現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

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二章『パテ編』

第87話 モノマ村21

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 来た道を戻り、ジゼルのいる中央を目指していると、先ほど先導してくれた聖騎士たちと出会った。ここら辺の魔物はすべて倒したようだ。聖騎士たちは俺たちに気がつくと馬を走らせて近づいてくる。

「勇者様、モーちゃんはどうなりましたか?」
「まだだ、スーが抑えてくれている」
「スーさんが? では、我々も加勢に」
「ダメだ、絶対に行くな。スーは1人の方が戦いやすいんだ」

 下手すれば君たちもデスマーチに加わりかねないからな。

「他の兵士たちにもそう伝えてくれ」
「わかりました」
「そうだ、中央に向かうなら馬に乗せてくれ。ジゼルに用がある」

 人と魔物の戦闘風景を横目に馬は道の真ん中を疾走する。圧勝のようだ。

 Bクラスの魔物と対等に戦える聖騎士たちがCクラスの魔物を相手取り、その後をCクラス以下の村人たちが束になって抑えている。村人たちは、事前の打ち合わせ通り、ちゃんと1頭につき2人から3人で相手をしている。まぁ当たり前か、誰だって死にたくないもんな。

 気になるのは幻影大鷲(アパリションイーグル)が何故、村の中央に向かったのか、魔物村(モンスタービレッジ)から逃げないという事は、まだ勝算が残っているということだ。

 何をしてくる? モーちゃんが暴れる事を期待しているのか?

 中央付近についた、村の内部まで侵攻が進んでいる。街端には魔物の死骸がいくつも転がっている、噎せ返りそうな血の匂いに眉をしかめつつも、俺たちは馬から降りる。

 広場では戦闘がまだ続いている。アイナは聖騎士から矢をもらい次々に射る。全弾命中。聖騎士たちがポカンと口を半開きにしている。

「バーガー様、いました! 奥の方です」
「よし。兵士さん、ここで待っていてくれ! すぐに戻る!」
「はっ!」

 ジゼルは両手に雷撃の鞭を魔力生成して振り回している。魔物たちが次々に痺れて倒れていく、聖騎士たちが倒れた魔物を槍で突いてトドメを指している。

「ジゼル!」
「バーガー。モーちゃんは?」
「モーちゃんは幻影大鷲(アパリションイーグル)に催眠術を掛けられて、俺たちに敵対してしまっている、どうすれば解ける?」
「簡単(イージー)。催眠解除(リリースヒプノシス)という魔法を掛ければ解ける」

 ジゼルは聖騎士たちにハンドシグナルだけで指示を出して、前線を離脱する。待たせていた聖騎士たちの馬に飛び乗ると、モーちゃんのところに再び戻る。

「ルフレオからはそんな魔法聞いてなかったな」
「おじいちゃんは全てを教えたわけじゃない。なぜならおじいちゃんは超攻撃型の魔法使い、空(メテ)を覆(オレ)う真紅(イン)のルフレオ・ダグラス。治癒魔法や状態異常に対する抵抗魔法は一切使えない」
「そうだったのか」
「その事は後でいい。早くモーちゃんのところに私を案内して、モーちゃんが聖騎士に殺される」
「それが······」

 俺はモーちゃんの急成長を説明した。ジゼルは怪訝そうな顔をして顎に手を当て目を伏せて何かを考えている。少しして思い当たる節があるのか、ジゼルは顔を上げる。

「魔物の成長には魔力が必要。魔力の濃いエリアに強い魔物が湧くのは、集まってくるからではない、もちろん強い者が他所から来る場合もあるがそれは少数。そこにいる魔物が強くなる」
「なるほどな、来るんじゃなくて、そこにいるから強くなるのか。ここが魔力の濃い場所ってのは知ってるが、他にもCクラスの魔物がわんさかいただろ? アイツらが成長しないのはなぜだ?」
「すでにあれが成長した姿か、数が多い場合、成長に必要な魔力が分散されてそこまで成長が早くならないか、原因はいくらでも考えつく」
「それならモーちゃんだけが急成長したのは? 2週間で育つタイプの魔物なのか?」
「そんなわけがない、斧牛(アックスブル)は成牛になるのに1年とも2年とも言われている。まだモーちゃんは生後半年くらい。有り得ない」

 ジゼルの鋭い目が更に鋭くなる、少しイラついているようだ。

「もしかしたら、魔力を注入された可能性がある」
「魔力を注入?」
「上位の魔物には自身の魔力を注入して自分の眷属を強化することがある」
「眷属って、モーちゃんの親はもう討伐されたんじゃ?」
「広い意味での眷属、血の繋がりがなくても子分に魔力を注入するケースはある」

 ジゼルは「でも、それにしたって」と続け、不穏なことを口にする。

「Aランクの魔物を成熟させることが可能なのは、Sクラスの魔物だけ」
「おい、それって······」
「バーガー様! 前を見てください!」
「な、なんだ!?」

 モーちゃんのいた辺りが爆発した。
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