現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

二章『パテ編』

第６２話 大喧嘩祭９

　前回までのあらすじ、めっちゃムカついてる。

　俺はカルボが体勢を立て直す前に懐に飛び込む。激怒（レイド）の力（フォース）の効果で移動速度と攻撃力が上昇している。あとめっちゃムカついている。

　カルボは体勢が崩れているのにも関わらず、奇妙な姿勢のまま俺の短剣を杖で防いでみせる。貴重な魔法を使ってまでの攻勢も失敗に終わった。ちくしょう！

　だが悲観してもいられない、激怒（レイド）の力（フォース）の効果が残っているうちに、俺はカルボの周りをジャンクフード特有の手軽（フットワーク）さで動き回る。止まれば恰好の的だ。

「万策は尽きましたか？」
「なんだと！　くそ！」
「いや、そこまで煽ってるつもりは、ああ、激怒（レイド）の力（フォース）の副作用ですか、そんな粗末な魔法を使うなど、そこが知れる」
「貴様ぁーーッ！　よくもそんな酷いことをッ！！」

　今の俺は瞬間湯沸かし器だ、血眼で無謀な攻撃（アタック）をしてしまう。カルボは俺を容易く杖で叩き伏せる。杖に押さえつけられてしまった。

「ぐえーーッ！！」
「挑発が成功しやすくなるから使わないほうがいいですよ」
「『硬化（ハードニング）』」
「ふふ、軟化（ソフニング）」

　カルボが対抗魔法を掛けて俺の魔法を無効化した。

「魔法は中和しました。このまま潰してしまってもよろしいでしょうか？」

　万事休すか??????、すまない皆。まいったする。

「オペペ・チロローン」
「！？」

　カルボがジゼルに顔を向ける、カルボの目は優しげだが、優しいのは表側だけだ。杖越しに伝わってくる力がそれを証明している。

　オペペ・チロローンといえば、あの王国の硬貨のふざけたデザインを考えた芸術家だと記憶しているが。

「貴女は??????ああ、王国魔導師のジゼル・ダグラスさんじゃないですか、いやはやこんなところで出会うとは、国土は広くとも世界は狭いものですね」
「なぜ偽名を使う？」
「あまり目立ちたくなかっただけですよ」
「嘘。ならこんな大会に出場したりしない」
「お金のためですよ、男は稼いでなんぼですからね」
「ダウト。だから詐欺師の真似をしてエリノアを騙した」
「ノンノン、人聞きの悪いことを言わないでください。生活のために必死だったのです」
「チェック。生活に困窮していて、詐欺を働き、選手の飲食物に毒を盛った」
「こじつけも甚だしい、証拠は？ 確たる証拠は？」
「マーク。決勝戦が終わったら私と一緒にＢブロックの控え室に来て、そこで証拠を見つけ出す」
「ほう??????、それは楽しみですね。ならばまずはこのハンバーガーを生ゴミに変えなければなりませんね」
「やってみろ、バーガーは強い。お前は敗北して暴かれる」
「ふ、こんなものに何の価値が」

　わかったよジゼル、そこまで言われて何もしないのは勇者の前に漢じゃない！

「『魂（マテリア）の実体化（ライズソウル）』」

　光が俺を包み込む。