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三章『ギア編』
第148話 異世界転生しても歯車だった件
しおりを挟む「しゃかいのーはぐるまぁー、しゃかいのーはぐるまぁー」
気づけば俺は盛大に産声をあげていた。オギャっていた俺を遠くから見つめるアホズラがこっちに近づいてくる。なんだこいつ、骸骨が服着て歩いてやがる、ミディアムレア火葬でもされたのか?
「貴方が予言の魔物ですか?」
「あ? 死人が喋るんじゃねぇよ」
「すでに言葉を解し発するとは、素晴らしい才ですね。おっと自己紹介がまだでしたね。私はホネルトン。魔王軍で九大天王の1人を務めています」
九大天王だぁー? それに魔王ときたか、俺はガキの頃しかゲームやったことねぇから、詳しいことはわからねぇけどよぉ、魔王といやぁ、ド〇クエの話か? 九大天王ってのはなんだ?
「貴方の名前は?」
俺は危うく自分の名前を言いそうになった、どう見てもここは日本じゃねぇ、転生したのを気取られても面倒だ。
「バカがなんで産まれたばかりの奴に名前を聞くんだ?」
「そうでした。じゃあ私が名付け親になってあげましょう。······ギア・メタルナイツ。なんてどうでしょうか?」
なんだその長い名前は、ふざけんなもっと短いのにしろ。早く書ける名前にしろ。あ行の名前にしろ、タイピングする時間を削れるあ行にしろ!
俺は抗議しようと体に力を······って、なんだ、体が動かねぇ。どうなってやがる。
「鏡を見ますか? 産まれたばかりで簡単には動けないでしょう、ほら」
ホネルトンが持つ手鏡を俺は見る(目は動かせる)。鏡を見た俺は年甲斐もなくアホな声を出した。んだこれ、歯車か? 手のひらサイズの歯車に、目が2つついてやがる。
「さっき名前を聞いたのにはわけがあって、無機物系の魔物はたまに生前の記憶を持って産まれる場合があるのです」
「生前の記憶?」
「そう、ギアも怨霊だったはずです。それが古い歯車に取り憑いて魔物化したのです」
なるほど、そういう風に解釈しやがったか。
「そして、貴方は予言の魔物なのです」
「予言の魔物だぁ?」
「勇者と同時に生まれる、勇者と相対するもの、勇者の反語、絶望をもたらすもの、人呼んで絶者」
「絶者ねぇ」
「以前、大規模な儀式を行いました、そこでそう予言されたのです。貴方には絶者の可能性があります」
あの人形といい、このカルシウムの化身といい、流されているような気がしてイラつくが、気になることは聞いておいてやるか。ろくでもない気はするがな。
「それで俺の仕事はなんだ?」
「勇者を殺していただきたいのです」
嫌な予感が当たっちまったぜ。フ〇ック。
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