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三章『ギア編』
第236話 ライブ
しおりを挟むガヤつく場内。薄暗い照明。ステージにだけ、天井から強い光が当てられている。
ガツンと響く音がする。マイクのハウリング音だ。
現れたのは身の丈ほどあるギターを背負ったガキだ。何つったかなあの格好、ゴスロリだったか。どっかの国の姫様みてぇな格好だ。にしても機能性もクソもねぇ格好だな。
「なんだかボロボロですね」
レイの言う通りだ、やけにボロボロだな。服は所々破けているし、全身傷だらけだ、そういう衣装にしちゃ少し過激だな。
その格好を見てファンどももざわめき始める。そりゃそうだギターには血がついているし、額からは鮮血が滴り落ちている。
「今日は私のライブに来てくれてありがとう」
クソ気だるそうな声だな。
こいつまさか始めるつもりか。このままやるってのかよ。
人混み(人間は一人もいねぇが)の中からヤジが飛んだ。
「また喧嘩かー!」
「そうよ。ライブの景気づけに競魔(競馬のようなもの)やったらぼろ勝ちしてね、これはいいライブになると思った矢先、賊に襲われたのよ」
ブラギリオンが小声で言った。
「拙者たちロゴリス親衛隊は、オフの時のロゴリスたんとは関われないでござる、そうロゴリスたん自身に誓わされているでござるゆえ」
その握る手からはギリリと金属の擦れる音がする。
「全員このギターでギッタギタにしてやったけどね」
一瞬の間のあと歓声があがる。
「んじゃお喋りはピロートークまで我慢してね。けどまあ、それまで意識あったらの話だけどね」
こうしてライブが始まった。さてどんなもんか、俺は歌なんざ聴かねぇけどよ。せっかくだからな、多文化を知っておくのも悪かねぇ。
これが歌か。歌詞は陳腐でギターもぶっ壊れてる。遅れてきたドラマーなんてやけくそ気味に松葉杖で叩いてるぞ。
だがなんだ、この観客たちの盛り上がりはよぉ。
隣のレイが薄く口を開いてポカンとした表情で演奏を眺めてやがる。
ブラギリオンなんて変な踊りを踊ってやがる。光る細長い金属の棒を両手に持ち、二刀流で振り回している。歌に合わせて呪文の様なものまで詠唱している(だが不思議と魔法は発動しない)。
時間が経ち観客の興奮はピークを迎える。
いつの間にか俺たちの後方では殴り合いの喧嘩が始まっている。ガタイのいい魔族が暴れてる様はなかなかの見物だ。
「始まったでござるな。ユーカミ氏、ミソゴリラ氏」
「うおぉ! 任せろ!」
「うほっ! うほほ!」
ユーカミとミソゴリラが乱闘に加わる。
だがただ暴れるだけじゃねぇようだ。危険な魔法を止めたり、力でねじ伏せている(強いなこいつら、親衛隊名乗るだけはあるってことか)。
数名の魔族がステージに上がろうとしている(警備の魔族はとっくにぶっ飛ばされている)。
「ソルトリ氏」
「はいよ」
ソルトリが低空飛行して、登る魔族を素早い動きで弾いていく。一度倒れてしまえばこれだけの大乱闘、踏まれてそれどころではなくなる。
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