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三章『ギア編』
第234話 努力に間違いなんてないでござる
しおりを挟む魔界喫茶『冥土の土産』の地下1階。
薄暗いなか階段を下ると、短い通路が続いている。破れた張り紙や、壁の傷を見るに年季の入った建物だということが分かる。
門番のように立ちふさがる屈強な魔族がブラギリオンを見るや表情を柔らかくする。
ブラギリオンは片手をあげてそれに応える。
門番が問いかけた。
「誰だそいつらは」
「この方たちでござるか? なに拙者の連れゆえ、安心してくだされ」
「分かった、通ってよし」
ドスの効いた声のわりに紳士的な振る舞いをしやがるな。
「彼はロゴリスファンクラブナンバー2、ロゴリス親衛隊のオニシュゴ氏でござる」
「ロゴリスって誰だ?」
「何を言っているでござる! 魔界アイドルでござるよ! 知らないんでござるか?」
「知らねぇな」
「誰しも最初は初心者、なに、気を張らずについてくるでござるよ、見て聴けばわかるでござるゆえ」
「ついてくるもなにも引きづられてんだが」
「ギアが駄々をこねる子供のように連れていかれている」
「レイ、実況してねぇで止めろよ」
「無理ですよー、あ、命令しないでくださいよ。私じゃどんなに頑張っても止められないので」
「ちぃ」
つきあうしかねぇか。
「ねぇギア、せっかくなので楽しみましょうよ、アイドルには興味ありますよ」
「レイが興味あろうと関係ねぇだろうが」
言い争っている間にもブラギリオンはドアを開き部屋の中に俺たちを連行する。
部屋に入ると、やっと開放される。体を動かして動作確認、よしどこも傷んでねぇな。
「ここがライブ会場か?」
「そうでござる」
「広いですねぇ」
やけに広いな、上の建物より余裕で広いぞ(そして満員だ)。
「ここのオーナーが周りの建物の持ち主に頼んで地下を拡張させてもらったそうでござるよ」
「努力の方向性を間違えてるぞ」
「努力に間違いなんてないでござるよ」
「仕事に関する努力以外は怠慢だ」
隣の筋肉デブが話に入ってきた。
「お堅い方ですなぁ」
「んだてめぇ」
俺は筋肉デブの胸ぐらを掴みあげる。俺の倍ある体が宙に浮く。筋肉デブは悲鳴をあげた
「うほぉ」
「やめるでござる、ライブ前は喧嘩禁止でござるよ。大丈夫でござるか、ミソゴリラ氏」
そう言われたミソゴリラはズレたメガネの位置を直して立ち上がる。
「うほ! ・・・・・・大丈夫、僕を持ち上げるなんて、うっほッ、すごい力うほぉ」
ゴリは頬を染めている。
「彼は絶者、ギア氏でござるよ」
「うほおぉ、どおりで強いわけですなぁ。いやぁ、その重厚なボディ、よく見せてくだされっほぅ」
「ひき肉にすんぞ」
「まぁまぁ、ミソゴリラ氏はカラクリ好きゆえ、許してくだされ」
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