとの鍛錬で経験済みだ。むしろアイナの剣の方が断然早い。

 俺は飛んだり跳ねたりして剣をかわす。いきなり頭を狙えば、高く跳躍したところを剣で斬られる。ならば跪かせるまでだ!

 まずは膝裏を狙う。膝裏は鱗が少ない、あそこなら斬れる!

「ぐっ!」

 その時、俺の頬に衝撃が走る。蜥蜴剣士(リザードソードマン)の尻尾攻撃だ。尻に集る蝿を払うように、俺は無様にも鞭のようにしなる尻尾に直撃してしまったのだ。

 俺は吹き飛んだまま飛び退き距離をとる。蜥蜴剣士(リザードソードマン)は舌をチロチロさせて俺ににじり寄ってくる。強い、エリノアがバッサバッサと斬りまくっているから弱く見えるが······、村人たちが勝てないわけだ。ましてや俺はハンバーガー。俺は自身の未熟さに更なる鍛錬を誓い動き出す。

 斬撃とは違い、尻尾攻撃では魔法陣は傷つかない。ならば実質ノーダメージのようなものだ。ノーカンだノーカン、なにせ俺はハンバーガー、脳震盪を起こすための脳みそも持ち合わせてはいないのだからな!

 俺は再度チャレンジする。次は尻尾にも注意を払う。ちゃんと見ていれば振り子のように動いているだけだ、掻い潜ることなど容易い。そしてウィルの短剣で蜥蜴剣士(リザードソードマン)の膝裏を斬りつける。

 蜥蜴剣士(リザードソードマン)は短い悲鳴をあげると、斬られた方の膝を地面につく。やった! 膝裏を斬ってやった、腰の入っていない剣など恐るるに足らぬわ! 俺は蜥蜴剣士(リザードソードマン)を正面から襲う。肘を狙うと見せかけて、鉄兜の隙間から見える目を狙う。

 蜥蜴剣士(リザードソードマン)の左目に短剣を突き刺す。蜥蜴剣士(リザードソードマン)は暴れ悶える。捻って脳みそを破壊する前に鉄兜が外れ短剣も落ちてしまった。左目を手で押さえて、こちらを睨みつけてくる。俺は短剣を拾って反撃に備える。次の攻撃をかわし、とどめを刺す。俺がそう決心した、まさにその時。

「なっ!」

 俺は知らなかった。追い詰められた敵が死力を尽くして襲いかかってくるということを。剣を捨て、口を大きく開き、俺にかぶりつこうとしてくる。窮鼠猫を噛む、否、窮蜥蜴ハンバーガーを食べる、とはまさにこの事だろう。敵の思わぬ行動に俺は硬直してしまった。かわせない。俺は力の限り叫んだ。

「アイナ!!」

 その瞬間、蜥蜴剣士(リザードソードマン)の右目、眉間、喉にそれぞれ矢が生える。そのまま大きくのけぞり仰向けに倒れる。足がピクピクと痙攣しているが、どうみても即死だ。

 アイナのいる茂みの方に振り向くと、テンポよく矢が茂みから放たれ続けている。······3本同時? いや、一瞬ズレがあったな速射か。

 アイナさん、どっかのVR女神(VRをこよなく愛する女神の略)より、女神してるよ!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった

黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった! 辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。 一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。 追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...