上 下
41 / 1,167
二章『パテ編』

第41話 蜥蜴軍団9

しおりを挟む


「退路がない」
「はぁ、Eランクの依頼をこなしていたら小龍(ワイバーン)が出た気分だにゃ」
「バーガー様、どうしましょう?」

 俺たちは砦の1階部分にいる、1階は吹き抜けとなっている。端にある石造りのテーブルの上には大きな地図が1枚あるだけで、他には家具も調度品も何も無い。

 砦内部に蜥蜴は残っていなかった。正門の鉄扉を閉めて一息ついている状態だ。それにしても判断を誤ったな。これじゃあ袋の鼠、否、袋のハンバーガーだ。このままでは奴らに美味しくテイクアウトされてしまう。

「どっちみち、いい判断にゃんてにゃい状態だったにゃ。敵の戦力を見誤ったミーらのミスだよ、ていうか分隊があるにゃんて思わにゃいだろ」
「この扉もいつまで持つか分からない」
「バーガー様······?」

 アイナが不安そうに俺を見ている。そんな顔をさせてしまうとはな本格的に勇者失格だ。さて、勇者として、一漢として、この局面どう乗り切るか。

「この砦内で使えるものを探そう」
「やっぱり矢が欲しいよにゃ」
「そうですね、もう矢筒に入っている分しかありませんので」
「私は屋上に行く、ちょっとやることがあるから」
「ジゼル、何をする気だ?」
「魔法陣を書けるか確認する」
「分かった、じゃあ残りは砦内を漁るぞ」
「おおー!」

 数十分して、俺たちは屋上に集合する。

「矢が300本だにゃ」
「随分と多いな」
「蜥蜴弓士(リザードアーチャー)を射られる前に仕留めていたので、そのせいかと」
「なるほど。物資は上場だな、じゃあ早速、ここから目に付く蜥蜴を射殺していってくれ」
「はい!」

 俺も屋上から下の様子を見る。蜥蜴たちのグループが幾つもある。扉前にもかなりの数が集まっている。鉄製の扉なのでそう簡単には破られないと思うが、やはり不安だ。

 蜥蜴の数は······、100頭はいるな。ってなんだあれ、1頭だけ3mくらいのデカイのがいるな。装備も片手剣と盾を持っている。防具も全身鉄製のもので覆われている。明らかに別格だ。

「あれは蜥蜴剣聖(リザードソードマスター)だにゃ、ボス格がいにゃいと思っていたけど、あいつがボスで間違いにゃいよ」
「強いのか?」
「ちょっと強いにゃ、王国聖騎士の一般兵よりは数段強にゃ」
「そうか」
「あいつの相手は小龍(ワイバーン)殺しのミーに任せるんだにゃ」
「分かった任せる」

 俺は蜥蜴たちから目を離して、ジゼルに目を向ける。膝をついて屋上の床にチョークのようなもので魔法陣を書いている。

「魔法陣は書けそうか?」
「この床の硬度と広さなら問題ない、あと30分で仕上げる」
「どんな魔法なんだ?」
「雷系の範囲魔法、この砦の周りに雷撃を落とす」
「わかった、最高のヤツを頼む」
「オウイエ」

 魔法陣のことを考えると引きこもって良かったのかも、矢も残ってたし、冷静になって考える時間ができた。

 やはりヒキニート最強。

しおりを挟む

処理中です...