151 / 1,167
三章『ギア編』
第151話 レイラ・クラヴィッツ
しおりを挟む玉座の間から出た俺にホネルトンが話かけた。
「ふぅ、魔王様が寛大な方でなかったら、いまごろ私たちは肉片も残らずに消されていましたよ」
もともと骨しか残ってないだろ。なんてツッコンでる時間はねぇ。
上手いこと魔王に話をそらされちまった。また次に会った時に資金や物資の話をしよう。
と、一つ損失を出しちまったな。
「ホネルトン、その腕は治るのか?」
「治ります」
「なら早く治せ」
「なりません。魔王様がお与えになった罰なのですから。魔王様の許しが出るまで治すことは許されません」
けっ、見てないところなら構わねぇだろうが、不便で仕方ねぇだろ。
「俺を他の絶者候補のところに連れていけ」
「いずれは挨拶をしにいきますが、今はまだやることが残っています」
「なんだ? 書類にサインでもするのか?」
「いえ、ギアの下僕を1人用意しました」
「下僕だと?」
「厳密には絶者の親衛隊、ギアにはまだ1人しかつけられませんが、魔王様から信頼を勝ち取れば自ずと増えることでしょう」
「ホネルトンじゃダメなのか?」
「私は九大天王、やることが沢山ありますからね。でも安心してください、彼女は魔王軍の中でもトップクラスの実力者ですから」
はん、エリートか、なら話は早そうだ。
「ここがギアの部屋になります。自由に使ってください」
ホネルトンが部屋という空間は、部屋と言うにはあまりにも広い。なんともロイヤルな部屋だ、まぁ部屋は広いに越したことはねぇ。文句はない。
と、部屋の奥に誰かいやがるな。まさか同居人がいるのか? ならば上下関係をしっかりしておかねぇとな。ぶち殺してやる。
「おい、そこのお前、誰だ?」
「ああ、彼女こそ、ギアの親衛隊ですよ。もう一度言いますが、現在ギアにつけられる親衛隊は1人と決まっています。大切にしてくださいね」
「······」
部屋の隅で立っているのは、褐色の女だ、髪の色は銀色、脱色しているのか? いや、この世界のヤツらの髪色はまだよく分からないからな。ん? なんだあの耳はとんがってやがる。それに右目に眼帯だと、PCの画面ちゃんと見れんのか?
「ダークエルフは初めて見ますか?」
「おう、説明しろ」
「ダークエルフとは呪いに長けた亜人です」
「なるほど分かった」
「まだ説明が」
「いらん。こいつから直に聞いたほうが早い。おい、ダークエルフ、名前を教えろ」
「······」
「無視か? 上等だコラ、上下関係はハッキリさせとかねぇと気がすまねぇぞ」
その様子を見たホネルトンがダークエルフに近づく。
「ああ、そうでした、まだギアを主人と登録していませんでした」
「あん? 主人だと? どういうことだ」
「彼女は洗脳してあるのです」
洗脳、そういうものもあるのか。
「薬漬けにしたのか?」
「いえ、九大天王の1人、パロムという科学者が魔法で洗脳しました」
魔法ね、関係の無いことだと思って疑問にも思わなかったが、ここは異世界だったな。魔法とかいうインチキくせぇ代物がまかり通ってる世界だ。
「なら、さっさと主人登録を済ませろ」
「分かりました」
ホネルトンがダークエルフの頭に左手を添えて魔法を唱える。
「洗脳操作(ブレインウォッシングオペレーション)」
ダークエルフが僅かに震える。
「終わりました、ギアを主人として認識するようになりましたよ」
ホネルトンが手を離すと、ダークエルフは俺の方を向く。
「ご主人様、なんなりとお申し付け下さい」
「ご主人様というな、文字数も多くて効率が悪い。ギアと呼べ」
「はい、ギア様」
「様もいらねぇ」
「かしこまりました、ギア」
「それで名前はなんて言うんだ?」
「レイラ・クラヴィッツ」
「長いレイでいいな」
「仰せのままに」
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる