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三章『ギア編』

第298話 サンライト19

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 千足(サウザンドレッグ)の突進を広場の中心に隊列を組んでいる魔物たちが受け止める。

 盾というよりも分厚い金属の板を使い、先頭の10数頭の魔物が突進の勢いを殺す。後方にいる100頭近い魔物たちがその背中を支える。

 千足(サウザンドレッグ)が体勢を立て直す前に、斜面に潜伏していた魔物たちが跳躍して背中に飛び乗る。

 これまた、辛うじて剣や斧の形をした金属を使い。採掘と同じように何度もその武器を背に打ち付ける。

 千足(サウザンドレッグ)の外骨格はその住処によって異なる。山なら岩、森なら硬い土、海なら塩水、火山ならマグマと言った具合に、同じ種とは思えない容姿になる。

 この魔鉱山の場合なら魔力を多分に含んだ金属製の外骨格で体が覆われている。

 力だけでどうにかなるのなら、Sクラスではないのだ。


 千足(サウザンドレッグ)は軋んだ鳴き声をあげて、うねり回る。

 それだけでも十分に脅威だ。魔力を纏っている物を振り回すだけでも殺傷能力の高い凶器となるのだ。

 魔物たちは盾持ちの背に隠れたり、回避しきれずに吹き飛ばされるものもいる。だが怯む様子はない。単純な戦闘力でもAクラス上位はあるだろう。

 レイラが笛を吹く。少し複雑な吹き方だ。
 その笛の音を受けて魔物たちが陣形を組み直す。少し距離をとっているようだ。

 広場の中央でのたうち回る千足(サウザンドレッグ)を取り囲むような形になる。

 レイラが続けざまに笛を吹く。今度は長く高い笛の音だ。

 千足(サウザンドレッグ)の足元の地面が割れる。
 現れたのは千足(サウザンドレッグ)と同等の大きさを持つミミズだ。種族名は巨大蚓(ジャイアントアースワーム)、だがここまで大きいのは初めて見た。

 ムカデとミミズが絡まり合う。巨大蚓(ジャイアントアースワーム)が押されている、千足(サウザンドレッグ)には金属でできた外骨格がある。巨大蚓(ジャイアントアースワーム)の体が裂け、至る所から体液が吹き出す。

 巨大蚓(ジャイアントアースワーム)の作った隙を魔物たちは見逃さない。一斉に距離を詰めて袋叩きにする。

 数百の魔物、それもAクラス上位はあるものたちの攻撃を長時間受け続ければ流石のSクラス下位でも一溜りもない。

 最後に体を仰け反り軋んだ断末魔をあげて千足(サウザンドレッグ)は絶命した。


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