現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

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二章『パテ編』

第116話 キラーキラー10

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「村が見えてきたよ」

 エリノアが小声で言った。俺たちも警戒しつつ進む。

「明かりはついてないですね」

 夜間は松明に火をつけて、見張り台に人を置くのが一般的な村の夜の姿だ。なのに明かりが一切無い。異常事態だ。

「みんな避難したんでしょうか?」
「どうだろうな、村の中に入ってみないことにはなんとも言えないな」
「そうだにゃ、それに小龍(ワイバーン)の姿を確認してからじゃないと迂闊に動けにゃいにゃ」

 そう、小龍(ワイバーン)がいないのだ。空を飛んでいれば夜とはいっても月明かりで存在は確認できるし、獰猛な気配がまるでない。

「小龍(ワイバーン)はいないのか?」
「今はいにゃいみたいだにゃ、でもここにいたのは確かだにゃ、龍の残り香がするよ」

 静まった村に、小龍(ワイバーン)の残り香。最悪の事態になっている可能性が、······そんな俺の考えを否定するようにジゼルが口を開く。

「建物が一切焼けていない、燃えた匂いもしない」

 確かに外から見た限りじゃ柵が壊れている様子もない。しかし入口は開きっぱなしだ。

「もう避難したあとなのではないでしょうか?」
「そうかもしれにゃいにゃ、ん?」

 エリノアはなにかに気づいたように立ち上がると、村の入口から堂々と中に入っていった。

「お、おい待て!」

 俺たちもその後を追う。

 エリノアは適当な民家の入口の前で止まるとノックする。

「おい! 何やってるんだ!」
「んー? いやにゃ、人の気配がしたから、ていうか周りの家全てに人の気配がするよ」
「なに!?」

 俺はクラウンを高速回転させて辺りの情報を得る。しかし、どの家も無人のように見える。

「埒が明かにゃいにゃ」

 エリノアは懐から針金を取り出すとドアの鍵穴に入れてピッキングを開始した。

「開いたにゃ、お邪魔するよー」
「だ、誰ですか!?」

 本当にいた、第一村人発見だ! いたのは50代くらいの夫婦だ。部屋の隅で怯えたようにこちらを見ている。

「まーまー、そんにゃに怖がらにゃいでほしいにゃ。強盗じゃにゃいよ、ほらバーガー」
「ああ、俺は勇者だ」

 俺の姿を見た夫婦は「マジでハンバーガーだ!」と口々に呟き、雰囲気が怯えから一気に明るいものへと変わる。

「周りのは勇者パーティの面々だ。パンフライ街に現れた小龍(ワイバーン)がこっちの方に向かって飛んでいったから駆けつけた」
「おお、そうでしたか。確かに小龍(ワイバーン)は現れました」

 やはりこの村だったか。
 この村の名前はギムコ村と入口の看板に書いてあったか。

「それで小龍(ワイバーン)はいまどこに?」
「小龍(ワイバーン)は昼前に現れました、逃げることも叶わないと判断した村長が、家の中で閉じこもるようにと指示を出したので······我々は家の奥にいたので分かりません」

 昼前だと、奴らが現れたのは日が傾いてからだ。その間、小龍(ワイバーン)たちは村も襲わずに何をしていたんだ?

「勇者さま、小龍(ワイバーン)はまた来るのでしょうか?」
「分からない、今は判断材料が足りないからな。そうだ、パンフライ街に少女が助けを求めてきたんだ、きっとこの村の子供だろう」
「子供がですか? 村長から外出禁止令が出ているのもありますが、小龍(ワイバーン)が来るかもしれないのに、親がいる家庭は子供にそんな危険な事をさせないでしょう。······もしかしてヒマリの事かもしれません」
「ヒマリ?」
「はい、早くに両親を亡くして、前までは年の離れた兄がその子の世話をしていたのですが、その兄も王国の騎士になったとかで、今は1人で暮らしているはずです」
「なるほど、兄に似て正義感の強い、勇気のある人物に育ったってわけだな」

 どうして王国に一緒に連れていかなかったんだろう。

 俺はそれ以外にも違和感に気づいた、少女ヒマリの言葉を思い出す。

『魔物が、村に、おにぃちゃんが······』。

 ヒマリの兄が来ていたのか? このタイミングで? 騎士が単独で行動するなんて事はまずないし、もし休暇で来ているのなら、村人ならば知っているはずだ。どういう事だ?

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