現代最強は楽しいハンバーガーに転生しました

黒木シロウ

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四章『トマト編』

第329話 看板猫

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 事件は俺の産まれる前にまで遡る。
 当時の王国は『殺人鬼』の話で持ち切りだった。

 突如現れた人殺しの話は瞬く間に王都全域に広がった。
 最初は誰もがすぐに捕まるだろうと思っていた、だが違った。

 被害は日に日に増していったのだ。

 そして聖騎士たちの調べであることが分かった。
 事件現場に居合わせた聖騎士が取り逃しこそすれど殺人鬼の姿を見たのだ。


 『殺人鬼は魔物だった』


 驚くことにこの王都に魔物が潜り込んでいたのだ。その話は疾風のごとく広まり、王都を震撼させた。

 これは並の事件ではない。そう判断した王さまは占いばぁさんに殺人鬼の居場所を調べるように依頼した。そして、


 占いばぁさんが殺害された。


 殺人鬼は魔物でラッパーだったのだ。占いばぁさんの最後の証言によって判明した。

 そして現在も魔物はこの王都のどこかにいる。




「ジゼルのおばぁちゃんの仇か」
「バーガー様! 絶対に討伐しましょう!」
「もちろんだ」

 口ではそう言いつつも俺は不安に駆られていた。
 王都にいる間くらいは安全に過ごせると思っていたからだ。

 はぁ、こうなってしまったならば首を挟む他ない。殺人鬼の魔物か、どんな具材になるんだろうか。ゲテモノは挟みたくないな。


「そ、そういえば、勇者様が来たということは、あの人も帰ってきたんでしょうか」
「あの人?」
「にゃーはっはっはっはー」

 階段からバカ笑いが聞こえてくる。エリノアだ。

 青年はパァっと明るい笑顔になる。

「え、エリノア!」
「お、その声はシャニーだにゃ、まだ生きていたとは驚きだにゃ」

 周りの雰囲気も一気に穏やかなものになる。

 エリノアは全員に挨拶して回っている。人気者なのか?  看板猫なのか?

 一通り挨拶が終わったのか、俺たちの元に来る。

「おやおや、バーガーたちじゃにゃいか、ここはSクラスの冒険者しか来ちゃいけにゃい所にゃんだよ?  知らにゃいの?」
「ふ、そんな決まりがないことは、この青年から聞いて知っている」
「にゃにー、シャニーはお節介が過ぎるよ」
「ご、ごめんなさい」
「すぐに謝るところもダメだにゃ」

 あれ? 宿を出る時にエリノアが持っていた荷物が無くなっているな。もう売っぱらってきたのか、それとも家に置いてきたのか。

「この依頼書の話(はにゃし)をしていたのか」
「ああ、これってジゼルの言ってた」
「そうだよ、最初の頃はミーも探したんだけど、王都は広すぎるからにゃぁ、結局2回の目撃情報しか得られにゃかったにゃ」

 2回の目撃情報。最初に殺人鬼を見つけた聖騎士と、ジゼルのおばぁちゃんか。

「ま、君たちはFクラスのひよっこだから、この依頼のことは気にしにゃくてもいいんだよ。関わりたかったら、早くSクラスににゃることだにゃ」


 よし、小龍(ワイバーン)を狩りに行こう。

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