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三章『ギア編』

第188話 チワワクエスト13

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 この体じゃ匂いなんかも分からねぇが、あの形状、間違いねぇドックフードだ。

「おい、なんでそんなものを持っている」
「その友人の特殊な魔法で召喚してくれたんだ」

 まさかそいつも? ······いや今はそのことはいい。

「だがそれで食いつくのか? 目の前に敵がいるのに呑気に飯なんか食うのかよ」
「言われてみるとダメな気がしてきたな」

 その言い合いを聞いていたレイが叫ぶ。

「2人とも早くしないと魔王砲が発動しますよ!」
「そうだったね、これにかけるしかない」
「ちぃ、そんなもんが上手くいくわけねぇだろ」

 ディザスターは銀の皿にドックフードをよそう。カラカラと乾いた音がする。

 チワワは目を見開くだけで他に変化がねぇ、やっぱり失敗か。

「おい、この作戦は失敗だ、早く次の策を」
「待て! ギア、あれを見てみるんだ」
「あん?」

 おもむろにチワワが口を閉じやがった、それと同時に魔王砲も解除されたのか集まっていた魔力が霧散する。

 チワワの口からは魔力の代わりに唾液が垂れ始める。

「作戦成功ですよ!」
「信じらんねぇ」
「まぁまぁ、ほらシチュー、君のご飯だたんとお食べ」

 ディザスターの言葉など無視してチワワは皿に食らいつく。
 銀でできた皿を、まるで紙皿みてぇに噛み砕く、ドックフードごと一緒に食っている。

 ドックフードと皿は刹那的速さでなくなった。
 チワワは小さな舌をしきりに出し入れしている。

 こちらを大きな目玉で見てきやがる、心なしか輝いて見える。催促してやがるのか。

「ふ、それも計算のうち」

 ディザはそう言うと、懐から新しい銀の皿を取り出す。
 さらに袋も取り出し、さっきと同じドックフードをよそう。

「おかわりはまだある、いくらでも食べるがいいさ」

 チワワは一心不乱に暴食している、そんなに美味いのか。

「おい、このドックフードを作ったやつはどんな料理人なんだ?」
「作ったのではない召喚だ、おっとあまり友人の手の内を明かすのはダメだな、彼は料理人ではないことだけは教えておこう」

 微妙に口の軽いやつだな。

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