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二章『パテ編』
第145話 夢見バーガー(前)
しおりを挟む気がつくとそこは白い空間だった。
辺りを見渡して俺は状況を把握する。
また女神のところか。俺の頭は少しずつ覚醒していく。
いや、それはおかしい。俺は確か王国について、それから今日はもう遅いからって、宿をとって眠ったはずだ。
魔法陣は傷つけられていない。いや、まさか寝ている間に何者かに攻撃されたのか? 襲撃か!
だとしたらアイナたちは無事だろうか。
ここから異世界を確認する手段なんてない······。ちょ待てよ、あったな見る方法。
俺は山ずみにされたテレビの山に近づく。以前よりもさらに砂嵐を映すテレビが増えている。この人たち死んだってことだよな。
もし俺のテレビも砂嵐になっていたら······。
精神体だがゴクリと唾を飲み込む。
俺は探す自分のテレビを······。
俺のそんな心配もよそにテレビはすぐに見つかった。他のテレビがブラウン管なのに対して俺のだけ薄型テレビだからな。
「映ってる」
ひとまず安堵した。
画面は薄暗くてよく見えないが、砂嵐ではない。つまりまだハンバーガーの体は生きているということだ。
最悪の事態ではないことを確認した俺は胸筋を撫で下ろす。そして次の疑問が浮かぶ。
ならどうして俺はここに? 俺の思考がそこまで達した時、真上から声がした。
「緊急事態じゃ」
「女神」
女神は俺の真上にいた。って、なに然もありなんといった風に空中浮遊してんねん!
「そのテレビの山を見てみよ、何か気づいたことがあるじゃろう」
「ん? ああ、砂嵐が多いよな」
「そうじゃ、問題発生じゃ」
「砂嵐ってことは、その世界に転生した人間は死んだってことでいいんだよな?」
「察しがいいの、脳みそまでは筋肉になっていないようじゃな」
「残念なことにな」
「残念なのか······。まぁよい、転生させた者が死のうがどうしようが、余は娯楽として楽しんできたから、それは別にいいんじゃ」
「ゲスぅ」
「しかし今回のは違う。転生させた人間たちが狙われておるのじゃ」
「狙われているだと」
「そうじゃ、厳密に言えば余を直接狙えない臆病者めらが、布石、足がかりとして、余の玩具にちょっかいを出し始めたというわけじゃな」
「どうして女神が······いや、思い当たる節が多すぎるな!」
「え、なんでじゃ! 余が何をしたというのじゃ!」
「そういうとこだよ! 少しは反省しろよな」
「あれから殺して転生させるのはやめたのじゃー、本当じゃぞ」
「でも、それまでにやったことが不味かったんじゃないのか?」
「······」
「それに女神は強いんだろ? 神なんだから全知全能なんだろ? その臆病者って人を直接始末しないのか?」
「物騒な奴じゃのぅ貴様は、筋肉を得るとここまで野蛮になるものかの」
「野蛮さについてだけはお前に言われたくねぇよ!」
「ふふ、ま、やりたいのは山々じゃがの、色々と、その、面倒なのじゃ!」
「まさか、ここから出たくないとか、そんなオチじゃないだろうな」
「ギクッ!!」
「図星かよ!」
俺もヒキニートだったから、気持ちは分かるけどさ。
「というわけで! これから貴様は、余と敵対する神が遣わせた使者と戦ってもらうわけじゃがー」
「ちょっと待てぃ! いま神と言ったか! 神って言ったよな!? 女神みたいなとんでもない奴が相手なのか!?」
「ん? そうじゃよ」
「マジですかッ!」
「安心するのじゃ、そう怖がるな、よしよししてやろうか?」
「あ、いや、今ので落ち着いた」
「落ち着くなよ······つまらぬ奴じゃなぁ。まぁいい。そう心配するな向こうも直接手を下してきたりはせん」
「そうなのか?」
「だから使者を送り込むのじゃ。それにあの異世界のルールは余が作ったものじゃ。余が作ったということはつまり、絶対普遍のエキスパートルールというわけじゃ、神の使者にもそれが適応される」
「というと?」
「向こうも人ではない何かに転生する、ということじゃな」
「······それはご愁傷さますぎるぞ!」
俺と戦う前に死ぬんじゃないか?
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