44 / 1,167
二章『パテ編』
第44話 蜥蜴軍団12
しおりを挟む俺は通風口から出ると、3階の吹き抜け部分から階下を見渡す。
いた! 蜥蜴盗賊(リザードシーフ)が数体、1階の正門とは反対側の壁を破壊して侵入している。
そういえば村人が蜥蜴盗賊(リザードシーフ)に裏取りをされて火をつけられたと言っていたな。得意分野ということか。
「ふん、勇者であるこの俺の前に立ったことを後悔させてやろう」
俺は3階の屋上に続く階段前に陣取る。ここからしか屋上には行けないので、ここを死守すればアイナとジゼルが不意打ちをされることは無い。例え正門を開けられてもエリノアが居れば蜥蜴たちはなだれ込んでは来ないだろう。今の俺の役目はここで蜥蜴を通さないことだ。
俺が気張っていると蜥蜴盗賊(リザードシーフ)たちの最後尾に3mある蜥蜴の姿を見つける。予想していたがあれは蜥蜴盗賊(リザードシーフ)の上位互換、蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)だろう。忍者走りで階段を駆け上がってくる。蜥蜴盗賊(リザードシーフ)の数は10頭、そしてボスが1頭。
蜥蜴たちは俺のいる通路に着くとナイフを構える。半円を作って俺を包囲する。囲まれないのは階段を背にしているからだ。砦が大きいので通路も広い。通路の中心に行けばたちまち包囲されてしまうだろう。
それもまたよし、俺は通路の中心部分に移動する。蜥蜴たちは自分たちが有利な位置に着けるので俺の邪魔をせずに後ずさりして包囲を完成させる。俺を囲む10頭の蜥蜴。蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)だけは、奥の方で佇んでいる。
蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)の短い鳴き声で、蜥蜴盗賊(リザードシーフ)たちは一斉に俺に飛びかかる。
条件は整った。短剣をその場に置いて、俺は俺の今できる最大の横回転をする。そして力一杯に跳ねる。2mほど飛び上がり魔法を発動させる。
「『火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)』」
火炎の散弾銃は回転により全範囲に及ぶ。俺に飛びかかった蜥蜴盗賊(リザードシーフ)たちの体が吹き飛ぶ。
吹き抜け部分から1階に落下する者、壁に激突する者、反応(リアクション)は様々だが、収束するのは死である。火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)、残り8発。
炎が消えると蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)は距離を詰めて俺の目の前まで迫っていた。ナイフを着地する俺に合わせ走らせる。
「『硬化(ハードニング)』」
ギリギリで魔法が間に合った。しかし衝撃は受ける。俺は吹き飛ばされる。壁に激突して硬い音を発する。どうやら意識までは飛ばされていないらしい。バンズのクラウン部分の表面が少し斬り裂かれているが、こんなものは大した傷ではない。鉄ほどではないがそれなりの硬さになるようだ。
傷から紫色の液体が滴る。ああ、それ毒ナイフなのね、はいはい。
「そんな危ないものでアイナを傷つけようとしていたのか? 万死だ??????貴様に裁きを下すッ! 勇者の俺が直々になッ!」
短剣は奴の足元か、硬化(ハードニング)の効果が残っているうちに決着をつける。俺は堂々と跳ねて距離を詰める。火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)は見られてしまったからな。もう一捻りないとこの手の相手には通用しないだろう。
蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)は距離を取る。俺は短剣を咥える。どうやら硬化(ハードニング)の効果時間が終わるのを待っているようだ。ならば待つか。しばらく睨み合いが続く。
硬化(ハードニング)の効果時間が終了してパンの柔らかさを取り戻す。それと同時に蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)は背を低くして俺に駆け寄る。
「『火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)』」
蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)は火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)を軽々と飛び越えて、俺の背後に着地する。俺はバンズのクラウンの部分のみを素早く回転させる。目標をセンターに入れてブレス!
「『火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)』」
蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)は驚愕をその目に表したが、それは一瞬だ。地面に這いつくばって回避する。本来ブレス系の魔法は連続では使用できない。それは魔力を肺の中の空気と混ぜ合わせて発動させるからだ。タメのクールタイムがある。だが俺はパン、呼吸なんてしていない。具材を挟み念じるだけで女神の魔法陣が勝手に魔法を発動してくれる。
この不意打ちも回避するとは、やはり上級職は格が違う。しかし、面での範囲攻撃はどうかな?
「『火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)』
『火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)』
『火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)』」
蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)も、3連発のブレスを屋内で交わす術など??????あった。
一階にまで続く吹き抜けに飛び降りたのだ。やるな、ならば俺も行くぞ! 俺は後を追って飛び降りる。先に着地した蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)は、エリノアのように上手く着地することもできず、移動せずに、その場で俺を迎え撃つようだ。
「『火炎(ファイヤー)の吐息(ブレス)』」
今度は蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)に直撃する。炎で押し潰される。
俺は爆風で落下速度を軽減して無傷で着地する。急いで蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)の方を見る。
蜥蜴暗殺者(リザードアサシン)は粘土を真上から拳で思いっきり叩いた前衛的なアートのようになっている。どうみても絶命だ。ボス格の一角を崩した! ブレスは残り2発。
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる